AsadaYuukiRinrin  恐ろしい形相で笑う2人2組
 「♪ 山田ぁのなーぁかのいっぽん足のかかしぃ」
 唱歌「かかし」である。

 学校で歌わされた記憶はない。
 でもなんとなく知っているということは「みんなのうた」とかで放送されたことがあるんだろうか?でも、放送するには短すぎるよなぁ。

 ご存じのようにかかしは畑や田んぼに鳥が来るのを防ぐため、本物の人間がそこにいるように鳥をだます人形である

 農作業で人がいるときには鳥が来ない。その衝撃の事実を応用したのである(本州ではイノシシなどの害獣対策にもなるようだが、北海道ではもっぱら鳥防止のイメージが強い)。
 顔が描かれていないものもあれば、へのへのもへじを書いたものもある。

 ということは、鳥にとってみれば人の、そしてかかしの表情なんて関係ない(識別できない)んじゃないかと思うのだが、これはすごい!

 人形は顔が命!かかしは顔で勝負!ってものだ。

20190709NP_Ad


 “カラスもビックリ”って書いているが(カラスは賢いから人の顔色をうかがえるのかもしれない)、私もビックリ。いや、これに突然であった日にゃ、驚きのあまり心臓麻痺を起こしてしまいそうだ。

  よっ!大統領!
 ところで、“鳥追いばあさん”って名前はそのままでよく理解できるし、このネーミング嫌いじゃない。
 が、なぜ大統領なんだろう?
 しかもこの大統領、風が吹けば桶屋が儲かるどころか、目玉がボヨヨ~ン!なのだ。

 ただ、鳥は目玉ものが苦手なようなので、本当にボヨヨ~ン!となるなら、それは効果抜群かもしれない(裏返っていなければ)。

 でも、果樹を見上げたら上にこんなのがいたら、おんな子どもは絶叫し、泣き叫び、夜泣きするだろう。
 私はちびってしまうだろう。

 バルトーク(Bartok,Bela 1881-1945 ハンガリー)のバレエ音楽「かかし王子(A fabol faragott kiralyfi/Der holzgeschnitzte Prinz/The Wooden Prince)」Op.13,Sz.60(1914-16)。

 ここにも書いたように、むかし(私がクラシックを聴きはじめた1970年代)は「かかし王子」と呼ばれていて、若かりし私は「ヘンな曲名」なんて思ったものだが、いつのまにか「木製の王子」という表記が主流を占めるようになった。

 かかしという言葉が放送禁止用語になっているってわけじゃ(たぶん)ないだろうし、どうしてそうなったのか私にはわからない。


 木製の王子ってなるととっても堅苦しい日本語でしっくりこない。かかしという語句になじみがあるわけじゃないが、「かかし王子」の方が、曲名としては語呂が良い(ただ、かかし=一本足で、差別用語だと唱える人はいるらしい。そういう発想の方がどうかと思うけど)。

BartokWooden ブーレーズ/シカゴ交響楽団の演奏で。

 1992年録音。グラモフォン。

  こちらは恐ろしい体型の大統領
大統領といえば、浅田次郎のエッセイ集「勇気凛凛ルリの色」(講談社文庫。収められてる各話の初出は1994年~95年にかけての週刊文春)のなかの『NGについて』という話は(も、と書くべきか?)笑える!


 浅田次郎氏が自衛隊員だったときのこと。国賓待遇の某国大統領が来日のかたわら自衛隊を視察することになり、浅田氏は臨時に編成された儀仗隊(ぎじょうたい)のメンバーに選ばれた。
 当日の朝になって“名前も聞いたことのない、太平洋上だかアフリカだかのどこにあるかもわからない国の大統領閣下とともに、旧帝国軍人でもあられた宮さまがお出ましになる”ことを知らされ、本番を前に隊員たちはひどい緊張に襲われていた。

 ……
 そしてついに、赤い絨毯を敷きつめた車寄せに、某国大統領とモーニング姿の宮様がお出ましになった。きら星の如きそうそうたる将官たちが後に(したが)っていた。
 一瞥したとたん、(まずい……)と感じた。
 日ざしの中に現れた国賓の大統領閣下は、どう見ても体重二百キロ超、まさにこの世のものとは思われぬ異形の怪人だったのである。しかも純白のおそろしく派手な軍服に、満艦飾の勲章をつけ、顔は常人の三倍は優にあった。
 今ならば私たちは「小錦」という同種の人類の存在を知っている。しかし当時、小錦はまだハワイの少年であった。
 -(中略)-
 絶対に笑ってはならなかった。
 直立不動の隊員たちは、みな低い切ない声で、「うーうー」と(うめ)いていた。誰かが噴けば一巻の終りであった。私は奥歯を噛みしめながら心ひそかに、今この瞬間核戦争が起って、世界が破滅してしまえば良いとさえ思った。
 -(中略)-
 その時、あたりの異常な気配に気付いた列中の古参隊員が、低い、どうしようもない切迫した声で呟いた。
 「……笑うな……笑うなよ……」
 これですべてが終わった。世界の破滅であった。
 -(後略)-


 この話、何度読んでも笑いをこらえるのが、涙目を防ぐのが、たいへんになる。
 個人的“世界が破滅”が起こるリスクが高すぎて、公共交通機関のなかではとても読めない。