2024年4月20日土曜日

隣人たちの不気味--2


越してきた当初、私は都内で仕事を継続していて両親と兄が先に住むことになった。 ローンと家賃が重なるので不経済だったが、それでも仕事の都合上都内に居るメリットがあった。兄はホテルの夜勤で一日置きに都内まで通うことになった。その間は老いた両親だけになる。

二人が揃って近所へあいさつに出向いたら、右隣りの主婦からいきなり言われたそうだ。夜十時を過ぎたら風呂を使わないでくれ。

なんでも亭主が観光バスの運転手で、早朝出勤だそうで早い時間に寝ているからと。

この主婦を、荷物を運び入れている時にちょっと見かけたのでその時私も一応の挨拶をしたが、歯の出っ張った不良姉ちゃんのような顔立ちだった。さすがに大人だからガキ娘のような尖り方はしていないが、少々私の気持ちに翳りが生じた。これが隣りか…。

それにしてもいきなりな言い様だ。それを嘆く電話が母からかかってきて、左隣もなんだか様子が変だと不安気な声だった。

どう変なのか、その時はまだ漠然としていた。後々それ程の苦労をするとは夢にも思わなかった。

2024年4月14日日曜日

隣人たちの不気味--1



襲ってくるのに姿が見えない。これはやっぱり嫌な存在であることには違いない。だが、不思議なことに私にはそれらしい恐怖を今もって感じられない。精々膝がしらを切られた程度で大きな被害がないせいもあるし、以後継続している訳でもない。その時でさえ、何が起きているのか全然ピンと来なかったせいもあるだろう。

やはり怖いのは、現実に物理的作用を及ぼせる生きた人間の方だ。しかも表面上はごく普通を装っている。

私が今の住まいに越してきた当時、まだいくらも経たない内にこれはミスったと思った。七軒ずつ背中合わせに建っている区域だが、その内五軒は、ちょっと変だと直ぐに分かった。しかも明らかに異常だと思う世帯が当家と接していた。両隣と裏隣り。ほぼ新品に近い、従って殆ど値引きのしない中古を購入したのだが、売り主に完全にしてやられたようだった。

一応事前に周辺を歩いてみたりもしたのだが、特別異常があるようには見えなかった。しかし、甘かった。早く決めたいとの思いが強くて、あまり値引き交渉もしなかったし、踏み込んだ調査もしなかった。初めて家を購入する人間がどれ程用心深くなれるだろうか。自分を庇う訳ではないが、無理もない部分があったと思っている。

しかしその甘さが、以後何年も私たち一家を苦しめることになった。

2024年3月30日土曜日

かまいたち--6--世にも不思議な物語



資料から、などといっても単に古い本の記述だ。しかも述べられていることが実際にあったかどうかまでは不明だ。一応あったこととして記述してある。 これによれば、フランク・エドワーズなる人が著した世にも不思議な物語なる本にこの類と似ている記述があるようだ。

フランク・エドワーズと言う人は様々な超常現象を集めたマニアのような人だったのか、こんなブログを書いていて全く頭にもなかったのだが、そっち系では有名な人らしい。その彼が、同名のラジオ番組のために収録したものとなっている。

2024年3月23日土曜日

視えるという女性ともう一度連絡を試みる

かまいたちの途中で話を挟むが 、例の視えるという女性と何とか連絡が取れないかと思って、もう一度件の居酒屋で出向いた。いつもは割と客のある店に、その時はずっと私ひとりで、珍しいことだが、その方が話がしやすい。



あれこれと挨拶代わりの世間話をした後で、あの女性、元気かねと、そんなことから切り出した。どの人のことを言っているのか、女将はそんな様子でピン来ない感じだったが、これは恐らくトボケだろう。少しずつ分かってきた感じを装ったが、どうも以前とは違う。

こちらは飽くまで、以前の話が面白かったのでと、それ以上ではないことを装ったが、以前はわざわざ電話までしてくれたのに、この変わりようななんだろうか。

話はあまり当てにしない方が--とそんなことまで言っていた。当てにするとかはともかく、どんな話でも興味深い面があれば糸口から辿りたいと思っているのだ。女性は私の写真を撮って別の、より視えるという人に送ってくれた。相手は男性で、その時にちょっと事態を説明したが、スマホの向こうから聞こえる声にどこか聞き覚えがある。気になる部分なのだ。

しかしそれ以上の話は進まず、適当なところで店を出て一気に寒くなったホームに佇んだ。

女性は間違いなく常連だったが「いや、全然」と女将は言っている。関係に、なにかあったに違いないのだ。

これ以上はもう放置するしかない。なにがあったかを詮索する訳にも行かない。時間を置いてたまに様子を見に行く程度しかない。

物事は進まないものだ。

2024年3月17日日曜日

かまいたち--5--見えないものに襲われる



前回の記事に書いた--怪奇現象博物館--なる本は北宋社という出版社から出されている。あまり聞いたことはないが調べてみる限りでは今も現存しているようだ。在所は文京区水道とあるが、私の手元にある本は1987年版とあるからかなり昔だ。変わっていないとすれば、私は過去文京区に住まいしていたので、ある程度はうろついたところだ。物好きにも今調べてみると、あの串カツ田中が存在している。がしかし、出版社そのものはビューでは探せない。転居しているかも知れない。

2024年3月10日日曜日

かまいたち--4--ある資料から

今更のことだが、かまいたちと言ってもお笑いのことではない。念のため。あっちはあっちで今は色々あるようだけど。

こんなことがあっても、奇妙なことがあるものだと思う程度であって、だからといって別に何ができる訳でもない。その後はしばらく時間が経っても同様のことは起きないので、どうやらそれ以上の危険はないと判断し、いつしかどうでも良くなってしまった--と言うのが実情だ。実際、以後数年間このような現象は起きていない。



しかし、見えないものに何か悪さをされると言った事柄はあるのだと、どこかでそんな記事を読んだ記憶が薄っすらとある。それであれこれ調べたら、多分これだと言うのが出てきた。怪奇現象博物館と題されている。脇に--フェノメナ--とある。現象という意味か。

過去に世界中で起きた奇怪な出来事をまとめた本で、空から魚が降ってきたとかの話があれこれと載っている。

2024年3月3日日曜日

かまいたち--3

奇怪なことに遭遇した人でないと多分ピンと来ないだろう。そのさなかにある間はその奇怪さがピンと来ないのだ。なんだろうと思いつつ消毒したりはする。でもそれだけだ。後から段々と、そんな馬鹿げたことがあるものかと思い始める。姿形も見えないものに引っかかれるなどと。



気になって、やはりかまいたちにやられたとする人の動画を探した。あるにはあったがその人は妙にはしゃいでいて、しかも自分のとはかなり様子が違う。その人のは世間で言われている通りのかまいたちだ。信憑性の判断も、何とも言えない。