能にして能にあらず 〜翁〜【能楽観賞日記】#32

第十五回 桂諷會-祈りと鎮魂-長山禮三郎三回忌追善能
国立能楽堂
2022年11月23日(水・祝) 13:00 開演

能にして能にあらずと言われる神事『翁』。元々、三番叟は、その中の演目のひとつです。今回、その正式な形で萬斎さんの三番叟が観れるということで、発売日に電話してチケットをゲット。有難いことに脇正面の2列目を確保できました。中正面寄りなので、個人的にもベストポジションです。

ちなみに神事なので、『翁』の時だけ途中の入退場は許されません。遅刻厳禁です。

「翁」

   翁:長山桂三
 三番叟:野村萬斎
  千歳:長山凜三
  面箱:野村裕基

   笛:松田弘之
小鼓頭取:大倉源次郎
  脇鼓:清水和音・大倉伶士郎
  大鼓:亀井広忠

*・*・*

まず、面箱の裕基くんが先頭で出てくるのですが、その時点で緊張感が凄い伝わってきました💦

次に千歳が、カッコ良く舞い、翁の番へ。
とても神々しい佇まいが印象的でした。

そして、三番叟へ・・・。

初めて萬斎さんの三番叟を観たのがホールだったので、いつか能楽堂でも観たい❗と思ってた願いが早速叶ったわけですが、まず驚いたのが、萬斎さんが足拍子をドン❗ドン❗とやる度にお尻に振動まで伝わってきたこと😳❗この振動は後方のお席まで伝わっていたそうです(凄ッ😳❗

長唄の会(国立劇場)の時は、所作台だからか最前列でもそんな風には感じなかったので、能楽堂だと振動まで来るんだ⁉️能楽堂揺らしてるよ❗ゴジラやん‼️と思いました(笑)。ただ、音は所作台の方が響くのかなァと🤔

横から見ていて、烏飛びは真横じゃなくて舞台中央に向かって飛んでるんだなとか、新たな発見もあって良かったデス。脇正面でもベストポジションだとよく見えて良きでした😌

能楽鑑賞始めてまだ8ヶ月なのに、ホール公演→長唄の会(袴三番叟)→硝子舞台→能楽堂…とバリエーション違いの三番叟を今年は4回も観れて何だか夢のよう。萬斎さんにいっぱい幸を貰えて感謝感謝です😌

狂言「二千石」

   主:野村万作
太郎冠者:高野和憲
  後見:野村裕基

【あらすじ】由緒ある二千石の謡をみだりにうたった太郎冠者が、主に討たれようとするが、太刀を振り上げる手つきが先代そっくりだといって主を泣かせて許される。

*・*・*

本当は、梅若桜雪先生の独吟が先の予定でしたが、足を痛めて出入りが不自由な先生の都合だったのか、急遽、順番を変えて狂言が先に。

先代に似ることは、めでたい!という内容の、笑い留めの狂言で、父から子へと受け継がれるこの業界、そして忌追善能の名に相応しい内容の狂言でした。公演情報が出た時は、まだ演目未定になってた気がするので、とても良い演目を選んだな、とほっこりしました。

太郎冠者が謡を謳う最中、心ココにあらずな表情でそっぽを向くご主人様😂

怒ってたのに先代に似ていると煽てられて、太郎冠者に刀をあげちゃうご主人様😂

太郎冠者が、先代に似ていると煽てたのは本心か、それとも命助かりたいがための方便か?🤔

考え方によっては印象も変わってきますが、とても面白かったです😌

独吟/舞囃子

独吟「江口」
梅若桜雪

舞囃子「恋重荷」
観世銕之丞

  笛:藤田貴寛
 小鼓:大倉源次郎
 大鼓:亀井忠雄
 太鼓:小寺眞佐人
 地頭:梅若桜雪

*・*・*

このあと、梅若桜雪先生の独吟「江口」へ(実際には連吟でしたが)。そして、そのまま舞囃子「恋重荷」の地頭を務めておりましたが、今まで観てきた中で一番、介護必須で体調がよろしくないようでした。でもお声は健在なので、お声が出るうちは舞台に立ちたいということなのかしら。能舞台は構造上バリアフリーではないので、せめて本人が楽に出入りできる方法があればな、と思います。無理やり切戸口を通ってる姿は見てるこちらも辛いので💦

能「融」思立之出・十三段之舞

尉/融大臣(シテ):長山桂三
   旅僧(ワキ):森常好
  所ノ者(アイ):石田幸雄

  笛:竹市学
 小鼓:成田達志
 大鼓:山本哲也
 太鼓:小寺眞佐人
 地頭:浅井文義

【あらすじ】ある日東国より都に上ってきた僧(ワキ)の前に、老人(前シテ)が現れ、自分のことを「潮汲み」と名乗る。老人は、かつて融の大臣が、陸奥・塩竈の浦の景色を都に移すために、難波から海水を都まで運ばせて池を作り、御遊を楽しんだことを語るが、その後は受け継ぐ人もおらず、荒れ果てている有様を嘆く。老人は僧の求めに応じ、河原院から見える東の音羽山から西の嵐山までの名所を教えるが、ふと我に返ると、潮を汲む有様を見せて、姿を消す(中入り)。夜になり、僧が寝ていると、融の大臣の亡霊(後シテ)が現れ、昔を思い出しながら舞を舞う。

*・*・*

「思立之出」はワキの小書で、これがつくと、幕からワキが謡いながら登場する演出になります。

「十三段之舞」は、後シテが黄鐘早舞五段、盤渉早舞五段、急ノ舞三段と舞う形になり、通常版より舞いの時間が長くなります。

これが凄い圧巻でして、後シテが長い時間、ひたすら舞を舞う姿に心奪われました。舞い終えた後、少し息を切らしてるのを見て、生半可な気持ちじゃ挑めないだろうなと思いました。しかも、その後も演技は続くのですが、声はしっかりと出ており素晴らしいなと思いました。

長山桂三師のお能は今回初めて拝見しましたけど、面をしてても、とても通る声で聴き取りやすく、良いお声だなと思いました。

この日は(も)萬斎さんの「三番叟」の足拍子に圧倒されたけど、万作さんの狂言もほっこりしたし、長山桂三師の黒髪白装束姿で舞う「十三段之舞」も圧巻だったしで、帰り道も余韻に浸りまくりの素敵な会でした😌

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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