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2023年6月10日土曜日

競技麻雀とはフェイクである

※一応断っておくと、この文章はあくまで僕の主観です。あしからず。

 かなり前に「麻雀とはラーメンやカレーのような大衆食」と書いた事があるのですが、
そんなラーメンについての漫画で「ラーメン発見伝」という有名な作品があります。まあ結構な長編作品なので僕も読んだのは去年なのですがw

そしてその続編「ラーメン才遊記」の中で「ラーメンとはフェイクである」という一節があります。

「ラーメンとは化学調味料をはじめとした手早く安く美味しい物を作る”フェイクありき”で発達し人気を獲得していった独自の食文化」
という意味でつかわれているんですが、
結構競技麻雀もこれに近い点をもっている独自文化だったりするんじゃないかと思って文章書いてみたくなり。



競技麻雀のルーツが何かといわれればやはり外せないのが1976年に創設された最高位戦でしょう。
この時の考えは「選ばれた本当に強い人たちで半荘100回を打てば誰がNo1かハッキリする」という物でした。


これを聞いた時、
現代にてある程度麻雀のゲーム性を理解している人なら「そもそも出場者を決める基準は?」「100回なんかで何が解るの?」になるんじゃないでしょうか。
統計分析や研究が進んだ今となっては突っ込みどころだらけの企画、つまりフェイクから始まった物と言えるわけです。(そしてこの競技麻雀の本質は今でも大きくは変化して無いとも言えます)

戦術研究という点でも当時の考え方は理論的だったかと言われれば、何とも、、、
という点は多々ありました。1970年代あたりの戦術本というのを読んだことがある人は解ると思いますが。


そもそも僕は麻雀というゲーム自体を「自称上級者の温床」と思ってますが、このゲーム、そして競技麻雀の本質はやはりフェイクの部分が強いのです。
選択回数は多いし思考する場面も多いでも実はそれが結果に直接反映されない運ゲー要素が大部分で、実は多くの人間が「考えるフリをしているゲーム」、という点を100%否定することはできないと言えます。


つまり
「麻雀は競技として成り立つ。ある程度回数やれば強い人が勝つだろう。こんなに考えるポイント多いんだから」
というなんとなくの観点から始まったフェイク文化が発足だったと言えるわけです。
実際に僕が競技選手になった当初、まーーーったく理論的な討論をしてくれない先輩方に対してげんなりした事は一度や二度じゃなかった(^^;)


でもその一方で競技麻雀のこの20年の中で、
「フェイクから作り出された文化の中からリアルを作り出す動き」ってのが確かにあったわけです。

麻雀のゲーム性を正しく理解して理論的な戦術を作る事、
特に回数制限がある戦いゆえに生まれてくる特殊状況にしっかり対応する事、
そしてそれを普遍的な考え方として世に広げる事、意味があるかはわからないけど、それをやってきた人達が確かにいたわけです。

まあ今や伝説的な企画となってる「オカルトバスターズ」は勿論、有名選手だけじゃなく無名選手も含めてそんな草の根活動があったわけですね。
いろんな事件もありました。最たる例はやっぱこれですかね。
今では美談と取る人が多いですが、当時は批判的な声も滅茶苦茶多かった。

無論こういった動きの源は、
阿佐田哲也先生や小島武夫先生らの先人が生み出した功績の上になりたってるし、
この20年の功労者の人の実績も現在の第一線で活躍してる人の実績も、
ある意味でこれからの選手の研究の踏み台ともいえます。


近年、競技麻雀選手の平均レベル、競技麻雀ファンの知識レベルは10年前に比べてすごいあがったと思ってます。
その一番大きな原因は放送対局の増加、ネット麻雀による検証と情報交換、といったところですが、それらへの寄与も含めて上述の選手たちの草の根活動がもたらした数少ない功績と思うところはあるのです。

「フェイクの中にあるリアルを見つけて広める」
僕がこの20年でそんな動きを見てきたし、
そこに多大な努力をしてる尊敬すべき選手が少なからず存在していたし、
近年の新人のレベルを見るとその質を支えたのが自分たちの世代の活動と考えると、彼らに恐ろしさを感じると同時にちょっとだけ喜ばしくも思うわけですね。

さて、
だからこそこれにかかわった多くの選手が「競技麻雀の急速な拡大によってその功績が結局またほとんど消えてしまう事を少なからず恐れている」
いう点があるのです。
これから更に業界が大きくなる中でそれを担う人たちにこの背景をちょっとでもいいから汲んでほしいのが正直なところ。


ちょっと長くなってきたので続く、、、、書く気力が続けばw

2023年1月14日土曜日

結局会社員は何歳くらいで麻雀プロになるのが良いか?という考え

今日、1/14は日本プロ麻雀協会のプロ試験らしい。

自分が受けたのがもう20年前とかって考えると、ちょっと色々と感慨深い点がある。


さて、ちょっと会社員麻雀プロを22才の時からやってる身として、

「会社員は何歳くらいから麻雀プロ始めるのがいいか」って点について、自分の人生振り返りながらちょっと思うとこを書いてみようかと。(あくまで会社員視点)


ちなみにネガティブ要素もパラパラある長文記事なので、

そういうの嫌いな人は読まないのを勧めますw


まあ結論から書けば

「麻雀強くなりたきゃ早ければ早い程いい。けど客観的には35当たりからを推奨。」

が本音です。


前提として言いたいのは、

「20~30前半をどこで過ごしたか、何に力を入れたかは、多分当事者の想像を超えるレベルで大事」

ってことですね。


理由は色々とあるんですが、

一番大きいのは「人間社会は結局価値の等価交換から成り立ってる」という点です。

何かの価値ある物を人からもらうには、何かの価値を相手に提供する必要がある。


若い内ってこれがぴんとこないのです。

「若さ」っていう強烈な価値を持っており、それを無意識に周りと交換できるから。

つまりこの時期って「世間がなかなか提供してくれない価値ある情報や経験が無償レベルで得られるボーナス時期」なわけですね。

これは麻雀ごときについても例外じゃない。

この時期に業界に揉まれて価値ある情報得続ける、多分本当のレベルで強くなるにはこの経験が必須になってしまうでしょう。


ここを過ぎると世間は「若さに代わる価値」を求めてくる。

その時に自分の中に蓄積された技術知識や人脈がある人ってやっぱ強い。

今後もそれを利用して価値ある情報を得続けらえる。

特に価値ある技術情報は、自分も価値ある情報を持ってないと得にくい面も多い。

お金とか人脈とかとでの交換になると相手が「低価値の情報を出しても問題ない相手」と考えるケースがあるからです。


麻雀ってゲームは絶対指標が存在せず評価が難しい点が多い分、他人との情報共有と検討がものすごい大事なゲームです。

なので若い時期をこの業界で過ごしていない人が、競技の本質を理解するレベルで強くなるのは結構難しい部分があるのは事実でしょう。

無論例外もごくわずかにいるし、ネットでの情報収集・交換ツールが充実してきた近年ではこの前提も多少は崩れつつあります。でも知識はとにかく「経験」って問題も考えるとやっぱ差はでる。



でも「じゃあ若いほどいいじゃん」と言われればそれはNOで、

上記の理論は会社員にも当てはまるからです。

いやむしろ会社員の方が当てはまる、と言った方がいいかもしれない。

早い内にきっちり勉強して基礎知識得て、現場で多くの情報を得て、価値ある職歴を構築した人間ってやっぱり強いわけで。


結局「両方とるのは難しい」ってのが現実としてあるわけで、

どっちを取るかと言われれば、

自分の人生振り返ると「若い内は仕事しといたほうがいい」になるわけですね。

収入基盤しっかりさせた方がそりゃどう考えてもいい。


麻雀プロってのは残念ながら基本本業にはなりえません。

それを無しえてるMリーガーってのは麻雀プロとはちょっと立ち位置が異なる部分があり、

競技選手が研究の先に目指す終点って物とは言い難い事も考えると、

会社員は本業でしっかり基盤を得て職歴の利子みたいな形で安定して食えるレベルになったのちに麻雀プロをやってみるくらいがちょうどいいんじゃ、と

「客観的には」思うのです。客観的にはw


ここからは自分についてのお話。

知ってる人は知ってると思うのですが、

ハーバード大学が75年にわたり研究し続けた「人は何が幸せか」という問いの答えとして、

「金・富・健康ではなく”同じ志をもつコミュニティで頼り頼られ生きること”」という物があります。


競技麻雀界ってコミュニティは僕にとって間違いなく人生に不可欠なだったと考えると、

「もっと若い頃は仕事に励んどけばよかった」という後悔と、

「若い時分を麻雀界で過ごせてよかった」という思いは、

正直にどっこいどっこいなのです。客観的には前者のはずなんですけどねw


ただ個人的に一つアドバイスをするなら、

「向いてないと思ったら一度すっぱりやめてみるべき」です。

僕自身の経験を言えば、どんなに最初は楽しいと思った事も数年やってみると結構情熱ってうせます。

逆に言えば僕の人生で10年以上にわたりいまだに楽しく続けられているのって競技麻雀くらいのものです。(それですら熱量の上下がありますが)


4年たって「惰性で続けてる」と思ったらすっぱりやめる、

そこから数年たってまたやりたくなったら続ければいい、

くらいに考えるのが健全だし、

「仕事もプライベートも麻雀プロをやめたって充実してる」くらいに自分を保てる人って、僕は尊敬しますね。


うん、やっぱり一番言いたいのはここでしょう。

「麻雀に自分を依存せずいつでも辞めれる自分を目指す。これが麻雀ライフも充実させる事につながる。」

矛盾しているようですが、会社員が麻雀プロやる際の真実ですね。

2023年時点では、ですが。


そう考えると、頭脳競技の世界に生きて生計たててる将棋や囲碁の選手の方って、どういう心境で戦ってるんだろう、

って本音が気になる部分がありますね。。。

2022年10月2日日曜日

打ち手の体系的評価2(協会Mリーガー4人)

 いよいよ来シーズンのMリーグが明日10/3(月)に開幕となるのですが、
このブログ読むような競技麻雀ファンの人ならご存じとは思いますが、今期より日本プロ麻雀協会からは以下4人のMリーガーが参戦予定です。

①渋谷ABEMAS 松本吉弘
②KADOKAWAサクラナイツ 堀慎吾
③KADOKAWAサクラナイツ 渋川難波
④UNEXTパイレーツ 仲林圭

というわけで、
唐突ではありますがこの4名について、前回記事で鈴木たろう・多井隆晴を評価したのと同様に、
・絶対値レーダーチャート
・バランスグラフ
・総評
で評価をしたいかと。

ちなみに前回記事同様に僕の完全なる一方的な視点から書いております。
よって苦情などは特に受け付けません。(本人から苦情あったら変えるかもしれませんw)



①渋谷ABEMAS 松本吉弘

【絶対値レーダーチャート】

前回記事にも書いてますが、
各数字を最大値10で評価しており、基準としては以下の通り。

  • 6:選手として標準的
  • 7:選手として上位
  • 8:トップレベル
  • 9:ほぼトップ
  • 10:特別値。基本は設定しない。

※メンタルを追加しました。緻密さがあればいいか、とも思ったのですが切分けしたく。

パラメータ数値(0~10)
攻撃スキル9
防御スキル8
状況把握能力8
山読み8
緻密さ8
対人要素8
カリスマ性9
メンタル9

、、、当たり前といえるかもしれないが、

今回紹介する選手レベルになると基本的に全項目8以上になります。
というかトップの選手って大体似たり寄ったりになるんですよね。(ゆえに色々な選手のデータを作ろうとしたけど、途中で止めてしまった過去もあり、、、)

【バランスグラフ】


以下の通り±で打ち手の傾向を分析
  • 攻撃or防御:+攻撃主体、-防御主体
  • 打点or手数:+打点重視、-手数重視
  • 面前or鳴き:+面前重視、-:鳴き重視
  • 数値or読み:+読み重視、-:数値重視
  • シンプルor複雑:+シンプルな判断多、-:細かい判断多
  • 直球or変化球:+自分中心型、-:他家ケア型


【総評】
シンプルな進行が多いバランスタイプ。様々状況において無理・無駄のない選択およびその精度は文句なく協会トップクラス。
またMリーグ創設期からの選手であり20代にして大舞台を多数経験しているゆえ、今回紹介する選手達で唯一カリスマ性、メンタルを9に設定。

あと今回の評価値には表現できていないが、彼についてもう一つ特筆すべきは「変化性」。
超コアな松本ファンなら知ってるかもしれないが、彼は初めて發王位をとった20代前半から今に至るまで、手数・打点や攻撃・防御といったバランスチェンジをしており、トップクラスの選手中では異例ともいえる特徴である。
まだ30歳という年齢も加味して、今後の姿がまるで想像できない選手。上記の絶対値レーダーチャートの数値も数カ月後は激変してるかもしれないと言える。




②KADOKAWAサクラナイツ 堀慎吾


【絶対値レーダーチャート】


パラメータ数値(0~10)
攻撃スキル8
防御スキル9
状況把握能力9
山読み8
緻密さ9.5
対人要素9
カリスマ性8.5
メンタル8

【バランスグラフ】


【総評】
このブログで過去数回彼を取り上げた時に記述してるが、
常人の遥か上をいく多くの情報を内包して、常人のはるか上を行く戦術の引き出しを用いて繰り出す彼の麻雀スタイルをそのきめ細かさと繊細さから僕は「彫刻刀」とか「緻密流」と呼んでいる。(悲しい程流行しないのだが、、、w)
実は「彼のファンって彼の麻雀をどう見ているのだろう?」というのが結構疑問に思う点だったりする。細かすぎる彼の麻雀が世間でこんなに評価されているのは実は結構意外(無論実績あればこそなんだろうけど)。

昨年サクラナイツを優勝に導いた原動力であり、決勝での起用回数の多さはチームの彼への信頼の厚さも十分にうかがえるものだった。
今年もその活躍は大いに期待したい所。




③KADOKAWAサクラナイツ 渋川難波

【絶対値レーダーチャート】


パラメータ数値(0~10)
攻撃スキル8
防御スキル9.5
状況把握能力9
山読み8
緻密さ9
対人要素8
カリスマ性8
メンタル8

【バランスグラフ】


【総評】
現雀王様。
正直に、、、今回の選手たちの中でも評価が一番難しかったのが彼。
この男の麻雀は情人離れした緻密さと高い守備意識で構築されている点は事実なんですが、、、一言でいえば二面性が凄まじい
局前半では信じられないような大胆は打点構想を見せたかと思えば、中盤以降はあっさりとした見切りの仕掛けを入れたりとか、
こういったスイッチの切替は強い打ち手ならだれでも持つべき重要な要素なんですが、彼はとにかくそのOnOffの差がすごい。局面次第でいくつかの要素が-3~+3になったりするように見えるものすごい異質な選手。

堀慎吾も異質だけどこの男も別の意味で異質、
こんな二人を抱えるサクラナイツってある意味とんでもないチームかもw




④UNEXTパイレーツ 仲林圭



【絶対値レーダーチャート】

パラメータ数値(0~10)
攻撃スキル8
防御スキル8
状況把握能力9
山読み8
緻密さ9
対人要素8
カリスマ性8
メンタル8

【バランスグラフ】

【総評】
協会の新三羽烏として渋川、堀と並んであげられる仲林ですが、上記の2人に匹敵する緻密さを持っている一方でと、そのスタイルは異なります。
彼のバランスグラフはご覧の通り(ぶっちゃけちょっと脚色した点もありますが)、
そのクオリティも相まって「平凡という名の非凡」という言葉がまさにぴったり当てはまる打ち手と言えます。多分業界のすべてのプロを見渡してもこれほど教科書になりえる選手はなかなかいない。

多分麻雀を勉強する多くの競技選手にとって途轍もない壁になりえる存在かもしれないですね。多くの選手が目指すべき理想形でありながら、「総合力でこの男を超える事なんてできるのか?」というジレンマも覚えさせられた選手が実は多数いると思われます。(僕含め)




以上4選手分でした。Mリーグ新シーズンのツマミにでもしていただければ幸いです。
さていよいよ明日始まる戦い、今期も熱い戦いを期待したいですね。