「脳と音韻とファ行」その3 | 福盛貴弘の脳炎日記

福盛貴弘の脳炎日記

日常生活で起きたことを素朴に書き記しています。
まずは、予告編2編をご覧ください。

その1に前提、その2に現状の/hw/説をを示したが、そのつづき。

「ファ」を音韻表記で、/hwa/とするのはけったいやなと思っているという話。

 

なぜこれがけったいなのかというと、音声実体との対応としても、音素配列論としても、変だと感じているからである。

 

「キャ」は[kja]で/kja/、「クヮ」は[kwa]で/kwa/となっている。

これらは、それぞれ二次的調音が拗音を形成する要素となっている。

 

だから、C1C2Vとしたときに、C2は拗音を形成するための子音としての/j/あるいは/w/が入るということを約束事とした。

 

しかし、/hwa/は[hwa]から来ているわけではない[注1]ので、音声実体との対応が合わない。ここでの/w/は二次的調音ではない。そのうえ、拗音形成でもない。

 

また、「フャ、フュ、フョ」という外来語音も入ってきている。[注2]

となると、「フャ」は/hwja/になってしまう。これは音素配列の前提に反する。

 

拗音形成ではない/w/のあとに、拗音形成の/j/が来るのが変なのである。

仮に「ワャ」という[wja]があるのなら考えはするが、ありえない。

 

さらに、[kwja]という発音があるのなら、それに合わせてということもできるが、これについては未来予測をしても生まれる可能性は限りなくゼロである。

 

最小限の音素記号でという制約はあるけれども、外来語音なんだから、新しい音素を立てた方がしっくりくるというのが私見である。

 

そして、「フャ」が[Φja]で/fja/となるなら、先の音素配列論に反することなく、できるだけ単純な規則でことが成り立つこととなる。

 

音素数なんて、語彙と同じで、新しいものが入ってくれば増やせばいいだけのこと。だから、/hw/なんて止めて/f/でいいのではというのが結論である。

 

 

 

 

[注1]

共通語話者で、[xwa]と発音する人がいるかもしれないが、かなり稀少であろう。東京方言話者で「フ」を[x]で発音する人はいるが、「ファ」は北東北方言よりは両唇摩擦の度合いが弱いけれども[Φ]が多数派と推測している。

 

[注2]

「フュ」は「コンフュージョン」、「フョ」は「フョードル」の例が思いつくのだが、「フャ」は私の脳内ではまだ定着していない音である。ただ、説明の都合上、便宜的にア段でそろえるために、「フャ」で説明をする。