brooklyn


単なる、女の子の「背伸び」物語に終わらず、溜飲をさげる作りになっているのは、当時の経済的背景や、民族的な背景が、シッカリと描かれて、エイリッシュを取り巻く、人達の人物造形が、出番の大小に係らず、印象深くて、彼女に、生きる意義や、示唆を与えてくれるから。

トニーに扮した青年も、小さな弟に彼女への手紙の綴りを赤ペン先生してもらって、インテリジェンスの面で、ちよっと、釣り合いそうもないけど、夜学で彼女が校舎から出てくるのを待っている件なんか、見ているこっちも、昔を思い出して、イイ感じ。


それとは違う、懐の深さを見せる、ブルックリンの彼女の寮母の女優さんと、同じく、そこで、彼女を気遣う神父さんとか、ベテラン俳優の方々も目に留まりました。

神父さんが、簿記学校の入学費を肩代わりするも、二学期目は、エイリッシュが働いて溜めたお金を出すって申し出ているのに、「いゃ、そのお金を、出させるべきヤツが居るから、心配するな」みたいな事を申します。


ちよっと、最後まで、引っかかって、結局、伏線でもなんでもなかったけど。

実は、裏でアイリッシュマフィアを締めあげていたとか、想像しちゃったじゃない。

劇中、教会で恵まれない移民老人に、クリスマスの振る舞いをしますが、その中に居る、アイリッシュの民族曲の歌い手が、アカペラで聴かせてくれるのですが、それだけで、移民たちの哀しい歴史に思いを馳せてしまう。


冒頭の、アイルランドでお手伝いするお店の女主人にやり込められるところに、ホームシックで何度も手紙を読んでは、泣きじゃくる辺りの気の弱さから、トニーとの出逢いから、恋への喜びや不安に揺れるところなど、共感を呼びます。

実直なトニーに、「愛してる。」って云われて、好意をもっているのに、即答しなかった自分を嫌悪する彼女とか。

不完全燃焼で、家へ帰らざるを得なかったトニー君にも、見せてあげたかったな。