路地裏のランナー

この走り方をする人は伸びる…そう思える走り方があります。
速くなった未来の姿を想像できてしまうのです。
勿論、私の主観です。
しかし、陸上競技のコーチであれば、誰しもそのような視点を持っていることでしょう。
私にもいくつか着目する点はあります。
中でも特に注目するのは
①膝の使い方
②ミッドフットの接地
の2点です。
私が目指す走り方は、距離や速度に関係なく、「軽く速く」、そして「楽に走る」ことです。
スピードを上げようとすればするほど「軽く速く」…そう意識した走り方を私は高校の頃から教わり、自分なりに考え続けてきました。
そうすると、上記2点が特に重視するポイントになるのです。
さて、今回は②ミッドフットの接地について書いてみたいと思います。

西澤果穂さん(現:木田さん)の走りを眼前でしっかり見たのは、西澤さんが高校3年生の時の東京国体でした。
軽快なミッドフットの接地に魅せられたのをよく覚えています。
西澤さんの接地は、誰かに教わったものではなく、天性のものだと思えました。
あれから11年、時はあっという間です。

ミッドフットで走るランナーは、例外なく速いピッチで走ります。
苦しくなっても、回転を維持することを心掛けていれば大きく落ちることもありません。
姿勢とピッチさえ維持していれば、ラストの直線でスパートに移行することも可能です。
ですから、練習中の声掛けではペースが落ちたとしても
「ピッチを維持すること」
「姿勢を崩さないこと」
そのための方法を伝えることが中心になってきます。

普段のトレーニングについては…
姿勢を維持するために、「上体の体幹強化」と「接地の効率アップ」を中心とするトレーニングを工夫し継続すること。
その上で普段の練習を積めば、間違いなく強くなれると確信出来ます。
とはいえ、簡単ではありません。
インターバル練習の注意点」でも書きましたが、何気ないジョグの姿勢1つにも集中する必要があって、このような注意点が他にもたくさんあります。
それに私が思い描いている「普段の練習」はかなりハードなものです…。

簡単に書くつもりがかえって分かりにくくなってしまったようで恐縮ですが、「走り方は生き方に通じる」と私は確信しています。
私は西澤さんの走り方に魅せられた一人です。
どのような環境でも、どのような距離を走るにしても、これからも素敵なミッドフットで走り続けてくれることでしょう。
今日、4月27日は西澤さんの誕生日です。
おめでとう、素敵な人生を。

※西澤さんの走り方については「西澤果穂さんの着地点」にも書いたことがありますのでぜひご覧ください。


西澤果穂さん

北村夢さんの投稿(4月13日)をしばらく考えていました。
ここ数年、力強い走りが出来ない理由として、
PMS(月経前症候群)がかなり重く、元気でいられるのが1ヶ月のうちの1〜2週間程度
であることを挙げているのです。
また
もし婦人科疾患に詳しい方、知り合いにいらっしゃる方がいたらお力を貸していただけないでしょうか
とも呼びかけているので、症状を改善するために必要なことはもう分かっておられていて、最善策を選択する段階にあるようです。

私は以前、月経について「月経との関わり方」に書きました。
低用量ピルを使用することを対策の選択肢として挙げ、日本陸連公式サイトに掲載されている、市川華菜さんの記事「女子アスリートに知っておいてほしいこと 第2回」(リンク最終確認:2024年4月27日)を紹介しました。
もし、月経で悩んでいる女子アスリートが、今この投稿を読んでおられるとしたら、市川さんの記事を参考にしていただければと思います。
参考に、というのは、記事の内容を真に受けてしまうのではなく、選択肢として低用量ピルがあること、そして婦人科の医師に相談することです。
未成年の方は、顧問の先生や家族など、打ち明けやすい人に先ず相談してください。

私は北村夢さんとの接点はありません。
中距離合宿が読谷村で行われていたとき、大森郁香と松井コーチに会いに行った際に少し紹介していただいた程度です。
ただの一ファンの願望にしかすぎませんが、日本の陸上中距離界では北村さんだけが出来る、力強い高回転のスプリントを、また見せて欲しい…そう願っています。


北村夢さん

かつて100mと200mで活躍した新井初佳さんのスロー動画です。
新井さんの実績については様々なサイトに記述されていますのでお調べいただけたらと思います。



新井さんの身長は157㎝。
トップ選手の中では小柄なスプリンターです。
小柄な選手が短距離を速く走るには、他の人よりもストライドを伸ばす必要がありますし、ピッチを上げることも必要になってきます。
より効率の良いフォームで走ることが求められるのです。
筋力アップは勿論必要ではありますが、その筋力トレーニングも「速く動かす」ことを重視したものとなります。

パワーよりもフォームを追求するタイプのスプリンターの多くは、柔らかい走りをすると思います。
ですから200mを得意とする選手が多いし、効率の良い動きはロングスプリントにも対応できるので、マイルリレーを走る人もいます。
新井さんがマイルを走っている姿は見た記憶はありませんが、周知のとおり200mの元日本記録保持者でした。
100mも日本記録を持っていましたが、100mよりも200mを得意としていた印象があります。

私は長年、新井さんのような柔らかいスプリントのフォームは、800mの選手にも通じるものがあると考えてきました。
スタミナを武器とする選手でも、たった2周の短い800mではやはりスプリントは必要になってきます。
しかし短いと同時に長くもあるのが800mという種目です。
800mという距離の大部分を、その選手にとって最も効率的なスプリントフォームで走らなければなりません。
極めようとすればするほど(例えば日本記録を狙うのであれば)そうなってくるはずで、ラストの切り替え、或いはスタートダッシュを仕掛ける際には、200mを本職とする選手と同等の柔らかいスプリント力が求められるでしょう。

これは日本の女子中距離選手に足りていない部分であるとも思います。
本格的な体幹トレーニングを導入することで、効率的なフォームを維持したまま走れる選手が増えてきました。
しかしその先にある「柔らかいスプリントの強化」にはまだ到達していない。
女子選手が1分台を狙うのであれば、避けては通れない道だと思います。
そうした意味でも、新井初佳さんのフォームは、現代の中距離選手にも参考になることでしょう。



ランニングフォームについて書いているくせに自分自身はどうなのか?
と思うこともあれば、言われることもあるので振り返ってみます。
何年か前、46歳になる頃に撮影した動画です。
車イスの速さに合わせて、流しをしている場面です。
一緒に走っている車イス選手は一緒に走っている車イス選手は、左から安川祐里香、喜納翼、仲泊厚志、そしてパラメダリストでもある上与那原寛和さんです。

100m15秒程度の速さですが、20歳の現役のころと比べると、動きが随分ぎこちなくなっています。
特に引退の原因となった右脚の動きは小さくなっているのが自分でもわかります。
現役の頃は明らかに右脚のほうが左よりも大きく動いていました。
それでも、昔から、爪先を前に出すこと、接地は重心の少し前にすること、を今も心掛けています。
40歳前後、ランニングを再開した頃から速く走ろうと思ったことは一度もありません。
中距離選手だった私ですが、昔は冬期の走り込み練習として参加したマラソンで、キロ4、2時間48分で走れたものです。
当時はキロ4ならどこまでも走れるようなジョグ感覚でした。
今は苦しくないペースでジョグするとキロ5分台です。
どうあがいても昔の自分を追い越せそうにはありません。
でも、何歳になっても、走るなら上手く走りたいと思うのです。

ちなみに、この動画からの画像をブログのプロフィールにも使用しています。
車イス選手と走る私

ペア11㎞を走ってきました。
去年はペアではなく二人とも個人で参加して1時間21分くらいで走ったのです。
そのタイムだと去年はペア部門では1位よりも速かったので、今年はよいところまでいけるのでは?
と密かに期待もしつつ走ったのですが…
そう甘くはありませんでした。
私たちのタイムは昨年を上回る1時間17分57秒でしたが2位でした。

県外のロングトレイルの経験もあるのですが、国頭のコースは難易度が高いと思います。
今日は序盤を比較的速めに走ったのですが、酸素が肺に入っていかない感覚に陥りました。
そのまま走り続けていたら右脚だけ酸素が届いていないのか、ハムストリングが攣りそうになりながら最後まで走っていました。
短いトレイルでもトレイルはトレイル。
何が起きるか分からないことを痛感しました。

さて、今日、ペアで走ってくれたのは元岩手県のエースランナーでした。
私の右脚の状態が良くなかった分、前を引っ張ってくれていました。
都大路や全国女子駅伝で1区を走っているだけあって、安定感抜群。
さすがの走りでした。
ゴールした時は11㎞の女子1位より早くゴールしたらしく、「女子1位!」と声をかけられインタビューされそうになっていました。
「ペアです!」とアピールしていたのが少し可笑しかった。
足は痛みましたが、終始楽しい大会でした。
自衛隊カレーも美味でした。
今日のトレイルランの様子

高校生の時、全国高校駅伝の常連校の合宿に参加しました。
8月、1週間、場所は伊豆大島。
宿泊したのはおくやま荘。
釣り人と陸上関係者には有名な民宿です。
小出監督時代のリクルートも使っていました。
有森さんのサインが民宿にあったのを覚えています。
おくやま荘

さて練習メニューですが、記憶が元なので日程が違っているかもしれません。
当時はGPSなどはありませんから、距離も伴走の原付で測ったりしていましたので、正確ではありません。
そのあたりはご容赦ください。

初日、船で伊豆大島に着いてから民宿までジョグです。
波浮港から民宿まで海沿いの19㎞。
海沿いと言っても坂道だらけです。
沖縄の人でとかしきマラソンを走ったことがある人は、渡嘉敷島を思い浮かべていただけるとぴったりです。
今年はじめて渡嘉敷を走りましたが、だらだら続く上り坂で、伊豆大島の坂道を思い出しました。
民宿に着くのは夕方で、荷物を整理してから8㎞ペーランします。
この8㎞は1年生のための朝練のコース確認です。
この後、3000mを1本走ったかどうか記憶が定かではありません。
初日は27~30㎞くらいで終了です。
ちなみに、女子も同じメニューです。

朝練は4㎞離れた公園に、確か6時半ごろに集合。各自走っていきます。
公園で体操と補強をして走って帰ります。なので8㎞です。
日中の練習では、毎日ポイント練習がある感じです。
中でも3種類のメニューが、本当にきつかったのを覚えています。

2日目の午前中はジョグ20㎞と5㎞のTT。
午後も20㎞のジョグと3000のTTを2本走っていたかと思います。

3日目だったと思います。
5、3の繰り返しがあります。
本当にきついメニューの1つ目です。
5、3というのは、朝練、朝食後、9時に民宿の前から2.5km折り返しで5㎞のタイムトライアル。
次は10時スタートで1.5㎞折り返しの3㎞。
これを繰り返します。
9時に5㎞、10時に3㎞、11時に5㎞、12時に3㎞、1時に5㎞、2時に3㎞、3時に5㎞
合計29㎞です。
因みに女子は全部3㎞なので21㎞です。
そして、これが終わってから夕方に10㎞くらいジョグします。
一日の合計は50㎞超えていないのですが、ずっと5000と3000を本気で走るので疲労感がすごかったです。
最後の5000を14分台で帰ってくるお化けもいました。

4日目、朝練と午前中の練習は2日目と同じような感じです。
午後、全長400mくらいの急勾配の芝生でクロスカントリー。
たしか20本くらいだったと記憶しています。
下りはジョグなので合計16㎞程度でしょうか。
そしてこのクロカン場所まで往復15㎞くらい走っていると思います。
恐らく、この日の合計距離は60㎞くらいです。

5日目…もしかしたら4日目と逆かもしれません。
いずれにしても、この日のメニューは伊豆大島一周50㎞走です。
キツイメニューの2つ目です。
朝練後、実力順に一人ずつ時間差でスタートします。
アップダウンの激しいコースを50㎞、高校生が走るのですから今にして思えば驚きです。
速い子だと3時間台で普通に戻ってきます。
私は5時間くらいかかったのを覚えています。
400~1500、それに混成を主戦場にしていた私には本当にきつかったです。
女子も走っていました。

6日目、この日のメインメニューは1000mの急な上り坂を10本です。
これがきついメニューの3つ目です。
この坂も沖縄のランナーには想像しやすいと思います。
尚巴志ハーフの新里坂、長さも斜度も、あれにそっくりです。
下りはジョグ、数本おきに給水があります。
全部で20㎞。
そして坂のある場所までのジョグがどう考えても往復10㎞以上あります。
というのも、30分以上かかってたどり着いた記憶があるからです。
そして午後はロングジョグ20㎞と5000のTTでした。

最終日は朝練やって、5000のTTやって終了。
さすがに帰りは港まで車移動です。

かなりあやふやな記憶なので日程の配置やジョグの距離は間違っているかもしれません。
でもメインメニューははっきりと覚えています。
2日目から6日目までは毎日合計60㎞前後走っていた感じです。
そして毎日夕方、練習後は海で遊んでいました。
元気でしたね。
もう30年以上前のお話です。

高校生の時に伊豆大島1周50㎞を、それもきつい合宿の日程中に経験したことは本当に大きかったです。
大学での練習で走り込み時期にフルマラソンをメニューに入れることにも全く抵抗がありませんでした。
42㎞という距離に恐怖感とか不安が全くなかったのです。
引退して20年後、ウルトラマラソンを走ってみようと思えたのも、この合宿を経験していたからだと思います。
若いころの経験は、何十年後かの意識や考えにおいても財産になるものだと、この歳になって実感しています。

憧れた走り方、目指した走り方、というものがありました。
爪先を前に出す走り方です。
距離に関係なく、私はこの走り方を目指していました。
最近の選手でいえば、女子中距離では大森郁香さんや岩川侑樹さん。
男子長距離だと東農大の前田君。
そして、私が現役の頃だと、男子は短距離の奥山義行さん。
女子では断トツで田村有紀さんでした。

腰高でリズミカル、膝が上がり切ってからすっと爪先が前に伸びるようなフォーム。
効率を中心に考えれば、もっと良い走り方があることでしょう。
それでも、私はこの走り方の美しさに憧れていました。
中距離ランナーだった私は、奥山さんのようなスプリントを目指していましたし、長い距離を走る練習では田村さんのような足運びを意識していました。

田村さんのランニングフォームのスロー動画です。

ラスト500mの地点で疲労もあり、上体が少しぶれていますが、それでも腰の高さと足運びは全く変わりません。


こちらは襷リレーの後、まだ余裕のある時の走りです。
最近の選手と見比べても、私にとっては田村さんのフォームが最高の走り方です。
私は既にジョグしかできないような年齢になりつつありますが、ゆっくり走るだけであったとしても、常にこの走り方を目指したいと思うのです。