核兵器の基礎知識
- 2017/09/19
- 22:50
核兵器の基礎知識
<国連・核兵器禁止条約に関する考察2>
副題:「核兵器」と言われと忌避感が先に立ち、その性質や現状を知ろうとはせずに、最初から拒否して遠ざけていないか?
「核兵器の基礎知識」と題しての論考を始めると、だいたいが「核兵器とは」との科学的話から始まるのだが、そういう事はWikiでも見れば書いてあるので、そういうアプローチはしない。目前に迫る北朝鮮の核と、やはり我国を照準におさめる中国の核を対象に、我々日本人を軸足にしたアプローチとする。
こういう方法を採用したのは、第三者的な科学的知識に軸足を置いても、実生活で忙しい我々普通の日本人の多数にとって、それが有益だとは言えないぐらいに事態は宜しくないからである。
先ず、「核兵器」と総称される場合には、核爆弾そのものを言う場合と、核爆弾を爆発させる場所まで移動させる手段の2つを合わせて核兵器と言う場合がある。
核爆弾そのものは、知っての通り、通常の爆薬で爆発するよりも爆破威力が桁違いに大きい。この前の北朝鮮の核実験の「水爆」の規模は160キロトンだと言われている。また、広島の原爆の威力は15キロトンである。
この「キロトン」の意味は、普通の爆弾のTNT火薬量に換算したものだ。
核兵器が開発される前の第二次世界大戦時の最大の爆撃機B-29の場合、その搭載量はカタログスペックで9ton。ゼロ戦が爆装する際に搭載したのが250kg爆弾1発。
これらはTNT火薬の爆発力が威力の根源であり、その火薬量が多ければ、威力も大きいというものだ。
B-29のカタログスペックでの搭載量が9tonでも、爆弾を搭載する装置の関係で1ton爆弾では8発が最大積載量ということになり、大威力爆弾の搭載量は1ton x 8発 = 8tonになる。そのB-29が広島に投下した原爆は15キロトン=15,000tonの威力があるので、核爆弾の桁違いの威力がどれ程のものかわかるだろう。
広島原爆の15キロトンは、通常爆弾搭載するB-29約1900機分である。
先日の北朝鮮の核実験「水爆」の規模は160キロトンとは、TNT火薬16万トン分の威力ということだ。広島型原爆の約10倍、通常爆弾搭載するB-29、約1万9千機分である。
何が言いたいのかというと、この様に、核兵器は通常兵器に比して、桁違いに威力が大きいということである。
この様に桁違いに威力が大きい兵器を使用する事で引き起こされる被害は、やはり桁違いに大きく、そもそもの目的である「外交課題」を決着させるにしては犠牲が大きすぎるとの問題である。
そういう観点からは、核兵器は、使用する事が相応しくない兵器である。
一方、それだけ圧倒的な威力を持つことから、核兵器を持つ国を相手に武力衝突を試みること自体が無謀なものであり、それ故に、東西冷静が第三次世界大戦へと拡大しなかった理由でもある。これは、互いが合理的判断をする事で至ったものである。
相互破壊確証戦略(*1)の前提は、核保有国が互いに合理的判断をするとしている点にあり、「自分が食えない米なら、灰を撒いてやる」の様な、何処もプラスにならない様な発想では成り立たないのである。
現在、核弾頭を保有しているのは、米国、英国、仏国、露国、中国、インド、パキスタンの7ヶ国である。北朝鮮も先日の核実験で、違法に持っている様である。
これら各国が、いったいどの程度の核弾頭を保有しているのかは、正確には分からないが、各種軍事情報サイトのうち、以前も利用したストックホルム国際平和研究所(SIPRI)にちょうど、核保有国の保有数一覧表(*2)があるので、それをベースに以下に示す。
<2017年現在の核弾頭保有総数>
米 国 :6,800発
露 国 :7,000発
仏 国 : 300発
中 国 : 270発
英 国 : 215発
パキスタン:130~140発
インド :120~130発
イスラエル: 80発
北朝鮮 :10~20発
<表示順変換引用終わり>
ご覧の様に、米露が圧倒的である。
また、このサイトでは、イスラエルを核保有国と看做して、核弾頭数を「80発」と推定している。また、北朝鮮に関しては、違法・合法との視点ではなく「保有の有無」との視点で「10から20発」と推定している。
北朝鮮は、実際に核爆発実験をしているのに対して、イスラエルは核爆発実験をしておらず、その点から、当方は、核保有国として扱っていないことを、為念、付記する。
核爆弾自体の話はこれぐらいにして、核爆弾を目的地まで移動させる手段とワンセットにした核兵器の話へと移る。
先に述べた通り、通常爆弾も、B-29との戦略爆撃機で我が国上空まで移動さえ、そこで投下することで兵器として使用される。
核兵器の移動手段のことを「核投射能力」とか「核投射方法」とか言う。
「核投射方法」は3種類ある。
1つは、広島原爆で使用された戦略爆撃機による投射である。
第二次世界大戦時は、プロペラ機のB-29だったが、その後、ジェット爆撃機のB-47,その発展型のB-52がある。
B-52以降の超音速爆撃機として1950年代に開発されたB-58ハスラー爆撃機やB-70バルキリーは、同時代に大きく性能を上げた超音速迎撃機や対空ミサイルの前には餌食でしかなく、草々に引退している。
しかしながら、有人航空機での運搬という柔軟性があることから、その後、レーダーに捕捉されにくい低空を超音速で移動するB-1や、ステルス技術を駆使したB-2など、米軍では、戦略爆撃機を用いた核投射方法を諦めていない。
核保有国のうち、英国と仏国は、戦略爆撃機の運用を止めているが、ロシア及び中国は戦略爆撃機を保持している。
2つ目としては、弾道ミサイルである。
敵国に届く弾道ミサイルは、核爆弾の運搬手段として、最も効率的である。
戦略爆撃機が有人航空機である為に、投下後に戻ってくる為に、長大な航続距離が必要であり、その速度もマッハ3を超えることはない。一方、無人の弾道ミサイルは、目標に届くだけの射程距離があればよく、また、成層圏・宇宙空間からの落下速度は、終末段階で最低でもマッハ5以上で突入してくる。特に、高度を上げるロフテッド軌道では、その数倍に達する。
弾道ミサイル技術と衛星等を宇宙空間に運ぶ宇宙ロケットは、技術的には同じ技術である。
アメリカ初の有人宇宙船マーキュリーを打ち上げたアトラスロケットも、その次の二人乗り宇宙船ジェミニを打ち上げたタイタンロケットも、月に人類を送ったアポロ計画のサターンロケットも総て、アメリカの大陸間弾道ミサイルロケットからの流用である。
それ故に、北朝鮮は、弾道ミサイル発射実験の初期には、盛んに「宇宙ロケットの実験だ」と称し、衛星を打ち上げたと欺瞞宣伝をしていた。
また、それ故に、我が国の宇宙ロケットH-2や小惑星探査機はやぶさを打ち上げたミュー5型(M-V=現行イプシロンの前の型)の能力は、大陸間弾道ミサイルの能力を凌駕しており「そういう目」で見れば、その性能は恐ろしいものである。
これら宇宙ロケットに核弾頭を搭載して、目標に届かせるのが、弾道ミサイルによる核投射手段である。
多分、これが最も効率が良いので数も多いと思われる。
3つ目は、潜水艦から発射する弾道ミサイルであるSLBMである。
これは、潜水艦という隠密性が高い艦船に搭載され、居場所がほとんど分からないという特徴があり、陸上配備型の戦略爆撃機や地上発射型の弾道ミサイルとは違い、秘匿性があることから、核攻撃の第一撃を受けても全滅から逃れ、報復攻撃を行うものである。
相互破壊確証戦略は、「こちらが核を使用したら報復攻撃で相手から核を使用される」とのバランスの上に成り立っているもので、「第一撃で全滅させれば報復攻撃はない」として、メガトン級核兵器を一気に使用し先に全滅させるとのアイディアが出されたこともあった。これは、弾道ミサイル発射を察知したら、即時に反撃されるとの対応で、夢想だとわかるのだが、第一撃での本土全滅でも報復能力を持つ、との方法で、そういう誘惑が存在し得ない様にしているのが潜水艦搭載弾道ミサイルである。
核保有国のうち、英国と仏国は、戦略爆撃機の運用を止めているが、陸上配備の弾道ミサイルの運用もしていない。彼等の核抑止力は、戦略原潜SLBMだけである。
これら3つの核投射手法のうち、英国、仏国はSLBMしか持たないことを述べたが、各核保有国が、どの様な核投射手法を保有しているのかを簡単に紹介する。
1)戦略爆撃機による核投射
米 国 :B-52、B-1、B-2で合計約100機
露 国 :Tu-95(ベア)、Tu-160(ブラックジャック)で合計約70機
中 国 :轟炸六型 戦略爆撃機型は少数だと推定されている。
2)弾道ミサイルによる核投射
米 国 :地上発射サイロ数が400以上、ICBM保有
露 国 :詳細不明ながら、米国と同等以上のサイロがあると推定。ICBM保有。
中 国 :山東半島及び奥地に弾道ミサイル発射基地があり、日本列島を照準におさめていると言われている。ICBM保有
インド :インドの弾道ミサイルは中距離射程のものしかないものの、中国・パキスタン相手には充分な射程距離を有している。
パキスタン:ノドン・スカッドベースの弾道ミサイルだったが、今年、3000km級の中距離弾道ミサイル実験に成功している。
北朝鮮 :ICBM一歩手前まで射程距離を延ばしている。
3)潜水艦搭載弾道ミサイル
米 国 :オハイオ級14隻就役中。後継にコロンビア級を開発中
露 国 :デルタ級、タイフーン級など多数。稼働詳細不明。
仏 国 :ル・トリオンファン級原潜4隻就役中
中 国 :最近、普級4隻を就役させた。
英 国 :ヴァンガード級原潜4隻就役中
インド :アリハント級1隻を建造中
パキスタン:なし。だが、SLBM発射実験に成功した模様。
北朝鮮 :新浦級1隻。通常動力型で発射筒も1つだけなので、実験艦であろうとされ、実戦には使えないと目される。
「同型艦4隻」とは、常時1隻を作戦行動させておくには、3隻でのローテーションが基本だが、365日24時間休みなく確実に稼働させる為には、万が一3隻ローテーションに不具合があっても、穴があかない様に、もう1隻を加え4隻体制としているものである。
「365日24時間休みなく確実に稼働させる」とは、核に報復能力が常時存在しており、それが抑止力となる体制のことである。
今回は、以上とする。
【文末脚注】
(*1):互いに合理的判断をするとの前提で成り立つ戦略
2017/09/06投稿:
相互破壊確証戦略が通用しない相手
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-746.html
(*2):ストックホルム国際平和研究所(核弾頭数)
STOCKHOLM INTERNATIONAL PEACE RESEARCH INSTITUTE
Global nuclear weapons: Modernization remains the priority
世界の核兵器:近代化が優先順位であることに変わりなし
https://www.sipri.org/media/press-release/2017/global-nuclear-weapons-modernization-remains-priority
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<国連・核兵器禁止条約に関する考察2>
副題:「核兵器」と言われと忌避感が先に立ち、その性質や現状を知ろうとはせずに、最初から拒否して遠ざけていないか?
「核兵器の基礎知識」と題しての論考を始めると、だいたいが「核兵器とは」との科学的話から始まるのだが、そういう事はWikiでも見れば書いてあるので、そういうアプローチはしない。目前に迫る北朝鮮の核と、やはり我国を照準におさめる中国の核を対象に、我々日本人を軸足にしたアプローチとする。
こういう方法を採用したのは、第三者的な科学的知識に軸足を置いても、実生活で忙しい我々普通の日本人の多数にとって、それが有益だとは言えないぐらいに事態は宜しくないからである。
先ず、「核兵器」と総称される場合には、核爆弾そのものを言う場合と、核爆弾を爆発させる場所まで移動させる手段の2つを合わせて核兵器と言う場合がある。
核爆弾そのものは、知っての通り、通常の爆薬で爆発するよりも爆破威力が桁違いに大きい。この前の北朝鮮の核実験の「水爆」の規模は160キロトンだと言われている。また、広島の原爆の威力は15キロトンである。
この「キロトン」の意味は、普通の爆弾のTNT火薬量に換算したものだ。
核兵器が開発される前の第二次世界大戦時の最大の爆撃機B-29の場合、その搭載量はカタログスペックで9ton。ゼロ戦が爆装する際に搭載したのが250kg爆弾1発。
これらはTNT火薬の爆発力が威力の根源であり、その火薬量が多ければ、威力も大きいというものだ。
B-29のカタログスペックでの搭載量が9tonでも、爆弾を搭載する装置の関係で1ton爆弾では8発が最大積載量ということになり、大威力爆弾の搭載量は1ton x 8発 = 8tonになる。そのB-29が広島に投下した原爆は15キロトン=15,000tonの威力があるので、核爆弾の桁違いの威力がどれ程のものかわかるだろう。
広島原爆の15キロトンは、通常爆弾搭載するB-29約1900機分である。
先日の北朝鮮の核実験「水爆」の規模は160キロトンとは、TNT火薬16万トン分の威力ということだ。広島型原爆の約10倍、通常爆弾搭載するB-29、約1万9千機分である。
何が言いたいのかというと、この様に、核兵器は通常兵器に比して、桁違いに威力が大きいということである。
この様に桁違いに威力が大きい兵器を使用する事で引き起こされる被害は、やはり桁違いに大きく、そもそもの目的である「外交課題」を決着させるにしては犠牲が大きすぎるとの問題である。
そういう観点からは、核兵器は、使用する事が相応しくない兵器である。
一方、それだけ圧倒的な威力を持つことから、核兵器を持つ国を相手に武力衝突を試みること自体が無謀なものであり、それ故に、東西冷静が第三次世界大戦へと拡大しなかった理由でもある。これは、互いが合理的判断をする事で至ったものである。
相互破壊確証戦略(*1)の前提は、核保有国が互いに合理的判断をするとしている点にあり、「自分が食えない米なら、灰を撒いてやる」の様な、何処もプラスにならない様な発想では成り立たないのである。
現在、核弾頭を保有しているのは、米国、英国、仏国、露国、中国、インド、パキスタンの7ヶ国である。北朝鮮も先日の核実験で、違法に持っている様である。
これら各国が、いったいどの程度の核弾頭を保有しているのかは、正確には分からないが、各種軍事情報サイトのうち、以前も利用したストックホルム国際平和研究所(SIPRI)にちょうど、核保有国の保有数一覧表(*2)があるので、それをベースに以下に示す。
<2017年現在の核弾頭保有総数>
米 国 :6,800発
露 国 :7,000発
仏 国 : 300発
中 国 : 270発
英 国 : 215発
パキスタン:130~140発
インド :120~130発
イスラエル: 80発
北朝鮮 :10~20発
<表示順変換引用終わり>
ご覧の様に、米露が圧倒的である。
また、このサイトでは、イスラエルを核保有国と看做して、核弾頭数を「80発」と推定している。また、北朝鮮に関しては、違法・合法との視点ではなく「保有の有無」との視点で「10から20発」と推定している。
北朝鮮は、実際に核爆発実験をしているのに対して、イスラエルは核爆発実験をしておらず、その点から、当方は、核保有国として扱っていないことを、為念、付記する。
核爆弾自体の話はこれぐらいにして、核爆弾を目的地まで移動させる手段とワンセットにした核兵器の話へと移る。
先に述べた通り、通常爆弾も、B-29との戦略爆撃機で我が国上空まで移動さえ、そこで投下することで兵器として使用される。
核兵器の移動手段のことを「核投射能力」とか「核投射方法」とか言う。
「核投射方法」は3種類ある。
1つは、広島原爆で使用された戦略爆撃機による投射である。
第二次世界大戦時は、プロペラ機のB-29だったが、その後、ジェット爆撃機のB-47,その発展型のB-52がある。
B-52以降の超音速爆撃機として1950年代に開発されたB-58ハスラー爆撃機やB-70バルキリーは、同時代に大きく性能を上げた超音速迎撃機や対空ミサイルの前には餌食でしかなく、草々に引退している。
しかしながら、有人航空機での運搬という柔軟性があることから、その後、レーダーに捕捉されにくい低空を超音速で移動するB-1や、ステルス技術を駆使したB-2など、米軍では、戦略爆撃機を用いた核投射方法を諦めていない。
核保有国のうち、英国と仏国は、戦略爆撃機の運用を止めているが、ロシア及び中国は戦略爆撃機を保持している。
2つ目としては、弾道ミサイルである。
敵国に届く弾道ミサイルは、核爆弾の運搬手段として、最も効率的である。
戦略爆撃機が有人航空機である為に、投下後に戻ってくる為に、長大な航続距離が必要であり、その速度もマッハ3を超えることはない。一方、無人の弾道ミサイルは、目標に届くだけの射程距離があればよく、また、成層圏・宇宙空間からの落下速度は、終末段階で最低でもマッハ5以上で突入してくる。特に、高度を上げるロフテッド軌道では、その数倍に達する。
弾道ミサイル技術と衛星等を宇宙空間に運ぶ宇宙ロケットは、技術的には同じ技術である。
アメリカ初の有人宇宙船マーキュリーを打ち上げたアトラスロケットも、その次の二人乗り宇宙船ジェミニを打ち上げたタイタンロケットも、月に人類を送ったアポロ計画のサターンロケットも総て、アメリカの大陸間弾道ミサイルロケットからの流用である。
それ故に、北朝鮮は、弾道ミサイル発射実験の初期には、盛んに「宇宙ロケットの実験だ」と称し、衛星を打ち上げたと欺瞞宣伝をしていた。
また、それ故に、我が国の宇宙ロケットH-2や小惑星探査機はやぶさを打ち上げたミュー5型(M-V=現行イプシロンの前の型)の能力は、大陸間弾道ミサイルの能力を凌駕しており「そういう目」で見れば、その性能は恐ろしいものである。
これら宇宙ロケットに核弾頭を搭載して、目標に届かせるのが、弾道ミサイルによる核投射手段である。
多分、これが最も効率が良いので数も多いと思われる。
3つ目は、潜水艦から発射する弾道ミサイルであるSLBMである。
これは、潜水艦という隠密性が高い艦船に搭載され、居場所がほとんど分からないという特徴があり、陸上配備型の戦略爆撃機や地上発射型の弾道ミサイルとは違い、秘匿性があることから、核攻撃の第一撃を受けても全滅から逃れ、報復攻撃を行うものである。
相互破壊確証戦略は、「こちらが核を使用したら報復攻撃で相手から核を使用される」とのバランスの上に成り立っているもので、「第一撃で全滅させれば報復攻撃はない」として、メガトン級核兵器を一気に使用し先に全滅させるとのアイディアが出されたこともあった。これは、弾道ミサイル発射を察知したら、即時に反撃されるとの対応で、夢想だとわかるのだが、第一撃での本土全滅でも報復能力を持つ、との方法で、そういう誘惑が存在し得ない様にしているのが潜水艦搭載弾道ミサイルである。
核保有国のうち、英国と仏国は、戦略爆撃機の運用を止めているが、陸上配備の弾道ミサイルの運用もしていない。彼等の核抑止力は、戦略原潜SLBMだけである。
これら3つの核投射手法のうち、英国、仏国はSLBMしか持たないことを述べたが、各核保有国が、どの様な核投射手法を保有しているのかを簡単に紹介する。
1)戦略爆撃機による核投射
米 国 :B-52、B-1、B-2で合計約100機
露 国 :Tu-95(ベア)、Tu-160(ブラックジャック)で合計約70機
中 国 :轟炸六型 戦略爆撃機型は少数だと推定されている。
2)弾道ミサイルによる核投射
米 国 :地上発射サイロ数が400以上、ICBM保有
露 国 :詳細不明ながら、米国と同等以上のサイロがあると推定。ICBM保有。
中 国 :山東半島及び奥地に弾道ミサイル発射基地があり、日本列島を照準におさめていると言われている。ICBM保有
インド :インドの弾道ミサイルは中距離射程のものしかないものの、中国・パキスタン相手には充分な射程距離を有している。
パキスタン:ノドン・スカッドベースの弾道ミサイルだったが、今年、3000km級の中距離弾道ミサイル実験に成功している。
北朝鮮 :ICBM一歩手前まで射程距離を延ばしている。
3)潜水艦搭載弾道ミサイル
米 国 :オハイオ級14隻就役中。後継にコロンビア級を開発中
露 国 :デルタ級、タイフーン級など多数。稼働詳細不明。
仏 国 :ル・トリオンファン級原潜4隻就役中
中 国 :最近、普級4隻を就役させた。
英 国 :ヴァンガード級原潜4隻就役中
インド :アリハント級1隻を建造中
パキスタン:なし。だが、SLBM発射実験に成功した模様。
北朝鮮 :新浦級1隻。通常動力型で発射筒も1つだけなので、実験艦であろうとされ、実戦には使えないと目される。
「同型艦4隻」とは、常時1隻を作戦行動させておくには、3隻でのローテーションが基本だが、365日24時間休みなく確実に稼働させる為には、万が一3隻ローテーションに不具合があっても、穴があかない様に、もう1隻を加え4隻体制としているものである。
「365日24時間休みなく確実に稼働させる」とは、核に報復能力が常時存在しており、それが抑止力となる体制のことである。
今回は、以上とする。
【文末脚注】
(*1):互いに合理的判断をするとの前提で成り立つ戦略
2017/09/06投稿:
相互破壊確証戦略が通用しない相手
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-746.html
(*2):ストックホルム国際平和研究所(核弾頭数)
STOCKHOLM INTERNATIONAL PEACE RESEARCH INSTITUTE
Global nuclear weapons: Modernization remains the priority
世界の核兵器:近代化が優先順位であることに変わりなし
https://www.sipri.org/media/press-release/2017/global-nuclear-weapons-modernization-remains-priority
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