2018_07
11
(Wed)20:00

My Fair Lady #86









みんなを見送ってリビングへ戻ると、嵐が去った後のように部屋が散らかっていた。
それらを真っ先に片付ける為に黙々とキッチンへ食器を運ぶ。

「なぁ、チャンミン。それは俺がするから少し話を聞いてくれないか」

ユノが声を掛けてくれるけれど、まともにその顔を見る事が出来ずに僕はまたキッチンとダイニングテーブルを往復しようとした。

「チャンミン!」

「ッ///!」

食器を重ねていた手をユノに取られて体ごと向き合わせられてしまう。
危うく手元から皿が落ちる所だった、、それをそっとテーブルに置くのをユノは黙って見守っていた。

「さっきの事を誤解してるだろ、だからここできっちりと弁明させて欲しい」

「………///っ」

両腕を掴み、俯いた僕の顔を下からユノが懇願するように切実な表情で見上げる。

その顔に僕はほんと、弱いのに、、、

「かお、」

「あ?」

「顔を見たらイクって、、っ」

そんな事を聞かされて僕はまともにユノを見るのが出来なくなっていたんだ…

「ハァ、、だからその事をちゃんと説明させてくれ、頼むから」

両腕をグイッと引き寄せられて、僕の体はユノの胸へとすっぽりと収まる。

「みんなには誤解されたままでいいんですか?」

ユノの顔が見えなければ普通に会話も出来ると思った。
だから僕もそっと、ユノの腰に腕を回すと。
ユノの顎がいつものように僕の肩に乗り、そうすると不思議と心が落ち着いて来るのだ。

「あぁ…あいつらはもういい。人の話を茶化してばかりだからな」

「ふふ、散々揶揄われましたもんね。ユノがあんなに焦るのなんて珍しいのに」

いつもクールなユノが今夜は百面相に変わった、昔馴染みの仲間達といるとあんな風になるんだと。

知れて素直に嬉しかった。

「俺の弱味がここにいればあぁもなるさ。それともあまりにみっともなくて恥ずかしい思いをさせてしまったか…?」

顎が上がり、ユノの吐息が首筋に掛かる。

「っ、///よわみ?」

「チャンミンがそばにいると俺はどうも冷静でいられないらしい。頭の中はチャンミンがどう思うか、傷付いてないか、不安にさせてないか。その事ばかりで体裁を保とうとか、そこまで気が回らないんだ」

チュッ、とリップ音が聞こえて首筋が湿る。

「チャンミンにはもう嫌われたく無い…」

そしてまた同じ場所に印を刻むように長く唇が押し付けられた。

ユノの唇が熱いのか、僕の体が中から火照っているのか分からないけれど、じんわりと耳に熱が集まって行く。

「嫌いになんて、、」

なれないのに、って言おうと思った瞬間、血がドクドクと滾っていた耳をユノが甘く噛んだ。

「んっ///、、」

子虎が兄弟を愛おしむようにガジガジと噛むみたいなそんな愛撫に思わず吐息を漏らしてしまう。

「…今、俺はチャンミンの顔を見たら自制が効かないかもしれない」

「え、…?」

言いながらユノは耳朶を舌で転がしている。

擽ったいのにユノの舌遣いがぴちゃぴちゃと卑猥で、勝手に体がムズムズと疼き出す。

勿論、体を真正面から寄せ合うユノには下半身の反応がダイレクトに伝わっているだろうけど、、、

「感じてるのか、今どんな顔をしているのか…それを想像するだけで俺もこれだ」

すりっと、ユノが自分の股間の膨らみを僕の股に擦り付けてその意味を示す。

「ん、ン、、っ、、!」

スリスリとユノが何度も股間を擦り合うように腰を使うので、僅かなそんな刺激にさえ気持ち良さを知ってしまった体が顕著に反応する。

「出すか?」

ズボンの上からでも苦しい程に張り詰めた部分にそっとユノが触れる。

コクコクと頷いて、今の状況から楽になりたいと必死に願った。

「ユノ、、」

キスを求めて顔を寄せようとしたところでふいっと逸らされてしまう。

「駄目だ。今見たら…本当にもう…、ん゛っ!?」

逸らされた顔を手で挟んで僕はユノと向き合った。

「顔見ただけでイッても僕は引きません。だからキスもして欲しいし、エッチも…」

言い放った瞬間、目が合ったユノは困ったように微笑んで唇を重ねてすぐに離す。

「いつの間にそんな表情を覚えた…?手で抜き合っていた時も相当だったが、さっき口でされているチャンミンの顔なんて……」

「…顔が、何ですか?」

「あんな風に恍惚な顔をされたら、、、チャンミンを壊してしまいそうで俺は怖い」

「だから抱かなかったんですか…?」

「あぁ、そうだ」


なんだ、そういう事だったのか、と。

ストンと気持ちが収まる。


「ユノ……」

「あ?」

「僕を抱いて壊すかもしれないって思うのは大きな間違いです」

「………?」

「ユノに抱かれない体だと思い込む方が僕は壊れてしまうのに……」


言った瞬間、僕の唇はユノに奪われた。












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