広島県の裏見の滝・駒ヶ滝(北広島町) | 次世代に遺したい自然や史跡

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毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

<滝の裏側の岩屋には弘法大師作の石仏>
広島県には裏見の滝が少なく、今回紹介する北広島町の龍頭山(928.3m)中腹にある駒ヶ滝も、ダブルクォーテーションを付けて”裏見の滝”と打ってネット検索してもヒットしない。ダブルクォーテーションを付けずに検索するとヒットするかも知れないが、当方は別の文言で検索した。

そんな観光ガイドブックにも載らない滝だが、落差は36mあり、滝の裏側の岩屋には、弘法大師がここで修行時に彫ったとされる石仏が安置されており、昔は滝の行場だった。
藩政期に描かれた絵図を見ると、飛瀑が懸かる岩盤いっぱいに滝が簾のように広がっており、壮観だった模様。現在でも、雨後や長雨時に訪れると豪快に飛沫を上げる。ただ、その際は折畳傘でも持参しないと、滝の裏側に回ろうとすれば、ずぶ濡れになる。

 

 


この滝の最短探訪コースは、一般には「瀧ヶ馬場」駐車場から下って往復するものと思われているが、それでは帰路がしんどい。本当の最短コースは、「龍頭観音四丁」石仏がある龍頭山登山口から登るもので、所要時間は瀧ヶ馬場コースとあまり変わらないが、急登はない。これなら十数分で行ける。

但し、路面が悪い駐車場には2~3台ほどしか駐車できない。尤も、車両通行不可になっている奥の道路に駐車することもできる。小さなトイレはある。
登山口の標高は500m弱、滝の標高は約600m。公式サイトよりも詳しいコースマップは、千代田IC側にある道の駅に事務所がある観光協会で貰うことができる。但し、職員は「龍頭観音四丁」石仏すら知らないので、訊くだけ無駄。

龍頭観音四丁石仏は、正しくは四丁目の丁石地蔵なのだが、この「丁」は、駒ヶ滝までの残りの距離を示すもの。0丁が岩屋の観音になることから、地蔵でありながら、「観音」と呼称されているのだろう。

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龍頭山山頂へと続く登山道との分岐を奥に行った所の石垣の更に奥に滝が懸かっている。石垣の上は広場になっていることから、昔は滝行のための籠り堂的な建物があったことが推測される。

右手上にある木造の祠は駒ヶ滝神社。この裏の岩盤に昭和62年、ネパールの画家が観音像の壁画を描いたらしいが、面影は皆無。神社の奥には「目洗瀧」という、岩場から染み出す水があるが、平常は涸れている。眼病に効く水かも知れない。

添付写真の滝の下部に写る岩屋は、小動物が入る位の小さな洞穴のように見えるかも知れないが、実際は少し背をかがむだけで入ることができる。水量が少ないため、豪快さはないが、岩屋から臨む滝は趣がある。

岩屋に安置されている石仏は座像であり、観音には見えない。当方には弘法大師像に見えるのだが、大師が自分の像を彫ることはないように思う。左手前にあるマトリョーシカのような石に線彫りした石仏の方がどちらかと言うと観音っぽく見える。

この滝の上流にも道が整備されていない滝があるようだが、時間がなかったため、探訪していない。時間がある方は、龍頭山山頂に登り、360度のパノラマを楽しまれたい。

各滝と山頂からの景色を楽しみたい、という方は下のバナーを是非。