女子高生コンビニ店員あすか(8):怪電話

2020年1月17日

プルルルル、プルルルル、プルルルル・・・

東大の授業を終えた帰り道。時間は17時頃だったと思う。

駅から家までの帰り道、僕は意を決してあすかさんに電話を掛けた。

知らない番号からの突然の着信だ。あすかさんが出てくれない可能性もある。

むしろ5コール目あたりからは、「このまま出ない方が良いかも。」なんて弱気な考えも浮かんで来た。

だが、あすかさんは電話に出てくれたのである。

あすかさん

・・・もしもし?

ひろし

も、もしもし。コンビニのバイトのひろしですけど。

あすかさん

(戸惑いながら。)あ、はい・・・。どうしましたか。

ひろし

じ、実は〇月〇日〇時からのシフトに入れなくなって、あ、あすかさんが空いてれば代わってもらいたいんだけど。

あすかさん

あ、はい。大丈夫ですよ。
風邪をひいたんですか?すごい声ですよ。

このとき、あすかさんに指摘されるまで全く気付かなかった。

緊張のため、ただでさえ低い僕の声が、さらに低くて恐ろしい声になっていたようだ。


この指摘を受け、なぜか僕はひどく動揺した。

(ヤバい、緊張しているのがバレたか。僕があすかさんのことを好きなこともバレたかもしれない。どうしよう。)

完全にパニック状態である。

普通の人にはわからないかもしれないが、恋愛経験が極端に少ない人は、「自分がその人のことを好きだということが相手にバレること」を極端に怖がる。

「この人、私に気があるな。」→「でも私はこの人のこと好きじゃないな。」とフラれるのが怖いのだ。それが例え、彼女の心の中だけに留まっている思いだとしても。
(普通に考えれば、デートに誘うためにはむしろ好意を見せる必要があるのだが。)

当然、当時の僕の、小鹿のように繊細な心は耐えられなかった。

ここで、何かがプツンと切れてしまった。

(もう、あすかさんは無理だ・・・。)


僕はシフトを代わってもらったお礼を言い、あすかさんとの電話を切り上げた。

もちろん、「お礼にご飯おごるよ!」なんて気の利いたセリフが言えるはずもなかった。

僕はこうして、自分勝手にあすかさんを諦めた。

以降、バイトの交代の際に顔を合わせることがあっても、何も行動を起こさなかった。

大学のキャンパスが変わるタイミングで、僕はコンビニバイトを辞めた。

そうして、永久にあすかさんと会う事はなくなったのである。

嘘のような本当の話。

自分で書いていても、自分の考えや行動が信じられない。

なぜ、「すごい声ですよ。」と言われたことで女性を諦める必要があるのだろうか・・・。

どうして、「すごい声=私のことが好きで緊張している」と考えると思ったのか。


でも、恋愛経験のない豆腐メンタルのネガティブ大学生は、本当にこんな行動を取ったのである。

僕の恋愛初トライは、こうしてあっけなく幕を閉じた。


チャラ男よ、申し訳ない・・・。

いくら東大生でも、僕がここまで恋愛劣等生だとは見抜けなかったんだね・・・。


(完)


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