安倍政権の日本経済低迷(賃上げと設備投資抑制)原因に関するズレた認識 | 真の国益を実現するブログ

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あらゆる面から安倍内閣の政策を厳しく評価し、独自の見解を述べていきます。

麻生大臣が新年早々(1月4日)、近年の我が国企業の経営姿勢に対して、次のように発言しています。

「われわれもいろんな言葉でしつこく言っているんですが、企業も稼ぎながら内部留保をためている。デフレの時代はモノの値段が下がるから、持っていればカネの値打ちがあがるんだけど、今は違うんだから。その金を設備投資に回すか、賃金を上げるか、何かしてもらわないと、そのまま内部留保が増えるだけ増える」

「なんのために、そして『税金は安くしてくれ』と言う。法人税を下げて、その税金をどこに使うんですか。また内部留保ですか。そういった話は金融の方もぜひパートナーとして、企業との間でコミュニケーションをさらに良くしてもらうということが大事なので、コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)だとか、スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)だとか、いろんな話をやらせていただいてます。これを単に口で言うだけでなく、実行に移していかなければならないと金融庁としても考えているというのが正直なところ。私どもとして、手数料だけで生きているのではなくて、リスクを取ってやるというところに銀行の目が向かないと、企業というのはなかなかうまくいかない」

この発言に対して、『Think outside the box』ブログ様が鋭い分析を展開されています。
『法人税減税分は株主の懐に』(1月10日配信)
http://totb.hatenablog.com/entry/2017/01/10/230214
『「失われた20年」の真因はグローバリゼーション』
http://totb.hatenablog.com/entry/2017/01/13/215241

1月10日のブログにおいては、賃上げや設備投資増のためには、コーポレートガバナンス改革やスチュワードシップ・コードの実行が必要との考えに対して、むしろ逆効果であるとしています。

筆者もそう考えます。
コーポレートガバナンスに関しては、企業統治と訳されますが、経営する側からの経営のあり方、つまり投資される企業側の行動規範であり、一方、スチュワードシップ・コードは投資する側、機関投資家から企業への働きかけのための行動規範です。

そして、近年ずっと言われているのが、企業は株主である機関投資家の方を向いた経営への改革を、そして機関投資家はそのように企業に働きかける責任があると。

以前は企業においては経営は経営者に任され、株主である機関投資家はあまり経営に介入してこなかったが、これからはグローバルスタンダードに合わせ、機関投資家の方を向いた、投資リターンの拡大に重きを置いた経営に変わっていくべき、だと。

この投資リターンに関しては、建前上は中長期が目標とされていますが、実際には上場企業においては、3カ月ごとに決算を発表する四半期決算公表が義務化されたので、短期的な投資リターンを追い求める傾向にあります。

筆者には、これらの改革は着々と進んでいるように思われます。外国人株主比率も増加しています。
『外国人の"株式保有比率"、過去最高の31.7%--2014年度、3年連続で上昇』
(2015年度は若干低下し、30%を切りました)
海外からの投資を増やすことは安倍総理の強い思いでもありますね。「Buy my Abenomics」とスピーチしています。
『ニューヨーク証券取引所 安倍内閣総理大臣スピーチ』

コーポレートガバナンス改革が進んだことにより、新規設備投資や人材育成投資に重きを置く中長期的な見地よりも、賃金と新規設備投資抑制による短期的利益を重視するようになってきたのですが、安倍総理や麻生大臣からすると、改革が不十分であるため、企業の稼ぐ力がまだ弱い、よって賃上げに結び付いていかないという分析なんでしょう。ここ20年来の我が国経済低迷の原因を「構造改革が足りない」とする竹中平蔵等改革バカと同じ思考回路です。

まあ企業側からすると、株価低迷は企業買収につながることから、外国人投資家に株を売却されないよう、とにかく利益上げて株価上昇、また経営手法の変革は仕方ないのかもしれませんが。。。

とにもかくにも、安倍総理や麻生大臣には正しい認識を持ってもらいたいものです。賃上げが成長加速の必要条件であると認識するのであれば、進めようとしている改革のベクトルを逆向きに変えることです。もちろん、過激なグローバリズムもしかりです。
他、設計主義的になりますが、最低賃金のアップや労働組合の強化も必要なのでしょうね。

それから、正社員と非正規労働者の待遇格差の是正を目指す「同一労働同一賃金」も問題ありですね。
現状のような賃上げに消極的な企業の経営姿勢では、非正規の待遇を改善すれば人件費全体が膨らむので、正社員の賃金を引き下げることにも成りかねません。


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