更新日:2021/5/9
この記事では、2021年5月1日に開催されたウォーレン・バフェット率いるバークシャーハサウェイの年次株主総会の内容を紹介していきます。
なお、株主総会はカリフォルニア州ロサンゼルスより中継で行われ、バフェットとチャーリー・マンガー副会長の二人で、株主からの質問に答えるスタイルとなりました。
『バークシャーの株主総会』ということで、バークシャーの業績などについても語られますが、『バフェットが今後のアメリカ、世界経済をどのように見ているのか?』
についての発言についても注目が集まるイベントです。
世界一の投資家であるウォーレン・バフェット、その右腕であるチャーリー・マンガーが『いま、何を考えているのか』を株主総会のコメントを通じて理解して頂ければと思います。
<目次>
アメリカは予想以上に経済の回復が早い
バフェットは、アメリカ政府・FRBによる経済緩和策が成功し、予想以上に早い回復をしていると見ています。
それによって、バークシャーハサウェイ傘下の事業(ガイコ@保険など)も立ち直りに成功しています。
バフェットは「アメリカ企業の株は、投資先としても貯蓄先としてもすばらしい」と言い、アメリカ経済への自信を述べました。
また、現状を「アメリカ経済の85%は、かなり高いギアで走っている」と表現し、「購買ブーム」「Red hot」という言葉を使って、過熱感があることも指摘しています。
実際に、
S&P500種株価指数の予想PER(株価収益率)は約22倍で、過去10年平均(16倍)を大きく上回る。
という、『割高』な状況にあります。
しかし、それでも「今の低金利の環境において、ハイテク銘柄は割安だ」とも言っています。
低金利が続けばハイテク銘柄は割安
バフェットは、「ハイテク銘柄のように成長率の高い企業は、低金利環境にあれば価値を高く見積もることが可能であるため、割高に見えるハイテク銘柄でも買うことができる」としています。
とはいえ、バフェットは、去年アップル株を一部売却したわけですが、それについても
「アップルは人々にとって必要な会社だ」
「アップルのティム・クックCEOは素晴らしい」
など、アップルには今後も期待できることを強調し、
「おそらくアップル株の売却は間違いだった」
との発言もしています。
最近のハイテク銘柄に対しては、いたるところから(本ブログでからも)「割高だ!」という言葉が飛んでくるので、
このバフェットの発言は、ハイテク銘柄へ投資している投資家にとって勇気のでる内容と言えるでしょう。
とはいえ、市場に対してまったく楽観視しているわけではなく、懸念があることも語っています。
SPACに対する批判
株主総会では、バフェット、マンガーの両人とも、2020年以降アメリカで乱立したSPACについて批判しました。
SPACとはSpecial Purpose Acquisition Company(特別買収目的会社)の略で、その名の通り他社との合併を目的とした会社です。
SPACは、上場時に投資家から資金を集め、それを使って企業の買収を目指すわけですが、
- 通常、2年以内に買収を達成できなければSPACは解散する
- 買収を成功させることで、SPACの設立者は多額の報酬が手に入る
という仕組みとなっていることから、設立者は「2年以内に買収を整理させねば!」と考えることとなり、
- 企業買収の競争が激化し、買収するための価格が吊り上がる
という問題が発生しています。
バークシャーハサウェイも、(手元にある1400億ドルを使って)買収先企業を探していることもあり、
- バフェットは、SPACを「厄介者」と表現
- マンガーは、「品格を失っている」と批判
しています。
また、ゲームストップ株で注目を浴びたロビンフッターと呼ばれる個人投資家を集めているロビンフッド・マーケッツに対しても「ギャンブルを誘発している」と批判しました。
ギャンブルのような市場に
ロビンフッド・マーケッツは、取引手数料の無料化によって近年急激に個人投資家を集めているスマホ証券で、
そこを利用する個人投資家は、大手掲示板サービスのRedditなどで市場に関する情報を集め、時には結託して取引をするケースが多いです。
その取引の代表的な事例がゲームストップ株の売買で、ヘッジファンド(プロ投資家)の空売りに対抗し、個人投資家が結託してゲームストップ株を大量に購入することで、ヘッジファンドに大きな損害を与えました。
これは、「ゲームストップには、将来性があるから買いだ」と判断したわけではなく、
「大量の空売りが仕掛けられているから、株価を上げれば儲かりそうだ(空売りしている投資家が買い戻すことで、株価がさらに上昇する)」
との思惑で行われた行為で、まさに『ギャンブル』と言えそうです。
この状況に対してバフェットは、
「世界中の人々がギャンブルを強く望んでいる。カジノにやって来る人が、出ていく人よりも多いような状況が毎日続いている」
「しばらくはこの動きが現実を動かすだろうが、時計が12時を指して、すべてがカボチャとネズミ戻ってしまうタイミングは誰にも分からない」
と表現し、警告しています。
また、仮想通貨に対しても、今までと変わらず否定的な意見を述べています。
仮想通貨には否定的
マンガーは、
私をよく知っている人は、ブルの赤旗を振っていることだろう。
もちろん私はビットコインの成功を憎んでいる。
誘拐犯やゆすり屋等々にとって便利な通貨の出現を歓迎しない。
また、何もないところから新たな金融商品を生み出した者に莫大なお金を与えるのも好まない。
控えめにいっても、これらの展開すべてが不快で、文明とすべての人生の利益に反すると言わざるをえない。
出典:ビットコインは不快、文明・人類に有害:チャーリー・マンガー
と、仮想通貨に対して否定的なコメントを出しています。
『何もないところから新たな金融商品を生み出した』というところがキモで、受け取り方によっては「仮想通貨は本質的な価値のない金融商品だ」と言っているように聞こえます。
バフェットも仮想通貨には否定的で、過去には
「ビットコインは殺虫剤だ」
「ギャンブルのような仕掛けだ」
「何も生み出していない」
といった発言をしています。
バフェットは『自分の理解できないものには投資しない』というスタイルであることは有名なので、ビットコインに投資している投資家の中には
「バフェットはビットコインの価値、その根幹をなすブロックチェーンの有用性が理解できなから否定しているだけだろう」
と楽観的に考えている人もいるでしょう。
しかし、バフェットは
「ブロックチェーン技術には価値がある」
と認める発言をしたうえで
「仮想通貨には価値がない」
としていることは理解しておきましょう。
参考記事:私が仮想通貨に手を出さない理由
法人増税について
また、バイデン政権によって計画されている増税に関して、
- 富裕層を対象としたキャピタルゲイン増税について、バフェットは「政治的発言はひかえる」
- 法人税の増税について、マンガーは「この世の終わりではない」
と発言しています。
参考記事:【キャピタルゲイン増税も】バイデン政権が30年ぶりの本格増税を計画
解釈が難しいところですが、今のところ増税に対してはそれほど懸念しているわけではなさそうです。
さて、こんな状況にあるわけですが、株主総会の中で個人投資家に対するアドバイスもしています。
個人投資家がやるべきこと
バークシャーの株主から、
「バークシャーに投資するべきか、インデックス投資するべきか、どうすれば良いのか」
といった質問が上がった際に、マンガーは
「個人的には、バークシャーに投資するべきだと考えている」
「これは、私たち(バフェット&マンガー)が死んだ後でも変わらない」
との回答をしています。
ただ、バフェットは、
「バークシャーが有利だとは思うが、普通の人が個別銘柄をうまく選べるとは思えない」と発言し、以前より変わらず
「ほとんどの個人投資家は、インデックス投資をするべきだ」
という回答をしています。
今までバークシャーを引っ張ってきたバフェットは90歳、マンガーは97歳となり、最近では後継者問題が話題となることが多くなってきました。
後継者はグレッグ・アベル副会長になることが決定しており、
両人とも「引き継いだ後もバークシャーは大丈夫だと考えている」わけですが、それでもバフェットはインデックス投資を勧めています。
まとめ
といった感じで、2021年のバークシャーの株主総会でのバフェット、マンガーの発言を紹介させてもらいました。
まとめると、
- アメリカ経済は順調に回復しているが、今後どうなるかは金利しだい
- SPACによって割高な銘柄が増えている
- ロビンフッターや仮想通貨によってギャンブルを好む投資家が増えている
- 個人投資家は、インデックス投資をするべし
といった内容でした。
バフェット、マンガーの発言が常に正しいわけではありませんが、名実ともに世界一の投資家である人物の言葉を無視するべきではありません。
ここで紹介させてもらった内容をしっかりと理解し、自分の投資に活かしましょう。
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出典
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