このままでは年金制度が崩壊する⁉ | 真の国益を実現するブログ

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「年金制度はこのままでは崩壊する」、「年金保険料なぞ払っても無駄」等々、年金不安を煽る言説があります。

先日も次のような元経産官僚のネット配信を見かけました。
http://www.minnanokaigo.com/news/usami/Q51/
今後は賦課方式である厚生年金の規模を縮小して、積立方式の民間の保険サービスとの組み合わせで老後生活を支えるような仕組みにしていかなければ、日本の年金制度は破綻してしまいかねません。なので、近い将来大きな改革が断行されることを期待しています。

民主党の議員も度々煽ってます。例えば、2005年の岡田克也前代表の国会質疑。
http://www.cld04.cld-partner.org/opinion/2005/04/post-134.html
現実は、国民年金は壊れている、私はこう思いますし、厚生年金についても制度が働き方に対して中立的でない。

大前研一氏も次のように書いています。
『目を覚ませ! 年金制度はもう破綻している 大前研一の日本のカラクリ』

また、先の国会での年金制度改革審議においては、「年金カット法案」と揶揄されたこともあり、より一層制度の存続自体危ういとの言説に拍車をかけたように思います。
さらには、国民年金保険料の納付率が約7割という低率、つまり3割も未納であることやGPIFの年金運用での損失報道もあって、財政基盤の脆弱性、不確実性に対する不安が高まっていますね。

しかしながら、筆者が素人なりに勉強した範囲で結論付けると、今後支給額の減少や支給開始年齢のさらなる引き上げは十分あり得ますが、制度自体が崩壊すること、掛けた保険料以下の給付額しか支給されないとは、まず考えられません(早死にした場合は別ですが)。したがって、保険料を納付しないなぞは愚の骨頂です。無論、保険料支払分を自分で運用して稼げるほどの幸運の持ち主には当てはまりません。


厚生労働省のHP等に詳しい解説がありますが、筆者が勉強した範囲で、かいつまんで説明しておきます。
http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/index.html


1 国民年金保険料の未納率が3割を超えても、実際の未納率ははるかに小さい。
 
 国民年金保険料の納付率は確かに低いのですが、給与天引きされる厚生年金保険料等はほぼ100%の納付率です。そして、給与天引きされる第二号被保険者は約4000万人に対して、国民年金の未納者は約200万人、また保険料も低いので、トータルでの未納率は数%とも言われています。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/0000089760.pdf

2 先進国比較で見劣りしない積立金
 
我が国においては、積立金で約4年分の給付を賄うことができます。この年数は先進国比較でトップクラスと言われています。(イギリス約4か月、米国約3年、ドイツ約2か月、フランスはほとんどなし)
http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/verification/verification_02.html


3 納付額の数倍もの給付額
http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/28/annual-pension_n_8210934.html

 厚生労働省は掛けた保険料に対して、どれだけ給付額があるかを試算しています(上記URLは、元資料が見つからなかったので、ハフィントンポスト社のネット配信記事です)。
世代格差は大きいのですが、現在20歳代でも厚生年金であれば2.3倍、国民年金のみの加入者でも1.5倍になります。無論、平均余命まで生存したことが条件となっています。

4 マクロ経済スライド方式(少子高齢化が進行しても、財源の範囲内で給付費をまかなえるように制度を改正。財源にあわせて給付の水準を自動調整する仕組み)

 批判の多い方式ではありますが、高齢者が増大し現役世代が減少する中、また国庫負担(現在は基礎年金部分の二分の一負担)を拡充しないとするならば、仕方ないところです。逆に、この方式を確立することにより破綻の可能性がなくなったとも言えるかと思います。
 先日の改正においては、物価だけでなく賃金低下時にも年金支給額を減らすことが決まりましたが、これも賃金と年金財政の収入である保険料が連動するので仕方ないとも言えます。しかし2019年から、この減額が発動された際には、低年金者対策として年6万円の増額が行われますので、それほど問題にするようなことでもないかと思います。
 とにもかくにも、マクロとして賃金増加と少子化の抑制、ひいては経済成長が重要なのです。

5 GPIFの年金運用に対する誤解

 民進党などが大きな損失が出たとして騒いでますが、次の独立行政法人GPIFのHPを見れば、利益を出していることは一目瞭然。また、そもそも積立金の給付額に占める割合は一割程度と微々たるものです。
http://www.gpif.go.jp/operation/state/index.html

<独立行政法人GPIF作成『平成28年度第2四半期運用状況』より引用>

 ただし、株式市場に対する影響やポートフォリオ選択の透明性等問題は少なくないと考えます。

6 積立方式への移行が不可避だとする改革論

 現在は年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する賦課方式です。一方、積立方式とは将来自分が年金を受給するときに必要となる財源を、現役時代の間に積み立てておく方式です。

 少子高齢化の進展で、賦課方式では破綻するとの論が多いのですが、積立方式にはとても大きな問題があります。移行時においては、現役世代は現在の受給者のための保険料に加えて、自分の保険料も積み立てなければなりません。現実的ではありませんね。また、掛金が固定され給付額が運用成績に大きく左右されるので、経済的ショックには堪えられません。また、長寿化が進めば、給付額が途中でジリ貧になります。

7 結論
 現状の賦課方式でも、余程のことがない限り、保険料以上の給付額が受けられる制度設計になっています。もちろん、制度上の給付額で、ある程度の生活レベルが保障されるか否かは別問題ですが、国庫歳出全体で考えた場合、年金給付のレベルが大きく下がれば生活保護を増やさざるを得なくなるので、その点からも、制度維持は政府にとって絶対と言っても良いかと考えます。

 個人的には、国庫負担の拡充を望みたいところですが、あまり増やすとその恩恵は医者や弁護士等高所得者にも及ぶので、専門家による慎重な論議に委ねるべきと考えます。
 繰り返しになりますが、年金制度をより盤石なものとするために必要なことは、抜本的改革でなく、経済成長と少子化抑制なのです。


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