あれから数十年。ようやく真意を知った私
 昨年末に電子版で購入したジョージ秋山の「アシュラ」(幻冬舎文庫版)。

Ashura1

 このマンガは、小学生のときに利用していた浦河の床屋(理容室)で何度か読んだ。
 その床屋-『くずの』という名前だった-には少年マガジンがそろっており、当時連載されていたのマンガの1つが「アシュラ」だった。

 時代は平安時代末期。農村部は飢饉で餓死した死体だらけ。人肉を食べる者もいた。

 そんなときに気がおかしくなった女が産み落とした赤ん坊。その名がアシュラ。
 女は空腹のためアシュラを焼いて食べようとするが、そのときに雷が落ち、大やけどを負ったアシュラは川に流される。

 一命をとりとめ、獣のように生き抜くアシュラ。

 あるときアシュラは人狩りに捕まり、そこでほかの人たちと係わることで人間らしさを得てゆく。そんなとき、生みの親-父親と、気がふれた母親-と出会う。
 出生のいきさつを知ったアシュラは決して両親と一緒には暮らせないことを悟り、自分と同じく人狩りに捕まった仲間たちとその地を離れ都へと向かう。

Ashura2

 子どものころ読んだときは、死体やそこからあふれ出るウジの絵に衝撃を受けた。
 しかし、あらためて読むと、その気持ちの悪い情景や人肉食という異常さよりも、生まれたときから人間として扱われたことのない、いや自分がニンゲンであることさえ知らない、アシュラのあまりにも悲しい人生の心の葛藤を描いていることを、いまさらながらに知った。これはおとな向けのマンガである。

 MahlerKnaben  のん気すぎる母親
 マーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の「この世の生活(Das irdische Leben。「浮世の生活」という邦題もある)」。
 歌曲集「子供の不思議な角笛(Des Knaben Wunderhorn)」の第5曲(1892-93作曲)で、餓えておなかがすいたと訴える子どもと母親の対話形式の歌詞である(「子供の不思議な角笛」はアルニムとブレンターノの2人が編纂した民謡詩集)。

 西野茂雄氏の訳を載せておこう。

 「母さん、母さん、お腹がぺこぺこだよ、パンをおくれよ、さもなきゃ死んでしまうよ!」
 「もうちょっと待ってね、いい子だから、あした大急ぎで麦を刈るからね!」

 そして麦刈りがすんだ時に、その子は相変わらず叫びつづけた――
 「母さん、母さん、お腹がぺこぺこだよ、パンをおくれよ、さもなきゃ死んでしまうよ!」
 「もうちょっと待ってね、いい子だから、あした大急ぎで麦を打つからね!」

 そして麦打ちがすんだ時に、その子は相変わらず叫びつづけた――
 「母さん、母さん、お腹がぺこぺこだよ、パンをおくれよ、さもなきゃ死んでしまうよ!」
 「もうちょっと待ってね、いい子だから、あした大急ぎでパンを焼くからね!」

 そしてパンが焼きあがった時に、その子は棺台にのせられていた。


 最後に静かに一打鳴らされるシンバルの音が実に印象的だ。

 シュヴァルツコップのソプラノ、セル/ロンドン交響楽団の演奏を。

 1969年録音。EMI。

 先日、札幌は狸小路で見かけた看板。

 なんだか張り切った自信満々の顔をしているけど、要するに共食いだわな。

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 表情からして、こっちより『悪』に感じる。

 あっ、ザンギっていうのは北海道弁らしいが鶏のから揚げのことである。
 「そだね~」「そっかい」同様、覚えておくべき必須北海道語である。