「子どもの絵について学ぶ」基礎編 part2【子どもの絵における形の発生】

子どもの絵における形の発生

形の発生(ローエンフェルトの研究)子どもの絵において初めて形らしきものが描かれるのは3歳から4歳の頃です。その頃の子どもの絵の発達段階を象徴期と呼ばれています。

形とはいえ、象徴期のはじめの頃は、何を描くか決めてから描くのではなく、ぐしゃぐしゃ描きの中で偶然できた円形らしきものや、線のかたまりを指して「リンゴ」とか「ママ」とか言います。しだいに、何であるかを意識して描くようになります。

しかし、そこに表われる形は、本物とは似ても似つかず、大人が見るとやはり何を描いているのかわからないものがほとんどです。これは「図形的符号」であり、「シェーマ(Schema)」と呼ばれています。この「図形的符号」は実物とは関連しないようなものから、物の主な特徴が簡略化(図式化)されている線の輪郭に至るまで色々あります。

この時期に描かれる形が、いわゆる最初の「形」です。ローエンフェルドは「形の発生」について後世にのこる興味深い実験を行いました。子どもが描く「形」は、はたして何かを見て描いたものなのだろうか(視覚的経験)?

ローエンフェルドは、弱視の.子ども(ほとんど目の見えない子ども)と普通児とをグループに分け、描画および粘土で「形」をつくらせました。子どもが目で見て物を描いているのであれば、弱視児と普通児では、その形が異なるはずです。ローエンフェルドの実験の結果は、これまでの常識をくつがえしました。すなわち、普通児も弱視児も、全く同じ形を描いたり粘土でつくりあげたのです。この時期の子どもは目で見て物を描いているわけではありません。その形は視覚によるものだけではなく、子どもの内発的なものであり、肉体的な感覚であることを証明したのです。

「この時期(象徴期)の子どもは視覚的に見えているものを描画や造形において再現しているのではない」
この事実は幼児の美術教育の方法を根本的にくつがえしました。「象徴期」の子どもたちへ「見て描かせる」という方法は、大人の価値観の押し付けに過ぎず、この時期の子どもの価値観において相応しくないということが明白になったのです。
 「幼児はものを見て描いていない」
だから、絵を描くことに意味がないということではありません。
この時期は「考えてから描く」のではなく、手を動かしその痕跡が残ることに興味を持ち、偶然できた形を通して大人とコミュニケーションをとることが嬉しいのです。
意味のある形を描かせようとせず、お子様とのコミュニケーションをたくさん楽しんでください。



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PROFILE

屋嘉部 正人
屋嘉部 正人芸術による教育の会GM
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師

大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。

美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。

50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。