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2024-03

もし大門未知子がドラッカーの『マネジメント』を読んだら (じいさん学 第2講)


☆ タイトルは前回話したパロディの一例であるが,このタイトルには幾つかの要素と前提がある。
① 必読書 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』 (岩崎夏海 2009年12月4日)
② 必見 「ドクターX~外科医・大門未知子」の本編もしくは派生作品、あるいは本作について書かれた複数の報道・評価記事
③ ①において解説されるP.ドラッカー『マネジメント』要点の理解
④ ②の作品としての特徴(もしくはそれに対する評価・批判内容)

☆ タイトルを解く鍵は「このドラマの視聴者は何を望んでいるか」。キーワードは「予定調和」と「勝利の方程式」。裏鍵は「なぜ俳優は定番化したシリーズ作品に出演することを躊躇(ため)うのか」。はてさて。



☆ マンネリブランドという言葉を初めて聞いたのはバブル崩壊の頃だったかもしれない。当時のマンネリブランドの代表が,今や大西洋を股にかけた大規模買収合戦(M&A)の当事者であるルイ・ヴィトン(モエ・ヘネシー)とティファニーであることがジジイ的感慨を覚えさせるところはあるが(苦笑)。マンネリブランドには,この他に「ラー系」(シャネラーが代表選手)もあった。

☆ ブランドはWikipediaによれば「ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念」だという。その線で言えば「マンネリブランド」は誰もが持つ(マンネリ化)状態になっても「他の同カテゴリーの財やサービスと区別する」ことが可能な概念(を持つ商品)と言い換えられる。このことを格好良く言えば「ロイヤルカスタマー」を持つ商品となるだろう。

☆ 大門未知子が(読むとも思えないが)ドラッカーを読めば自分の顧客が「状況」であることを意識するだろう。それは「失敗が許されない極限」であり「余人を以て代え難い」状況である。これって「この人が出てこないと話が解決に至らない」状況と読み替えられるだろう。そして予定通り「その人」が「決め台詞(例:「私,失敗しないので」)」などと共に登場し,その状況を解決する。そいういうのを「予定調和」などと称しているが,「そういう展開を見ること」で一種の「カタルシス」を得るところに,こういう作品(小説から舞台・映画・テレビドラマ等に至るまで)の「マンネリブランド」性が存在するのだ。

☆ 「予定調和」の話はライプニッツの「モナド論」に載っているとある人のブログに書いてあったので,Wikipediaで見るとこう書いてある。

> ライプニッツは、現実に存在するものの構成要素を分析していくと、それ以上分割できない、延長を (ひろがりも形も) 持たない実体に到達すると考えた。これがモナドである。(略)モナドは部分を持たない厳密に単純な実体であるから、複合的なもの同士が関係するような意味で「関係」することはできない(略)厳密に相互に独立している。
> (略)モナドの自然的変化は内的な原理から生ずる。ちょうど、あらかじめ時刻を合わせた二つの時計のような意味での、神の創造の時点で予定・調整された「調和」である。(後略)

☆ 「神の創造の時点」まで遡ることはないが(笑),少なくとも「おはなし」が書かれ(書き終わっ)た時点では,結末が見えている。言い換えるとドラマが始まり,主人公がその話に絡んできて,その回のテーマに主人公が直面すれば,必ずその問題に対する解(ソリューション)が与えられるという意味で「予定調和」という意味に同一性らしきものを与えることができる。



☆ こういう話を好む人たちがいる。年輩の人に多いが「見ていて安心できる」とほぼ口を揃えて言う。それが若い人などから見れば「退屈で鬱陶しい」ということになったとしても,昔のようにテレビが一家に一台という訳でもなく,ましてやスマートホンやゲームなど画面を楽しむ娯楽は彼らが生まれ,育つ頃には既に溢れるように存在した。「チャンネル権」の争奪の必要はなくなり,それぞれが見たいものを心置きなく見る(時間差視聴のための録画機器も揃った)。そうすればスポンサーの資金に依存する民間放送は何を重視するか?言うまでもなく「ロイヤルカスタマー」だ。結果として「マンネリブランド」を画面に確立することができれば,民間放送局にとっては「勝利の方程式」が成立したことになり,「一度当たった番組」が「なかなかやめられない」という状況が始まる。

☆ 保守的という言葉には複数の意味がある。ぼくが若い頃からこういう言い方(貶し方)があった。

「あの人も年齢(とし)を取って "守りに入る" ようになったな」

☆ 別にじいさんになって突然早朝野球に目覚めた訳ではなく,保守的になったとか,もっと辛らつに「自分の地位を守るようになった」なんて意味で使われている。「守るべきものがない」というのは昔のロックの歌詩には溢れていた。当然その裏側には「だから何なんだ」という年長者への潜在的な挑戦意識が備わっている。ところが「30(40)過ぎは信じるな」で10代,20代を駆け抜けた過去はどこへやら,という50代~70代が如何ほど居ることか!それは生命体の宿命である。不老長寿なんて周囲に迷惑をかけることを望みはじめ(爆),抗加齢(アンチエイジング)だのピンピンコロリだのに血道をあげ「健康のためなら死んでもいい」と思うようになれば立派なホシュピタリアンである。そういう人々が目指すものは(マーケットは?)A:予定調和!

☆ ところで,この話には重要な要素が抜けている。それは「そういう人々が見ているテレビの画面に登場する俳優達も,視聴者と同じだけ年齢を取る」という当たり前の事実である。自分のキャリアが一つの代表作に「閉じ込められる恐怖」はたぶん渥美清さんも感じていただろう。この恐怖は俳優にしかわからない。「多くの人が望んでいます」は彼ら彼女らに最初は勲章のように近づき,気がつけば身体をグルグル巻きにしている。米倉涼子が何だかんだ言われながらブロードウエイへの出演を続けようと目指すのは「自分のために踊り(by氷室京介)」たいからで,同時にそれは「操る糸」を引きちぎりたいからだ。

☆ ザッツ・オール。シー・ユウ!


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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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