夢の中で私は電柱になっていた

路地

 

私は大学生の頃、『電柱』になる夢を見た。

 

見える景色は、地元の見覚えはあるが少し違った場所だった。

 

私はただそこに佇み、犬の散歩をする人、腰の曲がったお婆ちゃん、ただの通行人を眺めて一日が終わり、また次の日も同じように一日が過ぎていくだけ。

 

現実の睡眠時間は7時間程度だったが、その夢の中では一生とも呼べるほど長く、退屈な時間だった。

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幼かった頃の記憶が蘇ってくる

その夢の終わりは、工事で電柱の場所が変わって私は居なくなった、という結末でようやく私は解放された。

 

目が覚め、いつもの様に学校へ行き、帰りに夢に出て来た場所へ行ってみた。

 

すると、夢で私だった電柱は無く、幅1メートルに高さ2メートルくらいの鳥居らしき物と、それに密接した一人か二人ほどしか参拝していなさそうな1畳くらいの社があった。

 

社の中には、木の机とお供え物の大福。

 

それに、住宅街には違和感のある、菱形の白い紙が連なっているものが巻かれた黒く焦げた大木があった。

 

私は、ふと思い出した。

 

以前ここへ来た事がある。

 

何度も来た事がある。

 

大木を見ていると、記憶が蘇ってきた。

 

私は小学校低学年の頃、毎日のようにその小さな社へ通い、机の引き出しにあった小銭をくすねていた事、そして何故そこへ行かなくなったのかも思い出した。

 

それは、小学校の帰り道に落ちていたライターを手にし、木に巻かれている菱形の紙を燃やしたからだった。

 

紙に火がつくと勢いよく燃え、幼かった私は怖くなり逃げてしまった。

 

その後、そこへは足を運ばなかったからどうなったかも知らずにいたが、木も燃えてしまっていた。

 

電柱になったあの夢は、私への戒めだったのかもしれない。

 

(終)

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