世界で一ヶ所しか咲かない花と龍の形の山 | 次世代に遺したい自然や史跡

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毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

<竜頭山から石立山の大回遊>

「四国一きつい山」として知られる高知県香美市と徳島県那賀町界にある峨々たる岩山・石立山(1707.7m)[厳密には石立西峰(1704m)]には6月中旬から7月中旬、地球上でここにしか咲かない花、イシダテクサタチバナの群落が現れる。標高1500m台後半から1620m前後にかけての目を見張る大群落である。

 

一般的なクサタチバナと比べると花弁は小さく、葉幅も狭いが、視界一杯に広がる白い星のような花の群生は圧巻。

自然林も豊富でビャクシンやダケカンバ、モミ等も見られる。

 

一方、石立山の西方に位置する竜頭山(1264.4m)は地形図の等高線を見ても分かるように、その形が龍の頭部に酷似している。三角点のある山頂部(下の写真の奥)は鼻の部分にあたる。

但し、2004年夏の台風で登山口に架かっていた吊橋が流失して以降、別府峡沿いの案内板に記されている登山コースは廃れ、何割かは廃道化してしまった。

 

それでも植林が多いこともあり、廃道ルートを登ることはできるため、登山靴を脱いで吊橋跡下の別府峡を渡渉して対岸に渡り、登るピークハンターもいる。

 

しかし足を濡らして渡渉するのは煩わしいため、渡渉しないルートを紹介したい。そのルートの登山口になるのは、以前解説した大栃林用軌道廃線跡入口に架かる吊橋(上の地図)である。この吊橋は前述の吊橋とは違い、川面よりかなり高い所に架かっているため、どれだけ増水しても流されることはない。但し、現在、入口に関係者以外立入禁止の看板が設置されているため、管轄の森林管理署に確認する必要がある。

 

その吊橋の場所は何年も前から通行止めになっている別府峡沿い道路の側。香美市のホームページにもこの通行止め箇所は図示されている。更に現在、石立山登山口の吊橋にも立入禁止バーが設置されている。しかしこれは無視して良い。香美市のホームページでは石立山登山道の崩落写真が掲載されているが、現在、そこのザレ場は、土砂崩れ地のすぐ上に踏み跡が付けられているため、危険箇所はない。

 

この二山を回遊する場合、竜頭山から登った方がよい。それは石立山のコースは超急登の岩尾根であるため。竜頭山も急登箇所はあるものの、石立山のような長い距離ではない。

そのコースはまず、以前紹介した最初に現れる廃線跡隧道からその上の尾根に這い上がる。後はひたすら尾根を北東から南東へと上がっていけば、龍の目の部分にあたるピークに出る。そこからすぐ南西に行った所が竜頭山頂(上の写真)。展望はないものの、木漏れ日がさして明るい。

 

竜頭山からも尾根をそのまま上がっていく。その内、二つの尾根が並行する二重山稜になるが、間の谷部が登り易い。しばらく登ればまた尾根は一つになる。ヤブは殆どない。これは’00年代初頭、剣山系のスズタケ等笹類が一斉に枯れたため。

 

県境の縦走路に出て以降は所々岩尾根もあるが、石立西峰の崖の岩場に到るまでは造作ない。その岩場はルートがやや分かり辛いが、西端の岩の割れ目(上の写真の左側の崖手前だったように思う)からロープが垂れ下がっている。そこは鹿除けネット沿い。しかしロープの最下部はザレ場の急傾斜のため、やや上部からその割れ目部分に取付き、ロープに頼らない方が良い。ロープに頼っていて、もし足を滑らせ、自重に耐え切れず転落すると死亡する可能性が大。

 

石立西峰の下にある崖「捨身嶽」(上の写真)からは大展望が広がっていることが分かるが、膝が笑っていたため、パスした。

西峰から石立山までの尾根はまるで芝生のような草原。白骨樹の大木もある。

石立山頂もスズタケや深い笹が枯死して以降、大草原のようになり、パノラマが広がっている。しかしこの登山日は午後、雲が多くなった。

 

復路の石立山のコースは、イシダテクサタチバナ群落までは普通の登山道で危険箇所はない。群落は登山道沿いにあるため、写真も撮り易い。

コースの方は下るに従い、「本当にこんな所を下れるのか」と思う位の超急勾配痩せ岩尾根になる。絶対往路には利用したくないが、殆どの登山者が往復路共、このコースを利用している。

標高860m地点の竜頭谷を渡れば、植林帯に入るから岩場はなくなる。

 

因みにこの日、8時に吊橋を出発して二山を回遊し、車に戻ってくると19時半になっていた。体調のせいもあるが、一般的な登山上級者の倍以上、時間を要しているのではないかと思う。最早登山するには不向きな体型になってきているのかも知れない。

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