ニュートンの質点定理の証明 (ファインマン物理学 I, 191pより)

地球全体を考えるかわりに、薄い一様な中空の球殻を考える。この球殻の全質量を m とし、球の中心から距離 R にある質点 m' の位置のエネルギーを計算し、そしてこれが質量 m が中心の点にあったとした場合と同じであることを示す。位置のエネルギーを取り扱うときには、角度を気にしなくてよいから、質量の部分部分による位置のエネルギーをみな加えればよい。

ひとつの平面の切り口と中心との距離を x とすると、厚さ dx にある質量はみな P から等距離 r のところにある。それでこの輪による位置のエネルギーは  - \quad \frac {Gm'dm}{r} である。厚さ dx の切片の質量はいくらかというと、
 dm=2 \pi y \mu ds = \frac{2 \pi y \mu dx}{\sin \theta} = \frac{2 \pi y \mu dx \cdot a}{y} = 2 \pi a \mu dx
である。ここに  \mu = \frac {m}{4 \pi a ^{2}} は球殻の質量の面密度である。(一般に球面を帯状に切ると、その面積は半径方向の厚さに比例する。)したがって
 dW = - \quad \frac {Gm'dm}{r} = - \quad \frac {Gm'2 \pi a \mu dx}{r}
である。ところが
 r^{2} = y ^{2} + (R-x)^{2} = y^{2} + x^{2} + R^{2} - 2Rx = a^{2} + R^{2} - 2Rx
であるから
 2rdr = -2Rdx
あるいは
 \frac{dx}{r} = \frac{dr}{R}
よって
 W = - \frac{Gm'2 \pi a \mu}{R} \int_{R+a}^{R-a} \quad dr
 \qquad \qquad = - \frac{Gm'2 \pi a \mu}{R} 2a = -  \frac{Gm'(4 \pi a^{2} \mu)}{R} = - \frac{Gm'm}{R}
である。このように薄い球殻では、その外にある質量 m' の位置のエネルギーは、球殻の質量が全部中心に集まったとしたときと同じである。地球は球殻が何枚も重なったものと考えられ、その球殻のおのおのによるエネルギーは、その質量と中心からの距離によってきまる。それを全部加えると、全質量になり、したがって地球の力は、それが全部中心に集まったときと同じになる。


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