静岡県磐田市(旧磐田郡豊岡村)岩室(いわむろ)の市指定史跡 岩室廃寺跡(岩室廃寺遺跡)は、獅子ヶ鼻(ししがはな)公園周辺に所在する寺院跡です。

奈良時代に小規模の山岳密教寺院が開かれ、平安時代には多くの堂宇が点在する岩室寺となりました。

敷地川(しきじがわ)東岸の丘陵上(標高150~180m)に、建物基壇2ヶ所・礎石建物1棟・塔礎石1ヶ所・中世墓・経塚、西岸の丘陵で塔礎石2ヶ所などの遺構が確認されています。

市指定史跡 岩室廃寺跡 観音堂
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 岩室寺は、真言宗租 弘法大師 空海(こうぼうだいし くうかい)が開いた(或いは、下見に訪れましたが立地条件に満足できず開かなかったなど)という伝説もあり。

戦国時代、織田信長軍によって焼かれました。

 獅子ヶ鼻公園のある敷地川(しきじがわ)東岸の丘陵(標高150~180m)で、建物基壇2ヶ所・礎石建物1棟・塔礎石1ヶ所・中世墓・経塚、西岸の丘陵で塔礎石2ヶ所などの遺構が確認されています。

観音堂北側の中世墓からは、平安時代末期の大治元年(1126年)銘の銅製経筒(きょうづつ)が出土。

昭和61年(1989年)の発掘調査で、遠江国分寺跡のものと同じ瓦が出土しました。

岩室廃寺跡では、須恵器・土師器・灰釉陶器(かいゆうとうき)・山茶碗(やまぢゃわん)・かわらけ・布目瓦(ぬのめがわら)・鉄釘(てつくぎ)などの遺物が見つかっています。

探訪は自己責任で!!

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市指定史跡 岩室廃寺跡(岩室廃寺遺跡)の地図
静岡県磐田市(旧磐田郡豊岡村)岩室
獅子ヶ鼻(ししがはな)公園 無料駐車場あり

アクセス
・東名高速道路 袋井ICより車で約30分
・東名高速道路 磐田ICより車で約30分
・JR東海道本線 磐田駅より車で約30分
・天竜浜名湖鉄道 敷地駅より徒歩約30分

獅子トイレ
 獅子ヶ鼻(ししがはな)公園駐車場前にあるトイレ。
人が近づくとセンサーが作動して、獅子の目のライトが地味に光ります。
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獅子ヶ鼻公園 案内図
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岩室廃寺跡(岩室廃寺遺跡)の分布図
1 観音堂、2 観音堂周辺の山林、3 塔跡、4 金堂跡
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岩室廃寺跡の案内板
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<観音堂(かんのんどう)>
 遠江三十三観音巡り第9番札所の真言宗 岩室山 清瀧寺(せいりゅうじ)で、本尊は聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)。
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岩室廃寺跡出土の仏像破片
平安・鎌倉時代 市指定文化財 岩室に伝わる仏像

 一木彫刻(いちぼくちょうこく)の仏像です。
室町時代後期(戦国時代)の天文15年(1546年)、比叡山の僧兵が岩室山を襲撃し焼き打ちにしました。
江戸時代中期の明和2年(1765年)、地元住民が北谷周辺の土中より仏像破片を発見。
出土した仏像破片は、磐田市埋蔵文化財センターで保管されています。
高さ約1.5mの仏像2体(平安時代)と高さ約1.2mの大日如来像頭部(鎌倉時代初期)です。
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礎石(そせき)
 観音堂の前にあります。
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<観音堂周辺の山林>
 不法投棄されたゴミもありますが、布目瓦(ぬのめがわら)や陶器の欠片(かけら)などの遺物あり。
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布目瓦(ぬのめがわら)
 岩室廃寺跡の瓦は、大楽寺窯(磐田市下野辺大楽寺)で焼かれました。
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<塔跡(とうあと)>
 観音堂から遊歩道を西へ約120m下ると、山林内に礎石が残る塔跡。
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塔心礎(とうしんそ)
 半分に割れた塔の中心の礎石(そせき)で、直経約36cm、深さ約12cmの円形の孔(あな)あり。
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<金堂跡(こんどうあと)>(礎石建物跡)
 獅子ヶ鼻公園大駐車場近く、熊野神社の鳥居横の山林。
方形の礎石が見つかっています。
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熊野神社
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<岩室廃寺跡(岩室廃寺遺跡)の出土品>
磐田市教育委員会が所蔵しています。
奈良時代 甕(かめ)・蓋(右上)
平安時代 灰釉陶器(かいゆうとうき) 碗(右下)
鎌倉時代 山茶碗(左)
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平安時代 軒平瓦(のきひらがわら)、平瓦(ひらがわら)
 瓦を製作する際に、粘土と木型の間に布をはさんで剥がし易くした布目が残されているので、布目瓦(ぬのめがわら)とも呼ばれます。
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<鎌倉時代 岩室中世墳墓群遺跡(いわむろちゅうせいふんぼぐんいせき)>
 岩室廃寺跡(岩室廃寺遺跡)では、鎌倉時代に築かれた墳墓(ふんぼ)も見つかりました。
約1.8m四方に平らな石を積み上げ、中央に火葬した人骨を納めた骨蔵器(こつぞうき)を埋めた構造です。

発掘された中世墳墓
 中世墳墓はすでに消滅しており、現地で見学できません。
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復元 岩室中世墳墓群
 約1.5m四方で復元されており、実物よりも一回り小さいです。
出土した石を使用しています。
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鎌倉時代 骨蔵器(こつぞうき)
 口の部分を割った四耳壷(しじこ)を、火葬した遺骨を納める骨蔵器(こつぞうき)として使用。
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鎌倉時代 骨蔵器
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<獅子ヶ鼻(ししがはな)>
 敷地川(しきじがわ)東岸の断崖で、昔は「牛ヶ鼻」と呼ばれていた巨岩。
江戸時代の安政の大地震で角の部分が崩落して、「獅子ヶ鼻」に名前が替わりました。
獅子ヶ鼻公園周辺の山は、約1800万年前に海底が隆起した地形です。
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断崖は、修行に使われていたのかもしれません。
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参考文献
・『静岡県文化財地図Ⅱ ―焼津市以西―』静岡県教育委員会 1989年3月1日
・『静岡県文化財地名表Ⅱ ―焼津市以西―』静岡県教育委員会 1989年3月1日
・『磐田市史 資料編1 考古・古代・中世』磐田市史編さん委員会 1992年3月31日
・『岩室廃寺 ―集落近郊林整備事業に伴う緊急発掘調査概要―』豊岡村教育委員会 1987年3月31日