2012年4月2日月曜日

【読書】 BORN TO RUN

クーリエ・ジャポンの記事がきっかけで読んだ本。メキシコ奥地の峡谷を裸足で走り続けるタラウマラ族との出会いを綴るとともに、長距離を走り続けることができる秘訣に迫っている。

でも、具体的な走り方そのものについてはそれほど触れられていない。ウルトラランナーたちの生き様や、ヒトの身体が長距離を走り続けることで生存競争を生き抜くように進化したものであることを説明している。

本書のウルトラランナー達からは名誉欲とか競争心はあまり感じられない。ただ走るのが大好きなのだ。彼らの長距離を走る喜びとは本能に従う喜びだと思う。走る喜びがランナー達を突き動かし続ける、長距離走の一番の秘訣だと感じた。

具体的な走りかたは動画見たほうが早いと思う。本書にあるとおり、姿勢をまっすぐにして視線を高くし、体の真下に着地するようにしている。ストライドを広げて踵から着地する走るとスピードは出るが怪我するリスクが高いとのことだ。



アメリカでは国家的危機の際に長距離走ブームが来たそうだ。過去3度のブームは大恐慌のあと、反戦運動が盛んだった70年代と、911テロの後だったらしい。昨今の日本でのマラソンブームも将来への不安感の表れなのだろうか。


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ピーチ搭乗体験記 千歳~関西空港

噂のLCC、ピーチに初登場してきました。値段は千歳~関西空港でカード支払手数料込みで19,990円。急遽、出発の2時間前くらいにとったチケットなので少し高いのですが、それでもJALやANAの半額位です。サービス内容はニュースに色々出てたので、被らないようにもう少し細かい点を触れたいと思います。

千歳空港の搭乗口は一番端っこでしたが、通常と特に変わるところはなかったです。客層は日曜日の最終便だったこともあって、家族連れや観光の方が多かったです。あと、いつもの大阪便より外国人観光客の割合が高かったです。


シートの狭さがよく言われますが、たしかに狭い。膝のあたりはそれほど窮屈に感じないのですが、膝上の空間が小さくて、ギリギリA3サイズの雑誌を広げて読める位でした。前の席の人が座席を倒すと、雑誌を広げることができないので、仕方なく自分も席を倒しました。ドミノみたいな感じですね。


手荷物スペースはこんな感じです。パッと見てそれほど狭くないと思うのですが、全員分入れるといっぱいになってました。座席が多いのと、機内持ち込み以外の荷物が有料になる場合があるのが理由でしょう。搭乗の順番は窓際の席からなので、通路側で最後の方に乗った方は手荷物を入れるところがなくて右往左往してました。

機内での食事販売はこんな感じでした。乗ったのが最終便だったので、食事は40%引きとかやってました。また、南海線の切符の10%割引とかもやってて、商魂たくましい感じです。

関西空港は国内線から出口や乗り継ぎのアクセスが良いのが好きな所なのですが、到着したのは空港のはずれ。降りてからバスに10分弱くらい乗って、空港を出たバスターミナルの横のあたりで下ろされます。なんば行きのバス乗り場のすぐ横なので、高速バス乗る人には便利かもしれません。

手荷物はこんな感じに道路脇に並べられてました。飛行機の中よりも降りた後の関西空港でのサービスに一番LCCらしさを感じました。雨の日とかはどうなるんでしょうかね??


乗務員の方は皆初々しい感じでしたが、サービス開始から1ヶ月たって慣れてきた感じで、特に不具合はなかったです。客側もいつもより協力的な感じで、乗務員の指示をよく聞いてる感じがしました。出発は定刻で、到着は10分遅れでした(多分離陸・着陸許可待ちみたいでした)。

着陸後に「なんか自分が荷物になった感じ」という感想も聞こえ、合う合わないはあるかもしれません。私は多少窮屈でも苦にならないほうだし、普段機内サービスをそれほど使わないので、コストパフォーマンスが非常に高いと感じました。フライト時間の半分位は寝れましたし。便によって異なるのかもしれないですが、着陸してからの時間がいつもよりもかかるのが一番のデメリットのような気がしました。


2012年3月22日木曜日

【読書】「反原発」の不都合な真実

 藤沢数希氏のブログでの議論が体系的にまとめられた書。コンパクトで私のような素人にもわかるようにまとまっている。特に第六章の「原子力を理解する」というセクションはいわゆる”文系人間”におすすめだ。高校から物理や化学について行けなくなった私のような素人でも、核分裂反応や原子力発電の仕組をざっくりと理解することができた。

本書の特徴は、具体的な比較対象を設定しながら原発の可否を議論しているところだと思う。センセーショナルな事故が起こると、どうしても感情的な善悪二元論になりがちだ。原発によって放射性物質が拡散し、人が死ぬかもしれない。当面原発の近くに立ち入ることができなくなるかもしれない。そのような危険を冒して原発を稼働し続ける必要があるのだろうか?といった議論は正論だと思うが、正論で導かれる結論が置かれた状況での最善とは限らないように思う。

本書では、原発事故が発生して死亡者が発生するリスクを、原発の代替として火力発電を行うことによって大気汚染が進み、死亡者が増加するリスクと比較している。また、このリスクを発電効率と掛け合わせて、必要な量の発電を行う上で最も死亡リスクの低い発電手段が原発であることを説明している。

本書の主張は合理的で納得できるものと思った。だが、コンパクトにまとまっている反面もう少し精緻な分析を読みたいという気にもなった。

原発事故による死者と大気汚染による死者を同質のもの(同じ1人の死亡者)として議論しているが、全く健康な方が大量の放射線を浴びて死に至るケースと、死に至らないまでも何らかの健康上の問題を持っていた方が大気汚染を引き金として死に至るケースは同質といえないように思う。この点、本書の切り口は原発のリスクがやや過小に評価されているように感じた。

一方、死亡リスクの評価においては立地の問題も重要だと思った。大量の放射線を浴びるリスクと大気汚染による健康被害リスクの両方とも、発電所からの距離が遠くなるほどリスクは下がるだろう。原発を止めて火力を動かす今の状況の可否を考える場合、比較的都市部に建設されている火力のほうが死亡数が増える点を考慮すべきだと感じた。

ところで、もともと筆者のブログを読んでいたこともあり、私は「どちらかと言えば原発継続がベター」と考えていた。なので筆者の主張に納得はしたが、私は本書を読んでも「絶対に原発継続すべき!」とまでは思えなかった。

それは今後の技術革新の余地がどの程度あるのかがよくわからなかったからだ。本書では多少触れられていた程度だったが、より安全な原子力発電技術、使用済み核燃料の再利用技術、より発電効率が高い火力発電、より安全な化石燃料の採掘技術、よりコストが低い自然エネルギー発電、蓄電技術などが実現するかどうかで、最善の選択肢は一変するように思う。それが誰にもわからないのならば、初期投資が重く、長期に渡って使用済み核燃料を管理しなければならなくなる原発を強く押せないように感じた。


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2012年3月19日月曜日

公認会計士試験合格者数がさらに削減へ


金融庁より、「合格者数は一層抑制的に運用されることが望ましい」という見解が発表されたとのこと。
会計士試験は2009年から始まった内部統制監査による業務拡大への対応として、2006年くらいから合格者を増加させてきました。ですが実際には、日本での内部統制監査ルールが米国よりも緩いものに誘導されたことや、リーマン・ショックによる企業業績悪化の影響もあって、想定していたよりも業務ボリュームが拡大しませんでした。そのため、業務拡大を見越して大量採用を行なっていた監査法人は余剰人員を抱えることとなり、新規採用を減らさざるを得なくなりました。
その結果、せっかく苦労して会計士試験をパスしたけれども仕事がない人が発生することになりました(「待機合格者」という待機児童みたいな言葉が生まれました)。会計士業界としては監査法人以外への就職の道を開くべく財務会計士という新たな資格をつくろうとしましたが、自民党の反対によって上手く行きませんでした。これらの背景を受けて、会計士試験の合格者数を減らすということになっているようです。
私は、こうした動きによって会計士業界が却って不健全な方向へ進むのではないかと思います。
そもそも、会計士試験というのは一定の品質を担保するために設けられた資格制度に基づく試験です。当たり前ですが、会計専門家として働くことができる水準にあるかどうかを適切に判定する試験であるべきです。合格者数はあくまで結果で、結果が先に決まることはナンセンスだと思います。受験者のレベルが非常に高い年には合格者が増え、そうでない年は合格者が減る。そういった状況になっているからこそ、資格制度が品質を担保できます。安易に会計士業界の労働需給をみて合格者数を決めることは、会計士制度そのものの信頼性を損なわせるのではないでしょうか?
また、合格者数削減による労働需給ギャップの解消は、待機合格者の問題をこれから会計士試験を志す方に負担してもらうことになります。このような状況に至ったのは会計士業界を取り巻く環境変化の影響が主要因ではありますが、業界の自助努力の欠如が全くないとは言えません。最近になって、大手監査法人はリストラの一環として一般事業会社への出向を始めました。ですが、会計士が社会に如何に貢献するかということを考えるならば、財務会計士をプッシュするより先にこうした動きがあって然るべきだったように感じます。
さらに、会計士業界全体のパフォーマンスを上げる上で、既存の会計士の雇用を守って待機合格者の発生を許容することが最善とは思いません。確かに、会計監査の仕事は経験やセンスが要求されますが、大前提として会計や税務の知識は不可欠です。経営環境が激変するなか、過去の経験の価値は徐々に下落しています。英語も読めず、IFRSについてこれない大御所よりも、最新の会計知識を一生懸命勉強してきた方々のほうが活躍できる領域は多いでしょう。
私は、合格者数を減らすよりも、会計士試験を免許更新制にするなり、あるいは思い切って定年制にするなりする方が、この業界がより良い方向にいくのではないかと思います。監査法人で経験を積んだ方が積極的に新たな領域に挑戦していく流れを促進させると思うからです。
私は前職にいたころ、TACの簿記1級講座で初めて会計士の授業を受けました。そのころ、会計士が何だかすごく優秀そうな人に感じ、こんな人がいる世界で働きたいと思ったものです。こうした思いを今持っている方々が、これから会計士にチャレンジできるような業界であって欲しいなあと思います。

大阪モーターショー


10年ほど前に東京でモーターショーを見て以来、久々に行くことにしました。土曜日の天気がよくなかったせいか、思っていたより多くの人で賑わってました。
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東京は海外カーメーカーが出展していたようですが、大阪は国内勢が中心。自衛隊が出展していたのが珍しかったです。
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国内勢で一番力が入っていたのはホンダ。演出にも力を入れていました。
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逆の意味で目を引いたのはユーポス。カーメーカー各社と比べてここだけノリが違う感じ。。
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東京、名古屋のモーターショーに行っていないんでわかりませんが、海外カーメーカーの出展が少ないのは寂しかったですね。昨今の円高を受けて、外国車の需要はもっと増えると思うんですけどねえ。。

2011年11月14日月曜日

オリンパスの決算訂正

オリンパスの過年度損失計上先送り問題は、上場廃止可否に議論が移ってきている。具体的なスキームやその影響額がハッキリとしない限り、東証が結論を出すことは当面ないだろう。ただ上場廃止に至るストーリーとして、東証が重要な虚偽記載の発生を原因とした上場廃止決定を行う可能性の他に、12月14日までに過去5期の決算訂正が終わらない恐れもあるのではないだろうか?以下、あくまで推測に過ぎないが過年度決算訂正の監査について考えてみる。

オリンパス、決算5年分を訂正 自己資本減少へ 


第三者委員会が過去の損失先送りスキームを解明したとしても、それらが全て監査に耐えうる証拠によって裏付けられるとは限らない可能性がある。関与者からの口頭説明によってしか裏付けが得られない部分について、如何に監査証拠を得るかという問題が起こりえるのではないだろうか?

また、第三者委員会による調査によって判明した事実の他に財務諸表の誤りがないことをどのように確かめるかというのも非常に大きな問題だ。報じられている通り過年度の投資損失隠しが行われているとするならば、投資関連の勘定科目に対する監査をもう一度やり直す必要があるであろう。2011年3月期のオリンパスの投資有価証券残高は単体が525億円で、連結が593億円となっている。子会社を含めて過去5期分の監査をやり直すとなると、かなりの時間を要すると考えるほうが自然だ。

さらに一番難しいケースと思われるのは、過年度の財務諸表監査において行われていたであろう内部統制へ依拠した監査アプローチのやりなおしを余儀なくされる場合だ。内部統制監査制度が採用された2009年3月期~2011年3月期において、オリンパスグループでは内部統制が有効との内部統制報告書に対して外部監査人による適正意見が表明されている。内部統制監査は元々財務諸表監査との一体監査を前提としており、同一の監査人がセットで検討することによって効率的に監査を実施する制度とされている。そのことから、過年度の財務諸表監査において内部統制に依拠した効率的な監査アプローチが行われていた可能性が高いと思われる。具体的に、通常は内部統制が有効に機能していることを前提に、サンプルテストの件数を減らす場合が多い。

ここで、報じられる通り経営者の直接的な関与による虚偽記載が行われていたとすると、その影響は投資有価証券、預金、のれんといった直接的に損失隠しを行った(可能性のある)勘定科目に限定されない。経営者自らが内部統制を無視するようなケースであったとすれば、特定の勘定科目に関連する内部統制だけではなく、全社的な内部統制が無効なものとして監査を行うのが通常だからだ。通常はこのケースとなればコストが合わずにそもそも監査を受注しないケースが多いが、仮に監査をやるとしても内部統制に依拠しないアプローチで全面的にやり直す可能性が考えられるのではないだろうか?

私は全く実際の監査の状況を知る立場にないが、この決算訂正監査で短期間で超えなければならないハードルは非常に高いと思われる。日本の証券市場への信頼回復の一歩として何とか乗り切って頂くことを願うのみだ。。






2011年11月11日金曜日

オリンパスの投資有価証券 その2

オリンパスの第三者委員会の調査結果が徐々に明らかになってきた。

オリンパス、預金水増しで損失隠す 1300億円資産計上 

1990年代の投資損失を外国銀行預金等に付け替えたとあり、含み損が含まれる預金残高は300億円~600億円とのことだ。

2009年3月期の有価証券報告書の単体貸借対照表上の現金及び預金は178億円計上されており、この記事にある外国預金等の残高を下回っている。なので、この外国銀行預金等は他の勘定科目で整理されていたのかもしれないし、子会社で計上されていたのかもしれない。

正直な所、預金の監査で失敗するなんてありえない気もするが、その辺りは今後の調査を待つしかない。通常、預金の会計監査では少なくとも銀行への残高確認手続が行われる。残高確認は監査人が直接銀行に確認を行う手続なので、含み損を見抜けなかったということが事実であれば、残高証明書の偽造も絡んでいた可能性もあるだろう。少数のアドバイザーだけではなく、複数の協力者も関与した大掛かりなものであった可能性もあるだろう。
仮に子会社にて含み損を抱えた資産が計上されていたとすると、問題は複雑となる可能性が高い。通常、連結財務諸表の監査を行うにあたって、海外子会社の監査は現地の監査人に指示してその結果に依拠する。子会社の監査をどのように行なっていたかや、そのフォローを日本の監査人がどのようにおこなっていたかも議論になるであろう。

今回の事件をきっかけにして、監査実務は大きな影響を受けるに違いない。会計監査の世界というのは密室芸に近いところがあり、具体的にどのようなことをやっているかが外から見えにくい。なので、社会的信頼や評判を毀損するような事件がおこったときは、制度の変更や新たな監査ルールの導入など、制度面でのテコ入れで改善したことをアピールすることになる。

本当は監査手法を画一的にするのではなく、ケースバイケースの対応がベストなのだが。。