残り物には福がある 49
湖のほとりに立つ小さな教会。
祭壇の向こうに見える湖面は
2人の門出を祝うように
日の光をキラキラと反射させていた。
『残り物には福がある』 第49話
あのあとすぐに婚約を発表したオレたちは
結婚へとむけて慌ただしい日々を送ってきた。
その中で喧嘩もそれなりにした。
一番揉めたのが
今、つくしの左手の薬指で光を反射させてる婚約指輪だ。
愛の証とされる婚約指輪だ。
つくしに対してはもちろん、
世界中にオレ以上につくしを愛せる男はいないと
証明するためにオレは最高のリングを作るつもりでいた。
それなのに…
「あたし婚約指輪なんていらないよ?」
なんてサラッと言いやがったつくし。
オレの「愛の証」だぞ!?
それをいらないとは何事だと
初めてつくしにブチ切れちまったオレ。
つくしにそんなつもりはねぇとわかっていても
自分を否定されたような気がして
その日の夜は初めてつくしのベッドへ行かなかった。
だけどオレの好みに合わせて作られているはずのベッドは
しばらく使ってない間に全く違う物に感じる程に違和感しかなくて
後悔するのに時間はかからなかった。
だけどその時、
オレの背中でベッドの端が小さく沈んだ。
オレが寝てると思ってるのか
じれったいほどに
そーっと時間をかけて潜り込んできたかと思えば
「ごめんなさい」
なんて今にも消えそうな涙声で言う。
マジでずりぃ…。
そう思いながらも無視できるはずもなくて
体を反転させると腕の中に閉じ込めた。
後になって聞いてみれば
オレがデザインから
指輪を作ろうとしてる事を誰かから聞いたらしく、
ただでさえ忙しい中、式に向けての打ち合わせも多くて
その日のうちに帰れない事が増えてきたオレを気遣って
負担になるくらいならしっかり休んでほしかったと
いらないと言った理由を話すつくし。
「負担なんかじゃねぇ。
オレがお前に贈りたいからそうするんだ。
いらねぇっつったって絶対に作るぞ、オレは。
言っちまえばただの我儘だ。
お前の我儘も1つ聞いてやるから受け取ってくれよ」
そう言ってやっと首を縦に振ったつくし。
その後、我儘を言えと言ってるのに
オレにちゃんと休めだの、無理するなだの
どう考えたってただ体の心配してるだけの
こいつの自称ワガママを却下し続けて
「オレはお前に好きな女の我儘も
聞いてやれねぇ男と思われてんのか?
オレがどうだとかじゃなくて
つくしがやってみてぇ事とかねぇのかよ?」
言うまで寝ないと半ば脅しのように言って
漸く引き出せたのがこの2人だけの結婚式だ。
結婚式も披露宴も
もちろん大々的にやる予定だった。
だけどつくしは
「それはそれでお祝いしてくれる方が多いのは嬉しいけど
誰かに誓うんじゃなくて、あたしは司に永遠を誓いたい」
なんて結局はオレが嬉しいだけの我儘を言った。
そりゃこの式を兼ねた旅行のために
スケジュールは多少無理をしたかもしれない。
だけどそれを苦に思う事なんてなかったし
むしろ力が沸いてきて1日余分に休みをもぎ取れたくらいだ。
2人だけだからドレスもタキシードもねぇけど
一応雰囲気だけでもっつー事で
白のワンピースを着たつくしとカジュアルスーツのオレは
祭壇の前で向かい合って触れるだけのキスをして
永遠の愛をお互いに誓い合った。
そのあとは湖のほとりの散策路を手を繋いで歩く。
「残り物には福があるってホントだね」
なんて機嫌良さそうに
相変わらずオレを“残り者”扱いしてるつくし。
「残りモンなんかじゃねぇよ」
「…なによ?
残ってたのはあたしだけで
自分はモテモテだったって自慢してるの?」
なんて拗ねたような顔をしてからクスッと笑う。
「違ぇっつーの。
オレもつくしもただ残ってたわけじゃねぇ。
いつか出会う“運命の相手”を待ってただけだろ?」
共通の友人がいたんだから
もっと早く出会ってたっておかしくなかった。
実際どうせならもっと早く
つくしと出会ってれば…と思った事もある。
だけど、きっと
あのタイミングがオレたちが出会う最良の時だったんだ。
自信満々に言ったオレを
ポカンと口を開けてしばらく見ていたつくしは
「そっか…そうかも。
じゃあ司は満を持して登場した真打って事にしとこ」
そう言いながら嬉しそうに腕に巻きついてきた。
~ fin ~
いつも応援ありがとうございます♡
★あとがきはまた今日どこかでアップしま~す★
祭壇の向こうに見える湖面は
2人の門出を祝うように
日の光をキラキラと反射させていた。
『残り物には福がある』 第49話
あのあとすぐに婚約を発表したオレたちは
結婚へとむけて慌ただしい日々を送ってきた。
その中で喧嘩もそれなりにした。
一番揉めたのが
今、つくしの左手の薬指で光を反射させてる婚約指輪だ。
愛の証とされる婚約指輪だ。
つくしに対してはもちろん、
世界中にオレ以上につくしを愛せる男はいないと
証明するためにオレは最高のリングを作るつもりでいた。
それなのに…
「あたし婚約指輪なんていらないよ?」
なんてサラッと言いやがったつくし。
オレの「愛の証」だぞ!?
それをいらないとは何事だと
初めてつくしにブチ切れちまったオレ。
つくしにそんなつもりはねぇとわかっていても
自分を否定されたような気がして
その日の夜は初めてつくしのベッドへ行かなかった。
だけどオレの好みに合わせて作られているはずのベッドは
しばらく使ってない間に全く違う物に感じる程に違和感しかなくて
後悔するのに時間はかからなかった。
だけどその時、
オレの背中でベッドの端が小さく沈んだ。
オレが寝てると思ってるのか
じれったいほどに
そーっと時間をかけて潜り込んできたかと思えば
「ごめんなさい」
なんて今にも消えそうな涙声で言う。
マジでずりぃ…。
そう思いながらも無視できるはずもなくて
体を反転させると腕の中に閉じ込めた。
後になって聞いてみれば
オレがデザインから
指輪を作ろうとしてる事を誰かから聞いたらしく、
ただでさえ忙しい中、式に向けての打ち合わせも多くて
その日のうちに帰れない事が増えてきたオレを気遣って
負担になるくらいならしっかり休んでほしかったと
いらないと言った理由を話すつくし。
「負担なんかじゃねぇ。
オレがお前に贈りたいからそうするんだ。
いらねぇっつったって絶対に作るぞ、オレは。
言っちまえばただの我儘だ。
お前の我儘も1つ聞いてやるから受け取ってくれよ」
そう言ってやっと首を縦に振ったつくし。
その後、我儘を言えと言ってるのに
オレにちゃんと休めだの、無理するなだの
どう考えたってただ体の心配してるだけの
こいつの自称ワガママを却下し続けて
「オレはお前に好きな女の我儘も
聞いてやれねぇ男と思われてんのか?
オレがどうだとかじゃなくて
つくしがやってみてぇ事とかねぇのかよ?」
言うまで寝ないと半ば脅しのように言って
漸く引き出せたのがこの2人だけの結婚式だ。
結婚式も披露宴も
もちろん大々的にやる予定だった。
だけどつくしは
「それはそれでお祝いしてくれる方が多いのは嬉しいけど
誰かに誓うんじゃなくて、あたしは司に永遠を誓いたい」
なんて結局はオレが嬉しいだけの我儘を言った。
そりゃこの式を兼ねた旅行のために
スケジュールは多少無理をしたかもしれない。
だけどそれを苦に思う事なんてなかったし
むしろ力が沸いてきて1日余分に休みをもぎ取れたくらいだ。
2人だけだからドレスもタキシードもねぇけど
一応雰囲気だけでもっつー事で
白のワンピースを着たつくしとカジュアルスーツのオレは
祭壇の前で向かい合って触れるだけのキスをして
永遠の愛をお互いに誓い合った。
そのあとは湖のほとりの散策路を手を繋いで歩く。
「残り物には福があるってホントだね」
なんて機嫌良さそうに
相変わらずオレを“残り者”扱いしてるつくし。
「残りモンなんかじゃねぇよ」
「…なによ?
残ってたのはあたしだけで
自分はモテモテだったって自慢してるの?」
なんて拗ねたような顔をしてからクスッと笑う。
「違ぇっつーの。
オレもつくしもただ残ってたわけじゃねぇ。
いつか出会う“運命の相手”を待ってただけだろ?」
共通の友人がいたんだから
もっと早く出会ってたっておかしくなかった。
実際どうせならもっと早く
つくしと出会ってれば…と思った事もある。
だけど、きっと
あのタイミングがオレたちが出会う最良の時だったんだ。
自信満々に言ったオレを
ポカンと口を開けてしばらく見ていたつくしは
「そっか…そうかも。
じゃあ司は満を持して登場した真打って事にしとこ」
そう言いながら嬉しそうに腕に巻きついてきた。
~ fin ~
いつも応援ありがとうございます♡
★あとがきはまた今日どこかでアップしま~す★
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