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『「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている』ジェイムス・スーズマンー持続可能な世界と生き方とは

 

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最近、図書館の新刊コーナーで

目に留まったタイトルの一冊。

 

「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている

「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている

 

 

『「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている』ジェィムス・スーズマン著

 

著者は社会人類学者。

ジェイムス・スーズマン博士は、25年以上、南部アフリカで

主要なブッシュマン・グループとともに暮らし、調査してきた。

 

カラハリ砂漠ブッシュマン(サン人)、

特にジュホアンの人々との生活を通して

その暮らしぶりや考え方を詳細に伝え、

人類の歴史と共に、狩猟採集民族の変遷、現況も語られている。

  

第一部 古い時代

 第一章 勤勉の報酬

 第二章 母なる山

 第三章 浜辺の小競りあい

 第四章 入植者

 第五章 いまを生きる

 第六章 ツムクウェの道路

第二部 過酷で豊かなカラハリでの暮らし

 第七章 洞(うろ)のある木

 第八章 強い食べ物

 第九章 ゾウ狩り

 第十章 ピナクル・ポイント

 第十一章 神からの贈り物

 第十二章 狩猟と獲物への感情移入

 第十三章 狩りの成功を侮辱する

第三部 新しい時代

 第十四章 ライオンが危険な存在になるとき

 第十五章 恐れと農業

 第十六章 ウシの国

 第十七章 狂った神々(クレイジーゴッズ)

 第十八章 約束の地

 

ボリュームのある本ですが、字は大きめ。

巻頭にはカラー写真や 説明図も載っています。

 

 ところで、本の帯のキャッチコピーは

想像してみよう。週に15時間しか働かなくていい社会を。

 

経済学者のケインズ

「2030年に労働時間は週15時間になる」と予言したという。

 

本書では、はるか昔、すでにそれを実現した人々がいて、

それが、カラハリ砂漠の狩猟採集民族ブッシュマンの暮らしで

あったと述べている。

 

そういえば

この本の原題と思われる英語表記は

”AFFLUENCE WITHOUT ABUNDANCE:

 What We Can Learn from the World's Most Successful Civilisation.”

Affluence(アフルエンス)も、

Abundanceも(アバンダンス)も

「豊かさ」を意味するけれど

前者が富、多くのお金も意味し、

後者は、ソース(資源)的な豊かさを示すようで

「本当の豊かさのない(金銭的)豊かさ」とでもなるのか、

そして副題の部分は

「世界で最も成功した文明から学べるもの」って感じ?

 

面白いことに

2017年の原書では、ここが

the disappearing world of the bushmen というのもあって

「消えゆくブッシュマンの世界」だったらしい。

 

本の内容はまさにどちらもその通りで

今や彼らも、自由に狩猟採集民族として生活を

送っているわけでない。

地域やグループによっても違うが、

統治のもと、土地は管理され、

農場などでの仕事につくなど

かつての暮らしとは

大きく変わっているそうだ。

その昔から、時代と共に

こうした民族に接触し、影響を与えた

入植、管理化へと向かう流れは、

自然の一部としてうまく回っていた民族の暮らしを制限し、

アルコールや病気、貧困問題など様々な弊害をもたらしてきた。

何かここらへんはアメリカの先住民族の問題と似てるね。

 

さて、ブッシュマンというと

1980年代に映画が大ヒットして、

ニカワさんという主役も来日したりして

人気を博したようですね。

演じたヅゥア・トマさんについてのその後など

本書でも触れられています。

人類学者たちは虚飾のハリウッド作品の浅薄さを

受け入れられないとして、監督への批判もあったながら、

映画は面白く、興行的に大成功だったのですね。

そのおかげで、皮肉にも

地元民がブッシュマンを演じる観光も人気だったとか。

 

 

 

ブッシュマンの世界では近年まで

厳しくも豊かな自然の摂理を信頼し、

大地の恵みと環境を利用して

太古から暮らし続けてきました。

自分たちの糧として狩猟や採集を行い、

貴重な肉は皆で分け合い、余剰は出さない。

仲間内の弱者を助けながら、寛容で

男女も老いも若きも平等な関係性を保って

いたのです。

 

ヒエラルキーや所有意識が発生するのは

人が農耕牧畜民となって生きるようになってから

だといわれています。

 

要は、彼らは必要に応じて狩りや採集をして、

その時必要な量だけ利用する生活を送っていたと

いうこと。自然や環境に合わせて共生し、

独自の文化を育んでいたわけです。

 

著者のスーズマンは、長期に渡って繁栄してきた

こうしたブッシュマンの生き方が、

近代文明が行き詰まり、岐路にきた私たちの

持続可能なこれからの世界のあり方の

ヒントになると語っています。

 

近代化と経済発展優先の社会とは

一線を画したライフスタイルは

働き過ぎたり、争ったりすることもなく

平等な人間関係を大切にしていた

実はとても豊かな生き方だったと。

 

面白いのは

狩猟や採集は自然にも左右されるけれど、

調査によれば、概ね

週15時間程度の労働だというんですね。

 

――彼が強調したのは、ジュホアン・ブッシュマンの場合、自然のなかでの生活は不快でも野蛮でもないし、人々は短命でもないということだった。

 リーはエネルギーの摂取量と労働量を丁寧に分析し、調査対象のジュホアンがその環境で「よい暮らし」をしており、狩猟に加えて野生の果物や木の実、野菜を採って生活していると説明している。最も重要なのは、彼らが比較的少ない労力で暮らしていることだった。ジュホアンは栄養に必要なものを採取するのに週十五時間しかかけず、さらに、大まかに言えば「労働」と呼ばれる家事に週十五~二十時間費やしていることを彼はあきらかにした。一九六六年にようやくアメリカの連邦政府職員に週四十時間の勤務体制を導入したことや、平均的な星人はおよそ週三十六時間働き、さらに買い物や洗濯、芝刈りなどの多くの家事をする時間が加算されることを考えると、リーの報告した数字は、驚くべきものだった。  

 

(リーさんは、アメリカの若手人類学者、リチャード・ボーシェイ・リー氏、

 次のサーリンズさんは、ミシガン大学の若手教授だったマーシャル・サーリンズ氏) 

 

 サーリンズがとりわけ興味を示したのが、狩猟採集民族は適正栄養量だけの限られた物質的文化に満足し、しかも繁栄していることだった。彼らの幸福になるための方法は、ほんのわずかな物質的欲求しかもたないことで、そのささやかな欲求を満たすには限られた技術があれば事足り、よけいな努力は必要なかった。狩猟採集民族はすでに手にしているものより多くは望まないというシンプルな方法によって満足している、とサーリンズは説明する。別の言い方をすれば、狩猟採集民が満足しているのは叶うはずがない願望に支配されないからだ、というのが彼の答えだった。彼は印象的なフレーズを考えだして、狩猟採集社会を「始原の豊かな社会」と名づけ、彼らの経済的手法を「原初の豊かさ」と呼んだ。

 

あとがきで訳者の佐々木和子さんはこう書かれています。

 

――著者ジェイムス・スーズマンの「労働が私たちの生活の形をつくって意義を与え、”私たちは何者か”を定義する」という言葉が、ふと思い浮かびました。――先に述べた教育方針に当てはめてみると、子どもたちは、仕事にあぶれないよう勉学に励め、と駆りたてられて大きくなり、どんな職業に就いているかで何者であるかが決められる、となるでしょう。こうした考え方は、すでに世の中に当たり前のこととして、多くの人々に受けいれられているように思います。

 しかし、スーズマンは、人類にとってそれは当たり前ではないと捉え、本書のなかで「人々が仕事に取りつかれていること」が現代の社会問題の根源になっていると、訴えます。 

 

経済学と人類学を融合して、持論を展開しているのです。

 

さて、

著者のインタビュー記事もわかりやすかったので

それもリンクしておきます。

 

nhkbook-hiraku.com

 

日本の、”karoshi"過労死はおかしいと言ってますね。 

「仕事以外のことで自分を定義する」というお話も。

 

 

 

ところで、この本の最後で著者はこう結んでいます。

 

ジュホアンが新しい時代の人になる際に、変貌する世界の予測不可能な渦と潮流によって自身の生活は形づくられていると認めるならば、私たち人間が新しい時代への変わり目にいるという考えに、彼らは慰めを見出すかもしれない。その新しい時代とは、経済問題に囚われることがなく、新石器革命が育んだ生産性を重視した考え方がもはや目的に合わなくなる時代だ。そのためには、ジュホアンの直接の祖先のようになって、私たちがつくりあげた豊かさを喜んで受けいれ、労働ではないほかの物事の価値を認める必要がある。大幅に仕事を減らすことでよいスタートを切れるかもしれない。ミレニアル世代――豊かさしか知らない先進国の若者グループ、見つけた仕事を好きになろうとするよりも、好きな仕事を見つけだす世代――がきっとその道を切り開くだろう。

 

持続可能な新時代を切り開くのは

ミレニアル世代、だと彼も述べていたんですね。

あれ、これは前回の本とシンクロしてる。

面白いね。

 

www.salon-shiroineko.com

 

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