為替週間見通し:ドルは底堅い値動きか、利上げ継続の思惑強まる

【今週の概況】
■ドル・円は堅調推移、米6月利上げの可能性高まる

今週のドル・円は堅調推移。6月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で追加利上げが決定されるとの見方が広がったこと、米債務上限の引き上げを巡るバイデン政権と議会(共和党側)の協議で進展がみられたことから、リスク選好的なドル買い・円売りが活発となった。債務上限の引き上げを巡る協議難航を懸念してドル・円は週初に137円台半ばまで下落したが、バイデン米大統領とマッカーシー下院議長は期限までの交渉妥結に自信を示したことで、リスク回避のドル売り・円買いは縮小。5月23日発表の5月S&Pグローバルサービス業PMIが改善したことや25日発表の1-3月期国内総生産(GDP)改定値が上方修正されたこともドル買い材料となった。

26日のニューヨーク外為市場でドル・円は139円65銭から140円73銭まで買われた。この日発表された4月米コアPCE価格指数の伸びが市場予想を上回り、追加利上げの確率が上昇したことを意識してドル買い・円売りが活発となった。メスター米クリーブランド連銀総裁が「もう少し利上げが必要になる」との考えを示したこともドル買いを支援した。
ドル・円は140円63銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:137円50銭-140円73銭。

【来週の見通し】
■ドルは底堅い値動きか、利上げ継続の思惑強まる

来週のドル・円は底堅い値動きか。米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げの是非については今後の経済指標次第とみられ、リスク選好的なドル買い・円売りはある程度抑制される可能性がある。ただ、インフレ圧力が短期間で弱まることは期待できないとの見方が多く、金融政策をにらみドル売り・円買いがただちに拡大する可能性は低いとみられる。

5月2-3日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によると、物価目標を上回る高インフレが続いており、今後も引き締め政策を緩めないとの意見で一致していた。今後の経済指標の内容次第だが、6月の利上げ休止観測は一段と後退した。来週発表される経済指標では、5月ISM製造業景況感指数や5月雇用統計の平均時間給に対する関心が高いようだ。賃金上昇圧力は弱まっていないため、平均時間給の伸びが市場予想を上回った場合、金利高・ドル高に振れやすい展開が見込まれる。

債務上限問題についてはバイデン政権と野党・共和党との協議はある程度進展したが、いくつかの問題は解決されていないため、6月初旬頃の債務不履行(デフォルト)が警戒される。債務問題の不透明感によりドル売りが強まる可能性は残されているが、最終的に双方が合意に達し、債務上限の引き上げが実現された場合はドルの買戻しが見込まれる。

なお、日本銀行の植田和男総裁は4月の就任以来、国会などで緩和政策を当面継続するとの方針を繰り返し説明している。そのため日米金利差が意識され、一時的に利食い売りが増えることはあるものの、ドルは下げづらい状態が続くとみられる。

【米・5月消費者信頼感指数】(5月30日発表予定)
5月30日発表の5月CB消費者信頼感指数は99.5と4月の101.3を下回る見通し。金融引き締め長期化が見込まれるなか景気への影響が懸念され、低調な内容はドル売り要因になりやすい。

【米・5月雇用統計】(6月2日発表予定)
6月2日発表の米5月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+17.5万人、失業率は3.5%、平均時給は前年比+4.3%の見通し。賃金の伸びが市場予想を一致、または上回った場合、追加利上げを後押しする材料に。

予想レンジ:139円20銭-142円20銭

《FA》