2019-07-21 (Sun)
本日のキーワード : 完全雇用
完全雇用(かんぜんこよう)とはマクロ経済学上の概念であり、ある経済全体で非自発的失業が存在しない状態。
失業の発生に対して、生まれた概念であり、本質的に失業がない状態を指すが、概念の運用に関しては必ずしも失業率0%を意味しない。「完全雇用」とは「失業者が一人もいない」ということではなく、一定の摩擦的失業の存在を含んだ状態のことをいう。
本日の書物 : 『経済で読み解く日本史⑤ 大正・昭和時代』 上念司 飛鳥新社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 パリ講和会議にイギリス大蔵省の担当者として参加した【ケインズ】は、ドイツに懲罰的な賠償を求める多数派の人々に【失望】しました。そして、自分の無力さを実感し、交渉の帰結を見ることなく【途中帰国】してしまいました。
ジョン・メイナード・ケインズ
帰国したケインズは、大きな挫折感と失望から何とか立ち直り、【パリ講和会議の愚劣さを世界中に告発】するために、【『平和の経済的帰結』(1919[大正8]年11月)】という本を出版しました。この本が売り出されると、各国語に翻訳されて世界中に広まり、たちまち大ベストセラーになりました。
ケインズは「ドイツの賠償額はあくまでも【ドイツの支払い能力の範囲内にとどめるべき】だ」と考えました。…
ところが、実際にパリ講和会議の賠償委員会では、ケインズの提言は無視され1320億金マルク(金に換算して4万7312トン、当時のレートで約60億ポンド)という、【ケインズの見積もりの約3倍の巨額賠償金】が課されてしまったのでした。これは当時の【ドイツのGDPの20年分】にも匹敵する莫大なものでした。
しかも、この賠償金は【金本位制への復帰を前提】に、このときの【金(ゴールド)との交換レートで指定された通貨で支払わなければならない】と決まられました。…
この問題をもう少し視野を広げて考えてみましょう。【アメリカ】は第一次大戦を通じて、【巨大な「債権国」となりました】。アメリカから巨額の借入をした【英仏】には、この【債務返済の負担】が重くのしかかります。
さらに、【フランス】は自国が戦場だったので、【戦後の復興資金も必要】です。手っ取り早く借金返済と復興資金を得るためには、誰かから奪い取るのが楽。そこで、敗戦国である【ドイツ】は、英仏など戦勝国から【厳しい賠償金の取り立てを受ける】ことになったわけです。…
しかし、それは結果的に「英仏など債務国がドイツからの賠償金を巻き上げて、アメリカに返済する」という【新たな国際資金循環の誕生】を意味しました。これがいわゆる【「トランスファー問題」】です。
【トランスファー論争】とは、このときの【ドイツの賠償金支払い】に関して、【ケインズ】とは、スウェーデンの経済学者【ベルティル・オリーン】との間に展開された【論争】です。』
供給が需要を生み出す?
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、私たちの日本の歴史を、経済・金融の面を切り口としてみた場合、これまで学校の授業でお勉強させられ、「訳の分からない歴史」でしかなかったものが、普段の日常感覚で国史の流れをスッと、いとも簡単に理解できる、という良書で、また、多くの方々が勘違いしていると思われる「おカネ」というものについて、非常に正しい認識ができるようになる、お薦めの書物の第5巻になります。
さて、本日は、先日に引き続きまして、「ケインズ学派」について確認してみたいと思います。
繰り返しになりますが、比較的新しい学問である経済学において、「主流派経済学」(Mainstream economics)とされる「学派」の地位は、その時代によって移り変わっているのですが、1930年代から1960年代まで、その「主流派」の地位にあったのが「ケインズ学派」になります。
ザックリと申し上げますと、文系の学問としての「古典派経済学」、そして、それに取って代わった理系の学問(数学=微分積分学を採り入れた経済学)としての「新古典派経済学」という流れがあって、そのどちらにも属さないものとしての「オルタナティブ学派経済学」の一つであった「ケインズ学派」が、「主流派」を占めた時期があったということになります。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆江戸時代のデフレ・レジームに風穴を開けた「藩札」
ケインズは、「古典派経済学」を批判し、「古典派の理論」の前提を問題視します。
「古典派」が想定していた2つの公準として、次のものがあります。
① 賃金は労働の限界生産力(量)に等しい
② 一定量の労働が雇用されている場合、賃金の効用は、その雇用量の限界負効用(負の限界効用/marginal distiliky)に等しい
「効用」(utility)というのは、満足度と読み替えると分かりやすいと思いますが、「限界負効用」は「安月給でこんな仕事なんかやってられない!」っていう部分のことを指します。
で、ケインズは、①の公準には同意しています。
ケインズが問題があるとし、批判したのが、「古典派」が想定していた、
② 一定量の労働が雇用されている場合、賃金の効用は、その雇用量の限界負効用(負の限界効用/marginal distiliky)に等しい
という仮定になります。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆マルクス主義とデフレーション
ちなみに、「古典派経済学者」というのは、デヴィッド・リカードやジェームズ・ミル、そして、その先人らを指す言葉として、あのカール・マルクスが考え出した言葉になります。
デヴィッド・リカード
ジェームズ・ミル
カール・マルクス
「古典派」が想定し、ケインズも同意した①の公準は、労働需要と実質賃金の関係を示したものになります。
では、労働供給と実質賃金の関係を、「古典派」やケインズはどのように考えたのでしょうか?
まず、人々(=労働者)が働くのは、生活をするための「おカネ」を稼ぐためですが、だからと言って24時間365日働くことはできません。そこで、一人ひとりの個人は、働く時間(労働時間)とそれ以外の時間(余暇時間)との時間の配分を考え、その結果、個人の労働時間が決まり、個人の労働供給量が決まるものとして考え、すべての労働者の労働供給量を合わせたものを「労働総供給」と呼ぶことにします。
次に、人々(=労働者)の「効用」(→これは満足度と読み替えると理解しやすいと思います)は、働く時間(労働時間)とそれ以外の時間(余暇時間)のバランスに依存している、と考えます。つまり、人々(=労働者)が、余分に働くかどうか判断する際に、そのメリットとデメリットを比べてみて決定するであろう、ということです。メリットというのは、獲得できるであろう「おカネ」の増額分で、デメリットは「余計に働かなければならない」という苦痛です。
これを言い換えますと、メリットに当たるのが「実質賃金の限界効用」であり、デメリットに当たるのが「労働の限界負効用」になります。
従って、人々(=労働者)は、「実質賃金の限界効用」と「労働の限界負効用」とが均衡する(=等しくなる)ところまで働く(=労働力を供給する)と考えられます。
「名目の賃金(W)」を「生産物価格(P)」で除したものを「実質賃金(率)」とすると、労働供給曲線は次のように示すことができます。
で、これに①の公準で示された労働需要と実質賃金の関係、つまり労働需要曲線を重ねてみますと、次のようになります。
上図に示されているように、両曲線の交点が均衡点で、これが「完全雇用」と呼ばれる水準になります。
ここで、「古典派」が想定していた2つの公準を再確認いたします。
① 賃金は労働の限界生産力(量)に等しい
② 一定量の労働が雇用されている場合、賃金の効用は、その雇用量の限界負効用(負の限界効用/marginal distiliky)に等しい
①の公準は、企業側を主体として、企業が利潤を最大となるように、「実質賃金」と「労働の限界生産力」を比較しながら、「労働雇用量」を決めるであろう、という「需要サイド」の想定です。
逆に、②の公準は、労働者側を主体として、労働者が自身の「効用」が最大となるように、「実質賃金」と「労働の限界負効用」を比較しながら、「労働供給量」を決めるであろう、という「供給サイド」の想定となっています。
そして、ここが重要なポイントなのですが、「古典派」の考え方の肝は、「供給が需要を生み出す」です。
カール・マルクスが論じた、なんちゃって科学、科学擬(もど)きである経済学“説”の根本にあるのは、「労働価値説」ですが、これも「供給が需要を生み出す」的な、現代から見れば陳腐で馬鹿々々しい発想でしかなかったのですが、でも、当時ですら小馬鹿にされる“説”でした(笑)
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆偽物の経済学であるマルクスの理論を破壊した、経済学の本物の革命
それでは、何処がどう問題なのでしょうか?
ということで、本日はここまでとさせて頂きます。
続きは次回に♥
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