圧迫面接な話と歌舞伎「勧進帳」の原曲【能楽観賞日記】#23

能を知る会 東京公演「安宅」
観世能楽堂
2022年9月23日(金・祝)14:00 開演

今回は、解説・字幕・質疑応答付きの初心者向けの公演「能を知る会」シリーズでございます。字幕があるのでリラックスして観賞できるし、観世流能楽師シテ方の中森貫太先生のお話や、古典芸能解説者の葛西聖司さんのお話が聴けるので、個人的にもお気に入りの公演シリーズです。

この日は、めでたく完売ということで、素晴らしい!前回の東京公演の時は空席が目立ってたので、良かったです。来月の鎌倉公演も完売してるそうですが、11月の横浜公演(もちろん萬斎さんも出る)は販売中なので、ご興味のある方は是非!(鎌倉能舞台の公式サイトかイープラスでチケット購入できます)

にしても、最近、観世能楽堂に来る機会が多いなァ。いろいろと快適だし、一番近いから良いんだけどね(横浜も近いけど坂道が…苦笑)

<これまでに訪れた能楽堂の回数>
・国立能楽堂 → 4回
・宝生能楽堂 → 3回
・観世能楽堂 → 6回
・喜多能楽堂 → 1回
・矢来能楽堂 → 1回
・横浜能楽堂 → 3回

ちなみに都内には、まだまだ能楽堂がたくさんあるので機会があれば訪れてみたいし、何より地元にも小さな能楽堂があることをうん十年地元で生きてきて最近初めて知ったので(爆)、いつか訪れてみたいものです。

そういえば先週、長唄の会を観に国立劇場に行ってきましたけど、初めてのジャンルで初めての会場…アウェイ感とまではいかないけど、いつもと違う雰囲気だったので、19日ぶりに能楽堂に来たら何かホッとしました(ホームになりつつあるのか!?笑)

講演「男のドラマ 女の運命 〜安宅〜」

始めにカンタ先生のご挨拶があって、直後に葛西さんの解説が始まるのですが、今回はどこから出てくるんだろう🤔と思ってたら普通に正面席に座ってました(笑)。葛西さんのお話聴くのが好きで、今回も歌舞伎の「勧進帳」と、その原曲であるお能「安宅」の違いについて詳しく説明して下さりとても参考になりました😌

ちなみに長唄の会に引き続き、能「安宅」のお囃子方に亀井広忠さんも居たので、萬斎さん含め、短期間に同じ方を三人も観て何だか感覚バグりそうだった(笑)

狂言「今参」

   大名:野村萬斎
阪東方の者:中村修一
 太郎冠者:野村太一郎
   後見:内藤 連

【あらすじ】新しい使用人を雇うことにした大名(演:野村萬斎)は、家来である太郎冠者(演:野村太一郎)に探させる。太郎冠者が大きな街道で待っていると、奉公志願の男(演:中村修一)が通りかかったので、声をかけて連れ帰ることに。道中、太郎冠者は大名に気に入られるよう、男に大名の好きな秀句(だじゃれのこと)をいくつか教える。対面した大名は男を気に入り雇うことにしたものの、さらに話す内、新参の男は秀句を交えることになるのだが…。

*・*・*

葛西さんの解説によるとお能「安宅」に合わせて萬斎さんが選んだ曲。秀句(洒落)ものであり、その一連の流れの中で「安宅」に関わる人物(義経、弁慶、静御前)の名前が出てくるのですが…🤭というお話。

大名が新たに召使いを抱えようとする話で、出だしは蚊相撲や文相撲と一緒なんですね(笑)。狂言の秀句ものは初心者にはなかなか難しい曲でしたが、目と目で通じ合う~♪じゃないですけど(笑)、中村さんが萬斎さんの顔の動きに合わせて立ったり、膝をついたり、舞ったりするのが面白かったです😂

てか萬斎さん、途中からちょっと顔芸入ってたでしょ⁉️😂

中村さん演じる奉公志願の男が面白い奴だと一旦は大名に気に入られるものの、秀句の答えを連続で間違えて、萬斎大名をちょいちょい怒らせてしまう。…のだけど、その怒った顔が、それはそれでカッコ良かったり///(ォィw

瞬時に表情をコロコロ変える萬斎さんの芸が光っており、脇正面からの鑑賞だったけどお顔が良く見える位置で良かったです😁

ラストは奉公志願の男が浮きに乗せて正しい秀句を披露し、大名と一緒に舞ってめでたい感じで終わるので、一瞬クビになりかけたけど、今回は無事採用ってことで良いのかしら?😅

そういえば序盤、太一郎さんと中村さんが演技中、切戸口から飯田さんが出てきて、そっと待機中のまんさいさんの背後へ。何か小声で話ながら後襟を縫う仕草。ほつれでもあったのかしら🤔そういえば以前も二人袴の時、飯田さんが分解しかけた袴を縫ってたなァと、ちょっと思い出したのでした😅

能「安宅」勧進帳 瀧流

武蔵坊弁慶(シテ):中森貫太
義経ノ郎等(ツレ):遠藤和久、永島充、佐久間二郎、桑田貴志、中森健之介、奥川恒成、石井寛人
  源義経(子方):富坂耀
  冨樫某(ワキ):森常好
   強力(アイ):高野和憲
   従者(アイ):野村裕基

【あらすじ】兄・頼朝と不仲になった源義経(子方)は、弁慶(シテ)、その他家臣(ツレ)たちと共に山伏の姿となり、奥州へと向かった。一方、頼朝は関所を造って山伏を厳しく取調べており、義経一行も例外ではなかった。一行が加賀国安宅湊に差し掛かった所で関守富樫(ワキ)に通行を阻まれる。そこで弁慶は、南都東大寺再建の為に寄進を募っている山伏だと弁じ、巻物を本当の勧進帳の如くに読み上げる。富樫は恐れをなして一旦関を通そうとするが、強力姿を装う義経が見咎められてしまい、そこで弁慶は…。窮地に陥った義経を弁慶の機転が救うドラマチックな名曲である。

*・*・*

ツレが7人登場する超大曲。てか本当は9人だけど、多すぎるので2人減らしたらしい💦
前回、カンタ先生が言ってたけど、昔から能舞台のサイズは変わらないのに、進化の過程で人間はどんどんデカくなってますからね💦
その内、ホントに能舞台のサイズも見直さなきゃいけない時がくるのかもしれません…。

ちなみに大曲だけど先生が所属してる観世九皐会は人数が多いから、他のお家に比べたら、比較的出しやすい曲とは言ってました。源義経は子方だけど、こちらも子供向けの教室やってたりするので演者選びに困らないそうです。

今回の子方も先生の教え子(中学生になったので子方卒業)の弟さんで小学4年生って言ってたかな。可愛らしさと凛とした雰囲気が同居しており、凄く良かったです。どうして源義経を子方が演じるのか分かった気がします。変声期前の透き通った声がカリスマ性を生み出すんですね〜。

ちなみにカンタ先生が、身長150センチ超えてくると変声期を迎えてしまうって言ってました。歳じゃなくて身長なんだ…⁉️👀
なのでスケジュールが一年前に決まってしまう都合上、自分の息子はギリギリまで引っ張ったけど、普段は早めに卒業してもらってるらしい。でも今回の子は、賞味期限があと二年くらいあるから暫く大丈夫とのこと(笑

アイは高野さんと裕基くんのダブル出演。間狂言には、こういうパターンもあるのねぇ。船弁慶の時も思ったけど裕基くんはこういう間狂言が上手いなァと思います。すごくカッコ良く見えるんです。高野さんも本狂言の時のニコニコモードは封印して真面目なアイ。いつもと違う雰囲気にドキドキでした👀

葛西さんが見どころを丁寧に解説してくれたので、しかも大人数で迫力あって面白かったです。最近、現在能(主人公を、霊ではなく実在する人物として登場させるもの)を観る機会が増えてきたけど、現在能もドラマがあって面白いなァと感じるようになってきました😌

最後に、、、カンタ先生が質疑応答で言ってたのですが、初心者向けの公演は他にどんなものがオススメかという質問で、明確な金額は言わなかったけど馬鹿高いチケット料金の公演はやめておけと(苦笑)。シテ方がやりたい演目をやってるだけで、玄人向けの公演だから一般人が観ることは考慮されてない価格設定なんだとか。

そこそこの値段で、解説付きのものが良いでしょうということで、私が観て来たシテ方さん主催の公演はどうだったかなーと振り返ってみたら、割と解説付きの公演が多かったです(やさしい)。解説が付いてないものでも、シテ方さんの個人のサイトで事前解説動画を出してるパターンもありましたね。

ちなみに安過ぎると素人弟子さんの発表会だったり、若手クラスの会だったりするので、そこそこの値段ってのがポイントなんでしょう。国立能楽堂主催の定例公演なんかはリーズナブルで字幕付きなので、こちらも良いかもしれません。ご参考までに。

▼前回の【能を知る会】はコチラ

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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