民間議員の暴走が止まらない!(診療報酬改定にも関与?) | 真の国益を実現するブログ

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昨年12月21日開催の経済財政諮問会議において、民間議員から「薬価の議論と併せて診療報酬の改定についても諮問会議で議論すべき」との意見が出されたことについて、その翌日、日医(日本医師会)が抗議文書ともとれる見解を公表しました。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/004845.html
日医は、診療報酬に関しては、日本の健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する厚生労働省の諮問機関である中医協(中央社会保険医療協議会)こそが議論の場であるとして、次のように厳しく非難しています。
『今回、経済財政諮問会議の民間議員から、診療報酬の改定についても経済財政諮問会議で議論すべきという大それた発言がありました。まさに青天の霹靂であり、極めて遺憾です。』

これが12月21日開催の経済財政諮問会議の議事要旨です。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/1221_2/gijiyoushi.pdf

当会議の議長は安倍総理、議員として麻生財務大臣、菅官房長官、石原伸晃大臣、塩崎厚生労大臣、黒田日銀総裁等々、いわゆる民間議員としては学習院大学の伊藤元重教授や日本総研の高橋進理事長等が出席しています。
そして、議事として「薬価制度の抜本改革について」が一つ目に上がり、日医が指摘しているように複数の民間議員から当諮問会議でしっかりと議論していくとあります。

安倍総理は12月26日、この異例の事態である日医からの抗議文書に慌てたのか、横倉日医会長との電話会談で「診療報酬については中医協で議論することを確認した」と公表しました。ただし、医療費総額に関しては諮問会議で議論することはあり得るとのこと。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/490169/

日医の危機感は相当なものだったと思います。
以前から、経済財政諮問会議では、歳出効率化のための「健康ポイント制度(健康づくりに対する取り組みをする人が様々な特典をもらえる制度)」や「都道府県医療費目標」、「混合診療全面解禁」等の医療政策に関する提案はなされていました。しかし、診療報酬の改定に関しては、今回が初めてだったようです。

総理は診療報酬の改定を経済財政諮問会議で議論することに関して、今回は否定しましたが、このような動きは今後も継続すると考えます。
善意に解釈すれば、彼らは増大する医療費による財政収支の悪化を危惧し、それの抑制と医療技術等のイノベーションのために診療報酬の改定議論にも首を突っ込んだと考えますが、おそらくは市場メカニズムに任せれば、全て上手くいくはずだとの思い込みがあるのでしょう。また、農協(JA)改革等の議論から、安倍総理もそのような思想の持ち主だと推測します。

医療保険制度や診療報酬は非常に専門的で複雑です。医療の門外漢であるエコノミスト等がそれらの議論に関与するとは、百害あって一利なしでしょう。参考にもならないと考えます。
日医は、診療報酬体系について中医協以外が議論することは、法令上も問題ありと指摘しています。

先の日医の見解から、今は亡き大経済学者である宇沢弘文氏が述べたことを抜粋します。
医を経済に合わせるのではなく、経済を医に合わせるのが、社会的共通資本としての医療を考えるときの基本的視点である。

『政府』の役割はあくまでも、これらの医療機関が供給する医療サービスが、医学的な観点から最適なものであり、かつ社会的な観点から公正なものであり、さらに経済的な観点から効率的となるような制度的、財政的措置を講ずることであって、医療の実質的内容に立ち入って、介入ないしは管理は決して行なってはならない。

(社会的共通資本としての医療制度は、)国家官僚によって、国家の統治機構の一環としてつくられ、管理されるものであってはならないし、また儲けを基準とする市場的メカニズムに任せるものであってはならない。それはあくまでも、医療に関わる職業的専門家が中心になり、医学に関わる科学的知見にもとづき、医療に関わる職業的規律・倫理に忠実なものでなければならない。

また、山形大学の医療政策学講座の村上正奏教授は、財務省等からの診療報酬引き下げ圧力に関して、次のように述べています。
『調剤報酬などで見直すべき点があるのは事実だ。だが、全体として費用削減に偏った政策は、大きな弊害を生みかねない。財政再建ばかり語られるが、「不況下での緊縮財政は景気にも健康にも有害」(デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス)でもあるのだ。』
(出典:医薬経済社出版『医政羅針盤』)

医療分野に限りませんが、民間議員には利益相反の問題もあります。また、彼らは市場の失敗をあまり理解してないと思われますので、彼らの意見を政策に取り入れた場合には、かなりの確率で国民が害を被ることになるでしょう。
まあ、官邸も民間議員も、「医師会は既得権益者だ!」として批判するのでしょうけど。。。そして世論もそっちになびいて、郵政改革や農協改革同様に「はい、それま~で」となるのでしょうか。

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