野村萬斎演出・出演による『ハムレット』

『ハムレット』
【日程】2023/03/06(月) ~ 2023/03/19(日)
【会場】世田谷パブリックシアター

【作】W.シェイクスピア
【翻訳】河合祥一郎
【構成・演出】野村萬斎

【出演】
・野村裕基  :ハムレット
・岡本圭人  :レアーティーズ、ローゼンクランツ
・藤間爽子  :オフィーリア
・釆澤靖起  :ホレイシオ
・松浦海之介 :フィーティンブラス、役者、群衆
・森永友基  :ギルデンスターン、群衆、ノルウェー軍
・月崎晴夫  :ヴォルティマンド、墓掘りの相棒
・神保良介  :マーセラス、役者、群衆、ノルウェー軍
・浦野真介  :フランシスコ、隊長、役者、群衆、船乗り
・遠山悠介  :バナードー、役者、使者、群衆、ノルウェー軍
・村田雄浩  :ポローニアス、墓掘り、群衆
・河原崎國太郎:オズリック、座長、司祭、群衆
・若村麻由美 :ガートルード
・野村萬斎  :クローディアス、ハムレットの父の亡霊

<物語>
父である先王の亡霊から死の経緯を知らされたハムレットは、その死を仕組んだ叔父クローディアスへの復讐を誓い狂気を装う。この復讐計画により、ハムレットを慕うオフィーリアやその兄レアーティーズ、王妃となった母親ガートルードをはじめ、彼の周りの人々は運命を狂わされていく。

野村萬斎さん演出による舞台『ハムレット』
昨年のリーディング公演を経て、ついに本公演が実現。

私は、以下の計4公演を観てきました。

・3月 6日(月) 19:00〜 1階E列 ☆プレビュー公演
・3月12日(日) 13:00〜 3階A列
・3月14日(火) 14:00〜 2階A列 ☆終演後ポストトークあり
・3月19日(日) 13:00〜 3階A列 ☆千穐楽

同じ舞台を4回も観たのは初めてでしたが、正直、、、

もっと観たかったッ!!

それくらい、何度でも観たくなる素晴らしい舞台でした。今は祭りのあとのような寂しさが漂っています…(再演希望!)

萬斎さんが描いた『ハムレット』の世界は、様々な日本の伝統文化を織り混ぜた和洋折衷の世界でした。

昨年のリーディング公演を観たとき、リーディングと言いながらも演者の皆さんは台詞を覚えた状態で、本舞台に近い形で上演されていたので、骨組みはもうほぼ完成形なのでは?と思っていたけど、とんでもない!改めて振り返ると、やはりアレは本人も仰っていたけど、まだまだオモチャ箱をひっくり返しただけの状態でした。

当時から和の要素を取り入れたいのは伝わっていたけど、今振り返ると、和と洋はまだまだ混ざり切ってはいなかった。だけど今回それがようやくカタチになり、新たな『ハムレット』の世界観が誕生した。そして、それを目撃できたこと、見届けられたと思うと感無量です😭

萬斎さんが作り出す和洋折衷の世界観は、まさに私好みの世界観でした。千穐楽でのコメントで、これからも日本の伝統文化と現代劇を織り混ぜた作品を作り続けていくと仰ってくださったのは、芸監時代を見逃した遅咲きのファンである私にとっては、とても嬉しく、まさに希望のお言葉でした😭

ということで、萬斎さんの今後の活躍が、益々楽しみになりました。
これからも全力で推させて頂きます!✨✨✨

演出について

まず、衣装が一部のキャラを除いて和洋折衷。色合いが華やかなものが多く、和物好きにはたまらない。メインキャラは場面の心情に合わせて着方が変わったり、衣装そのものが変わったりする。目の保養であり、繰り返し観ても飽きない要素のひとつ。

それに対して舞台は至ってシンプル。グローブ座を意識し、能舞台のような正方形の舞台がメインステージ。黒一色だが、上の階から見ると模様が描かれてるのが分かり、シンプルだけどシンプル過ぎない、芸術性を感じるメインステージ。

更にステージは、二階建て構造になっており、ひとつの場面として使われることもあれば、上下で分割して、二階部分を回想やイメージ映像を表す使い方(例:語りのみで終るオフィーリアの溺死シーンをビジュアル化、など)がされ、舞台美術や小道具が無くても、観客のイマジネーション力を働かせやすくなっていた。この構成は好きだし上手いなと思った。

舞台美術が凝ってない分、数種類の移動式の階段や国旗等の布を多様して、あらゆる場面やモノを見立てていたのも上手いなと思った。またシンプルな分、場面転換も早い。テンポが良い。

あと照明の使い方も上手かった。亡霊の「誓え〜」のシーンとか分かりやすくなってるし、客電も使って雷を表現したりとか。

舞台美術がシンプルだった分、衣装を華やかに、かつキャラクターを認識しやすいデザインにすることによって、キャラ映えさせていたと思うが、その分、役者の実力も試されることになる。

今回は、かつて萬斎さんと共に作り上げたという、河合先生の翻訳台本を明瞭に喋れる、気持ちよく発声できる役者たちが勢揃いしていた。繰り返し観ても飽きないのは、彼らの力が最も大きいのではないか。願わくは、またこのメンバーで観れたら嬉しい。

あと劇中劇のシーンは、舞台によって表現方法が様々で、演出家の腕の見せどころだと思うんですけど、今回は大衆演劇である歌舞伎を取り入れたのが良かったと思う。

毎回見るたびに歌舞伎も観たくなっちゃった(笑)
今、FFX歌舞伎もやってるし、歌舞伎マイブームくるか、コレ?w

リーディング公演の時から引き継がれた人形劇も健在。あの下ネタは好き嫌いあると思いますが(苦笑)あのテイストの人形劇だからこそ出来るネタだとは思いますよ、ええ。

主要人物について

●ハムレット/野村裕基

野村萬斎師の息子であり、同じプロの狂言師。

今回は現代劇の初舞台とは思えない程、とても堂々とした立派なハムレットでした。事前に、パパが30代の頃に演じたハムレットのDVDを鑑賞しましたけど、正直、私は裕基くんのハムレットの方がポジティブで好きです。指導者がパパなだけに、パパと重なって見えるところも多々ありましたけど、話が進むにつれ、役を自分のモノに出来ていたように思います。何より発声が良かった〜。

萬斎さんのハムレット王子は本人の出自に対する悩みを重ねて鬱々しさがあったのに対して、裕基くんのハムレット王子は演出の流れから星の王子様と重ねていた(ポストトーク談)。彼のハムレットにポジティブさを感じたのは、こういうところの差なのかなと。要は性格。

『ハムレット』は悲劇なのだから、もっと鬱々しさが欲しいという意見もあるでしょうが、私は裕基ハムレットに『生きてる?死んでる?生きてるけど、心が死んでない?』の答えを見た気がします。自分の使命を全うした男の話。ハムレットの衣装が黒から白に変わるのも、肉体は死に向かえど心が復活していく様を表しているようで印象的でした。

野村萬斎監督の初映画作品『虎の洞窟』(生を放棄した男の話)と対になってるような気もして、その相乗効果もあったかもしれません。

まぁ、なんだかんだ綺麗事を言ったところで、復讐方法に関しては色々と思うところはあるんだけど(苦笑)、それは原作の問題なので割愛w

千穐楽での彼の涙を見て、裕基くんのハムレットを見届けられてホントに良かったと思いました。
これからも、その純粋な心と若さを武器に色々と挑戦していって欲しいと思います。

●レアティーズ、ローゼンクランツ/岡本圭人

ジャニーズ事務所所属。岡本健一さんのご長男。

最近のジャニーズ事情分からないので😅今回を機に初めて知ったんですけど、どちらかというと、お父さんの健一さんの方が知ってるかな(ちょいちょいドラマで見かけた記憶)。こんな素敵な息子さんが居たとはな。

前半のレアティーズはとても爽やかに。妹想いの優しいお兄さんの雰囲気がよく出ており、配役ピッタリでした。黄緑の洋装寄りの衣装も爽やかさが似合っていました。終盤、ハムレットが白のYシャツになるのに対して、闇落ちしたレアティーズが黒服に身を包むのは、画的にも良い演出でした。

レアティーズの出番が無い中盤は、ローゼンクランツとして登場。相方のギルデンスターン(森永友基さん)が地毛のアフロだったため、自らアフロのカツラを購入して挑み、双子設定が出来たというエピソード(ポストトーク談)はGJ👍✨と思いました。二役演じる上で見た目を変えるのは重要ですし、とても愛嬌あるキャラクターに仕上がったと思います。

総合的にとても素敵な役者さんだと思いました。
今後もお見かけしたら応援したい👍✨

●オフィーリア/藤間爽子

こちらは女優であると同時に、日本舞踊の若き家元😳

衣装は着物寄りで、兄と同じ黄緑で揃えてるのが、兄妹感が出てて良かった。裕基ハムレットに相応しい、とても気品あるオフィーリアでした。歌声も透明感あって好きでした。

ただ気品を感じるせいか、プレビュー公演の時は狂乱シーンに物足りなさを感じていたのですが、段々良くなっていき、千穐楽ではついに爆発していたと思います。凄く良かった!そう、これを待っていたんだ!!…みたいな👍✨

特に全力投球でクローディアスに花を投げつけたのは最高でした!🤣👍✨

ちなみに日本舞踊の世界でも、狂言同様、無いものを有るように見せる、観客のイマジネーションに訴える手法があるそうで、今回の舞台でも実物の花は持っていません。でも、私にはナチュラルにお花は見えていましたよ。ただ狂言を見慣れてる者の意見なので(笑)、一般のお客さんの反応も気になるところ。

あと爽子さんのオフィーリアを語る上で欠かせないのが、溺死した時のイメージシーン。儚く、切ない、舞になっていました。これは、演出家・野村萬斎と、日本舞踊家・三代目 藤間紫だからこそ出来たシーンともいえるでしょう👍✨✨✨

●ホレイシオ/釆澤靖起

もう最高!👍✨

これしか言えない(爆)
いや、ホントに。

メガネのホレイシオ良き!
乙女ゲーに居たら絶対に人気でる奴!マジ!!🤣

裕基くんと年齢差あるみたいだけど、そんなこと全然感じませんでした。裕基ハムレットにとって、最高の理解者で、真の友でした😭

ホレイシオ役が彼で良かったです。
良いもの観させて頂きました。

●ポローニアス、墓掘り役/村田雄浩

今回の演出でもう一つ褒めるとするならば、ポローニアスを陽気な三枚目キャラに全振りしたところでしょうか。

もう村田さんの芸が光る光る✨
鬱々しい『ハムレット』という作品が、彼の存在で、グッと見易くなっているのです。

月崎さんと凸凹コンビ組んでの、墓掘りのシーンも楽しかった〜!世の中の動きに合わせて、台詞も日々変わっていくので、対応するのは大変でしたでしょうけど、観客も絡めたアドリブ?毎回楽しませて頂きました😁👍✨

あとポローニアスの衣装が茶色なのに対して、娘と息子は黄緑だったので、一家が仲睦まじくしてるシーンでは、大地と、その土の上に芽が出た若葉🌱のようにも見えました。しかし、父(大地)の死によって、片方の若葉はボロボロに、もう片方の若葉は黒く枯れてしまうのですね…

●ガートルード/若村麻由美

とてもとても美しい王妃様でした。
それはそれはクローディアスが惚れ込むほどに。。。

萬斎さんの新解釈により、クローディアスに愛されて、“女”であることを取り戻した王妃と、ハムレットからの手紙で、“母性”を思い出した王妃の、心の移り変わりを魅力的に演じてくださいました。

衣装も最終的に、情熱的な赤から、冷静な水色(水色は武士の死に装束の色である浅葱色にも近いので、そういう意味合いもあったりして?)に辿りつくのは、女から母に戻った表れだったのかな?と思います。

●クローディアス、ハムレットの父の亡霊/野村萬斎

お待たせしました、我が推し様。

まずは、亡霊。リーディングの時と比べると、何段階もバージョンアップしており、完全に、私が好きな修羅能の世界でした。ご馳走様でした(ヲイw)

他の舞台を観ても、亡霊の表現って難しいのか、只の先王にしか見えないんですけど、これは完全に亡霊でした。やっぱお能って素晴らしい。

あと序盤に出てきて終わり、じゃなくて、1幕の終わりにも姿を見せて、ハムレットを監視してる感じがまた良きでした。

てか何だか弟に対する恨みが、とんでもなく強いような…w
ラストのハムレットが「母の後を追え」とクローディアスに自害を強要するシーンは、そこに亡霊の気持ちも乗っかってる気がするんですよね。

そして、そのクローディアスですが、只の悪人ではなく、新解釈により、とても人間味のある、魅力的なキャラクターになってしまいました。野村萬斎、恐るべし(笑)

衣装もパープルを基調としたゴージャスな衣装で、今までのクローディアス像とはひと味違う感じ。しかも、この派手な感じが似合ってしまうから、推し様のそういうところが好き(笑)

今回のクローディアスは、王妃ガートルードのことを本当に愛してるという設定。だから萬斎さんのイメージにしては珍しく肉欲なシーンもあったり😳💕(エ、エローディアス爆誕w)

だけど悲しいかな、歪んだ方法で手に入れた愛は、長くは続かなかった。クライマックスで、クローディアスがハムレットを亡き者にしようとしてるのではないか、と疑ったガートルードは、ハムレットを庇い毒入りのお酒を“自分の意志”で飲んでしまいます。

計画が露呈することを恐れ、王妃を止めれなかったクローディアスは、症状が出るまでの間、王妃を見ながらずっとオロオロ😱💦

そんなに王妃が好きだったのかよ…と思うと、心が締め付けられます。レアティーズが自分の考えた策が原因で命を落としたように、クローディアスがこのような形で王妃を失ったのは、彼に対する罰だったのかもしれませんね。

最期はハムレットに追い詰められ、自ら毒を飲み、王妃に寄り添うように亡くなります。最後の最期に、王妃に拒絶されたにも関わらず…

この時のシーンが、萬斎さんの髪が乱れてると、まさに絶望感が増幅されて(あとセクシー💕笑)、凄く良いんです。日によって髪が乱れたり乱れなかったりするのですが、千穐楽では最高の乱れ方でした。前髪の落ち方カンペキでした!w

ってことで、なんだろ。
最終的にはクローディアスに全部持っていかれましたねww

ん…?🤔

なんだかんだで、萬斎さん、主役を食いかけてないか?ww

むしろ食ってる?食ってない?
それだよ問題は(笑)

🐯🐹🐯🐹🐯🐹

▼昨年のリーディング公演の感想はコチラ

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