空を歩けるスポット2・三豊市博智山 | 次世代に遺したい自然や史跡

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毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

[奇岩怪石群のパノラマ山]

香川県三豊市の観音寺市境界の仁尾町七宝連山から詫間町荘内半島にかけての、地形図に山名が表記されている低山は全て瀬戸内海の展望が開けており(山頂付近の尾根を含む)、大半の山が整備されている。その中でも屈指の展望を誇るのが、以前紹介した志保山を凌ぐパノラマが広がる博智山[ばくちやま](237m)。地元では奇岩怪石が多い山としても知られている。

 

この山頂手前には、昔、上で博打を行っていたという八畳岩(はっちょういわ)があるが、この岩の端が切れ落ちているため、この前紹介した竜王山ハンググライダー発進台のような空を歩ける写真や、ほうきに跨って飛ぶ魔女のようなインスタ映えする写真が撮れる。ただ、今回の写真は、高さ調節ができない三脚で撮っているため、ある程度ジャンプせねばならず、力んでおり、竜神山時のような自然な歩き姿ではない。

 

‘00年代に入り、博智山から妙見山(319.9m)にかけての縦走路が整備されたようで、歩き甲斐のある山行ができ、志保山よりも登山者は多い。ただ何故か先日訪れた際、当方以外の登山者は皆、登山口(下の地図)には駐車していなかった。ハイキング・イベント開催時のスタート地点である下方の明神川砂防ダム公園に駐車しているのだろう。

 

登山口にはデフォルメされたコース案内板が建っているが、一部、コースが抜かっている箇所がある。往路に於いて最も面白味があり、登り易いコースは、「鬼の門」から三角池手前の十字路に出て、そこから山頂へ上がるコース。案内板にはこの十字路とそこから八畳岩下ののろし台へ到るコースが描かれていない。

 

鬼の門(下の写真)とは、斜面の崖とその向かいの岩に天井岩が乗っかり、石門になっている箇所のこと。のろし台とは、八畳岩で博打を開催時、それを麓の仲間に知らせるために狼煙を焚いた場所。但し、遠見番所の烽火台のような石積みはない。ここからも胸のすく展望が広がっている。

今回、三角池は省略したが、それは池に行ってしまうと、山頂へはロープを掴みながら登る急傾斜を辿らなければならないため。

 

登山口には「おにぎり石」(自然石)と沢山の登山用ストック、それに山頂に供える絵馬が置かれている。一般的な里山の登山口には手作りの木の杖が置かれていることが多々あるが、市販のストックが大量に置かれているケースは過去、見たことがない。それだけこの山が地元住民に愛されている、ということか。因みに高知市からここまで車で2時間少々。それだけアプローチに時間をかけても登る価値はある。

 

すぐ尾根道に乗るが、振り返ると中腹に観測所を含む陸軍の新浜砲台跡と、山頂に海軍の機銃陣地跡が残る塩生山(140.7m)が端正な円錐形の山容を見せている(上の写真)。

 

板で作った馬のモニュメントがある「ウイング広場」(実際、広場はない)の分岐に「キノコ岩」(上の写真)があり、ここを右折する。

谷沿いの鬼の門内には石仏が祭られているが、通り抜けることができる。門から先は踏み跡になる。

 

横道に出るとまた右折するが、すぐ前述の十字路(三差路だったかも)があり、ここを左折する。

道沿いに、二つに割れた「鬼の天空トイレ岩」(下の写真)を過ぎると国旗掲揚塔のあるのろし台跡上に出る。のろし台手前の船形の「ボート岩」下には「当たり神」が祭られている。これは博打に因んで祀ったものだろう。

 

そこから八畳岩までは岩間を縫って登る形になる。のろし台からの展望を上回る眺望があり、詫間中心市街地から三野津湾、詫間湾、多島美の瀬戸内海まで、絶景が展開する。

ここで同行者に空を歩く写真等を撮って貰う際は、しゃがんで撮って貰うようにすると空中浮遊感が出易い。セルフタイマーで撮る際は三脚を低くし、カメラを上向きにする。但し、断崖場所であるため、転落すると落命の可能性がある。八畳岩はある程度広い(八畳の半分以下)とは言え、背後には注意すること。

 

山頂はそこからすぐで、絵馬の奉納掛けが設置されている。展望は八畳岩同様、すこぶる良い。

妙見山へのコースは博智山南のコル以降、踏み跡が薄くなる。博智山から妙見山の稜線はS字になっているが、各所にテープが巻かれているため、読図が苦手な者も迷うことはないだろう。

 

妙見山山頂は20年前、妙見宮から登った時とは様変わりしていた。その時は山頂とその北側の尾根がスズタケのヤブに覆われていたが、ヤブはすっかり消え失せていた。スズタケ等の笹類は数十年から100年周期で一斉に枯れるというから、’00年代に入って枯れたのだろう。

 

ただ、展望は今も変わらず悪いので、南西の「星の石」まで行くしかない。この石からの展望は20年前よりやや悪くなっていたが、それでも大小の鳶島と「日本のウユニ塩湖」父母ヶ浜を遠望することはできる。しかし当日、父母ヶ浜は鏡面水面観望には適さない日であったにも拘らず、ズームすると数十人の観光客が確認できた。

 

北西に目を転じると横峯山(279m)が横たわっている。この日、登山口で会った地元のハイカーはこの山には登れるコースがない旨、言っていたが、山頂から南東に伸びる尾根には、幅広の尾根道のようなものがついている。ネットでも登山記事が掲載されていた。

 

確か20年前はここに星の石と千貫松の解説板が建っていたと思うが、それは無くなっていた。以前、拒食症克服時に妙見山(上の写真が現在の山頂)に登った際の記事で説明したと思うが、千貫松とは、ここから少し北に下った所にある巨石「千貫岩」に昔、根を張っていた大木の松のこと。

千貫岩はその大きさに圧倒される。数十トンはあるのではないかというほどの巨大さ。

 

帰路、八畳岩背後に「もののけの宮殿跡」と「マージャン岩」があるのが分かった。前者の岩のネーミング意図は不明だが、後者の岩は、縦に割れた石が並んでいるため、それを麻雀パイに見立てたものだろう。

 

のろし台からは急勾配の勝運坂を下ったが、この道沿いにもパチンコ石やチューリップ石、風神岩、雷神岩、スロットル岩等の奇岩怪石がある。それらの岩石群や坂の名称は皆、自治体が勝手に名付けたもの。「スロットル岩」前には「この岩は滑り落ちそうなので、ソロッと(スロット)通って下さい」というオヤジギャグ的(そろっととおる→ソロットオル→スロットル)案内板があったが、座布団は一枚もあげられない。しかし地元住民や自治体職員らの山を愛する気持ちには座布団を五枚以上、あげたい。

 

コースマップは→空を歩ける山Ⅱと奇岩怪石巨石山縦走

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