鎌倉神楽(湯立神楽)~御霊神社・例大祭2018年~

鎌倉神楽(湯立神楽)~御霊神社・例大祭2018年~

9月18日は、鎌倉坂ノ下・御霊神社の例大祭でした。本殿での神事に続き催行された鎌倉神楽(湯立神楽)をご紹介します。鎌倉神楽は、今から800年くらい前に、京都・石清水八幡宮より伝わったもので、元々三十六座ほどありましたが、現在は湘南鎌倉地区のご神職有志で構成される「湯立神楽保存会」を中心に十二座が残っております。
鎌倉神楽では、神主さんが釜で沸かした湯を激しくかきまぜますが、昔はそこに立ち上る湯玉の様子からその年の吉凶を占っていたそうです。現在では、そのノウハウが失われてしまいましたが、演目の一つである「湯上」において桶に汲み入れたお湯を神前に献上したり、「笹舞」において笹の葉を湯に浸し参拝客の頭上に散布することで皆の無病息災を祈るなど、釜の湯を中心に儀式が進んでいくことから「湯立神楽」「湯花神楽」とも呼ばれています。

鎌倉神楽の様子

動画を次のようにアップしておりますので、ご覧ください。

初能(はのう)・御祓(おはらい)・御幣招(ごへいまねき)

湯上(ゆあげ)・掻湯(かきゆ)・大散供(だいさんく)

笹舞(ささまい)・射祓(いはらい)・剣舞毛止畿(けんまいもどき)

開始前の様子

神楽の舞台の横に笹と御幣が飾られた「山」が設えられていました。

頭頂部の紅白の御幣が神様の憑代となります。

既に火の入った湯釜からは、湯気が立ち上っています。

案の上には、供え物が準備されています。

「剣舞毛止畿」で使う天狗と山神の面も、案の上に準備されました。

本殿での神事の途中、お祓いの儀式の中で、ご神職が湯釜の前まで降りて来られ、湯釜を浄めます。

御神楽の催行を祈念し、いよいよ鎌倉神楽の開始です。

鎌倉神楽

初能(はのう)

鎌倉神楽では必ず奉納される「座」です。米を乗せた白扇と神楽鈴を持ったご神職が舞い、四方に米を散供し、清らかな神楽場を造ります。この日は御霊神社の宮司さんがご奉仕されました。



御祓(おはらい)

まず「献饌(けんせん)」を行います。続いて二本の小さな御幣と神楽鈴を手に持ち御神酒徳利を小脇に抱えたご神職が湯釜に向かい、威儀物、神楽場、湯釜、神具類、参列者を御祓いします。



御幣招(ごへいまねき)

御幣と神楽鈴を持ったご神職が舞い、神の憑代となる「山」の頂上の紅白の御幣に火産霊神(ほむすびのかみ)・罔象女神(みづはのめのかみ)を、また「案」上の青と黄色の御幣に産土大神(うぶすなのおおかみ)を、お招きします。最後に「恩頼(みたまのふゆ)」により神様のお力を授かります。



湯上(ゆあげ)

笹を束ねた「湯たぶさ」と神楽鈴を持ったご神職が舞い、湯釜に進み柄杓で桶にお湯を汲み、湯に浸した笹と共に本殿に進んで神前に湯を献じます。



中入れ(なかいれ)

ご神職は狩衣を脱ぎ「掻湯(かきゆ)」以降の後段に備え、参列者はお供えの一部をお下げいただき神気を授かります。この日は、前の方にいましたので、幸運にもお赤飯をいただくことができました。



掻湯(かきゆ)

いよいよ湯花神楽・湯立神楽とも呼ばれる鎌倉神楽の山場です。御幣と神楽鈴を持ったご神職が舞い、祈念をこめた御幣で沸騰するお湯を掻き廻し、立ち上る湯玉「湯の泡」のあがり具合で今年の作物の豊凶を占います。



大散供(だいさんく)

「大散供」は、二人舞となります。初能を二人で舞う要領で、白扇に乗せた神饌のお米を四方に撒きます。羽織姿のご神職二人の息の合った舞に注目です。



笹舞(ささまい)

二人のご神職が「湯たぶさ」を手に舞を演じ、順に湯釜に進み「湯たぶさ」をお湯に浸し四方に振るい「しぶき」を撒きます。この神の息吹は、この世のありとあらゆる物に遠く振り注がれ、豊かな実りを約束します。



射祓(いはらい)

神の宿る弓矢に込められた力で四方の邪気を射祓い、天下泰平・招福除災を祈念します。縁起物の矢を、四名に限ってではありますが頂けるということでも人気のある演目です。神の憑る「山」や「案」に向かう五本目の矢は、射る動作だけで実際には矢は射ません。



剣舞毛止畿(けんまいもどき)

神楽の終わりに演じられます。天狗が鉾を持って舞い、空中に九字真言の最後の一文字「前」の字を切り、豊年万作・大漁満足・天下泰平を祈念し、邪気・邪霊を鎮めます。九字真言は、昔の忍者物の映画で「臨・兵・闘・射」とやっていたアレです。また、この途中に黒面の山の神が現れコミカルに舞います。天狗の所作を邪魔するなどトリックスターの役割りを演じながら飴玉を散供し参列者が平常心を取り戻すことを助けます。なお「剣舞」と「毛止畿」は一応別の演目で、例えば今年の銭洗弁財天で奉納された鎌倉神楽では「剣舞」だけでした。



御神楽で頂いたもの

「初能」でご神職が撒いたお米が、一粒私の右腕に乗っかりましたので、翌日のご飯を炊くときに混ぜました。誰の御茶碗に入ったのかは神様だけがご存知です。

山の神がとなりのおじさんに配ったものを一つ分けていただきました。これだけなら糖尿病の心配は無用です。

「山」の頂上にあった紅白の御幣を、「山」を片づける際に頂いて帰りました。

ちょっと長くなりましたが最後までご覧いただきありがとうございました。
今度、折を見て他の神社の鎌倉神楽も拝見したいと思います。