【奇怪で淫靡な等身大人形たち(坂出市)】
アニメや映画のワンシーンを表現するのに役立つ関節部可動フィギュア。この原点・源流はどこにあるのか、ということを考えたことはあるだろうか。その答えを得られたのは、たまたまネットで、香川県坂出市のある等身大人形展示施設を見つけたことによる。
その施設は「四谷シモン人形館」(淡翁荘)。ここには23体の等身大人形が、各部屋や押入れ、浴室、大型金庫等の中に入っているのだが、これらの人形を「球体関節人形」という。
そう、関節部に球体が入っていることで可動する人形。まさに可動フィギュアの原点と言える。この人形製作の日本に於ける先駆者の一人が四谷シモン氏。昭和40年、日本に初めて、この人形の存在を紹介したのがシモン氏だったように記憶している。
球体関節人形が誕生したのはいつなのか、ということについては不詳(専門文献等で調べれば分かるかも)だが、少なくても16世紀のドイツには既に存在していたことが確認されている。
シモン氏等、日本の人形作家たちはこの人形に衝撃を受け、一部の者たちは自ら製作するようになる。
シモン氏の作品は評価が高く、大阪万博を始め、有名な施設で展示されてきた。どの人形も独特の世界観があり、見方によってはグロテスクやエロティックに見える。
四谷シモン人形館は「鎌田ミュージアム」という、三館の博物館を総称したものの一つ。だからチケットも三館共通のものがお得。絵葉書や三館スタンプラリーの特典も用意されている。但し、金~日曜しか開館してないから要注意。
まず受付を済ますと、人形館ではなく、隣の「小沢剛・讃岐醤油画資料館」に案内される。この館は幕末に建築された鎌田醤油本店で、館内には小沢氏の醤油で描かれた様々な絵が展示されている。醤油画を描く体験もできるが、多分、今はコロナ禍で休止しているだろう。
醤油画資料館を見終わると、後は案内もなく、再び人形館に入る。順路や人形展示場所の案内板等は意図的に設置してなかったと思う。開けてはいけない扉にはその旨、注意書きがあるから、何も書かれていない扉を次々と開けて行く。
まず出会うのは、和室の入口横に立っている、ゾンビのような肌をしたハットを被った男「ルネ・マグリットの男」。この人形が大阪万博に展示されていたもの。その向かいの資料室内には、身体がスケルトンのようになった「機械仕掛けの少年Ⅰ」とキリストのような「クウァジ・ウルティマ」が。
大型ケースに入ったジョン・レノンのような「ピグマリオニスム・ナルシシズム」の奥には「機械仕掛けの人形Ⅱ」。
ルネの横の廊下の突き当りを右に曲がった所はトイレ跡だったと思うが、最奥の扉を開けると、巨大なスキンヘッドの裸の男が座っている。
二階に上がった所には少年の天使、その奥には局部が目に付く「未来と過去のアダム」が。
奥の洋室の応接間は、映画等に出てきそうなインスタ映えする空間。
如何にも西洋の大屋敷に住んでいそうな少女と少年の人形がいて、その奥の部屋の入口の両脇には、門番のように裸の男が立っている。
一階のトイレ跡の真上は浴室跡で、ここにもスキンヘッドでスケルトンな男が立っている。
応接間沿い廊下を進むと、左手の押入れの上段にはギョッとさせられる人形が。胴体や足が木枠だけの少女が、まるで放置されたかのように横たわっている。下面は鏡張り。
廊下の突き当りの扉を開けると、そこには淫靡な空間が広がっていた。大きな展示ケースの中には、ガーターストッキング姿の娼婦のような「未来と過去のイブ」が。陰毛も金髪。
押入れには更に妖艶な人形が。下の段からは、片方の乳首が見えかけているスリップ姿の女が寝そべったまま出てきていて、上段には裸体の幼女が。机の上には頭部だけの女が。
この部屋はチェリーボーイには刺激が強いかも。
人形館を出ると、車で敷地内の郷土博物館に移動し、ナウマン象の化石や江戸時代の天体望遠鏡等を見学し、隣の庭園「香風園」を散策後、車で敷地内の鎌田醤油直売所へ行き、スタンプラリーの景品(選ぶことができる)と絵葉書を貰った。ここでは醤油のアイスクリームも販売している。
三館共、写真撮影可(例外展示物があったかも)。個人の場合、どんな写真もネットアップ可だが、ライター等は局部が写る写真はネット記事添付・書籍掲載不可。審査に二ヶ月以上要することがある。
鎌田ミュージアムは穴場スポットで、休日でも来館者は少ないから密にはならない。芸術的フィギュアの原点を是非堪能して戴きたい。→公式サイト
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