オーストラリアにおける原住民アボリジニに対する人種差別政策は激しく、かつては人間とは見られず動植物と同じ扱いをされ、1960年代に至っても白人との混血児を国が強制収容して白人として育て、アボリジニの文化を破壊する策がとられていました。

この映画はそんな人種差別政策下の1960年代、アボリジニ初のソウルシンガー・グループとなった女性たちを史実に基づいて描くものです。



この映画「ドリーム・ガールズ」のオーストラリア版か、と思って観ていたら、彼女らの“ツアー”と言うのがベトナム戦争の前線、と言う事に意表を突かれます。

ツアーバスの代わりに装甲車に乗ってのドサ回り・・・決して製作費は高くないと思われる映画でありながら、ベトナムの戦場をよく再現しているのにも感心しました。

三姉妹+従姉妹と言う4人も、気が強くてしっかり者の長女ゲイル、恋多き女のシンシア、抜群の歌唱力のジュリー、白人とのハーフでスタイルよくダンスの上手いケイ、と、それぞれに個性的。

物語の主人公は長女のゲイルになるのですが、獅子鼻で色黒、険しい表情でお世辞にも美人とは言い難い、と思えた彼女が、物語が進むにつれて魅力的に思えて来るのは正に映画のマジック。

そんなゲイルに「声に力がない。リードボーカルをジュリーに譲れ」とデイヴが告げる辺りで人間関係に緊張感を持たせ、ところがそれがきっかけにデイヴがゲイルに恋してしまう・・・と言う展開も巧みです。



勿論、戦場を背景にして歌われる60年代ソウル・ミュージックの名曲の数々に、舞台裏で繰り広げられる、彼女たちそれぞれのラブロマンス、と内容は盛り沢山です。