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石持浅海「殺し屋、続けてます。」

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殺し屋に商売敵が!?殺し屋が解く日常の謎シリーズ、第二弾!
(「BOOK」データベースより)

日本、ヤバい。

「ヤバい」しか出てこない語彙の貧弱さはさておいて、日本、ヤバい。

日本には殺し屋がいっぱいいるぞ。

「想像にすぎないよ」僕はビールを飲み干した。「でも、この推察が正しければ、もう一人の殺し屋がすぐ近くで仕事をしたことになる。報道を見るかぎり、見事な手際だ。どんな奴なのか、会ってみたい気もする」

こっちも。

「それが本当ならね」
わたしはビールを飲み干した。「でも、すぐ近くでもう一人の殺し屋が仕事をしたことは、間違いない。ニュースを観るかぎり、見事な手際だよ。どんな人なのか、会ってみたい気もするな」

おんなじこと言ってるし。

プロはプロを知る。プロフェッショナル仕事の流儀。

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文藝春秋
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この「殺し屋、続けてます。」は、過去にご紹介した「殺し屋、やってます。」の続編です。うーん、タイトルを見ればどっちが続編だかすぐ分かる!素晴らしい!

坂木司に石持浅海の爪の垢を煎じて飲ませたい。「先生と僕」と「僕と先生」のどっちがどっちの続編なんだか、いつも分からなくなるんだよ。

さて登場人物が総じてモラルの低い石持ミステリの中でも、特に倫理観のない職業殺し屋の富澤さん(本業は経営コンサルタント)。

彼への依頼料金が1件650万円(別途オプション費用)だというご説明は前回致しました。

この金額設定が、とっても経営コンサルタントらしいともお伝えしたとおり。

で、今回の「殺し屋、続けてます。」で新たに登場した、もう一人の殺し屋、鴻池知栄さん。本業はアーティスト作品のネット通販業経営で、中学生の娘を持つシングルマザー。

彼女の金額設定はおいくらかと言いますと。

最初は、一度だけのつもりだった。
娘の志望校は、六年間の学費が合計で五百五十万円だった。夫が存命中から続けている通信販売業で生活はできるけど、私立学校に通わせるほどの収入にはならない、どうしようかと思っていると、たまたま知り合いから殺したい相手がいるという話を聞いた。殺してやりたいほど憎んでいるのだけれど、病身のため実行できないのだと。
「五百五十万円払ってくれたら、代わりに殺してあげますよ」

あー大体そんな感じよね!入学金と授業料と施設費等の納入金。ちなみに我が娘の通っていた学校では、2014年度の中学校3年間の納入目安は2,808,000円だったわ(恐ろしい…)。高校も同じだとして5,616,000円(さらに恐ろしい…)。

学校によって差はあるものの、鴻池さんの見込みはだいたい正しいわね。

1人を殺す代金も、片や経営コンサルタント的算出方法。片やシングルマザー的算出方法。

価格設定にもいろんなやり方があるもんです。

「殺し屋、やってます。」の富澤さんの650万円に比べれば、鴻池さんの550万円はなんと100万円もリーズナブル。価格競争が発生して、富澤さんも後々にはディスカウントの必要に迫られる可能性があります。大丈夫か富澤、価格維持できるか。

ですが、もう1つの可能性も。

鴻池さん、あなたね。

学校に納入するお金は確かに550万円程度かもしれないけど、実際に通わせるにはそれ以外の費用も発生するのよ。

制服代・定期代・修学旅行積立・部活の費用・etc・etc…。

さらに、中学生のお嬢さんが高校にあがって受験生になったら、予備校の費用もかかる。いや恐ろしいよホントに!金に羽が生えて飛んでいくから!

「550万円じゃ足りん!」となって、鴻池さん側が値上げする可能性も。

さてどっちだろう。上がるか、下がるか。

いざ私たちが富澤さんか鴻池さんに殺人依頼をする場合に備えて、1回あたりの相場感は常にチェックしておかなきゃですね。

—-と、ミステリのはずなのに、お金のことばっかり気にする私。

ミステリをミステリたらんとする「謎」については、まあ、オマケのようなもんだと思っといてください。本題のお仕事(殺人)に関する記述は、さらにオマケのようなもんだと思って、わずか数行の記述を読み流してください。

この本で一番重要なのは、殺し屋がどんどん増えて行く、モラルの低い日本のご時勢です。

さらに言うならば、路上でストッキングをいきなり脱ぐ女性がいるという、はしたない日本のご時勢です。

あー、日本が心配。

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