任意整理のメリット「特定の債権者への返済」にはどのような利点があるのか!?

任意整理の特徴、メリットとして挙げることができるのは、特定の債権者を債務整理の対象から外すことができるというものがあります。特定の債権者を債務整理の対象から外すというはいったいどういうことであり、なぜ特定の債務者へ返済することができるのが特徴なのでしょうか。

今回は、任意整理の特徴である「特定の債務者への返済」について解説をします。

債権者平等の原則

任意整理を含む債務整理には、債権者の利益を守るという視点が盛り込まれているのです。そのため、債務整理の手続きは、すべて「債権者平等の原則」の考えに沿いおこなわれます。

債権者平等の原則とは、債務者1人に対して複数の債権者がいる場合、債権者は等しく扱われるというものです。債権者はお金の貸し借りがおこなわれた時期や順番、そして原因などに関わらず、債権額に応じて債務者から平等に返済をしてもらう権利を有するのです。

なぜ、債権者を平等に扱うのでしょうか?

破産や個人再生などの法的整理手続きには強制力があります。債権者の立場からすると否応なく、債務を減額されたり免除されたりするという、かなり理不尽な制度です。

そのため、債権者からすると自分の債権を無理やり免除させられたのに、別の債権者は免除されずにきちんと返済されている、となると不公平感を覚えてしまうでしょう。そのため、裁判所が関与する法的手続きにおいては、すべての債権者の借金のすべてを整理対象に含めるが大原則になります。

債権者平等の原則の例外

別除権者

別除権者とは、抵当権や所有権留保など、あらかじめ貸し付けたお金が回収できないときのために、「担保」をとっている債権者のことを指します。

債権を回収する場合、別除権者はほかの債権者に先駆けて債権者の財産から自分たちの取り分を回収することが認められています。

住所ローンを例にしてお話をしましょう。銀行はお金を融資する代わりに担保として、必ず購入する土地や住宅に「抵当権」というものを設定します。

抵当権はひとつの物件に対して、複数設定することができます。そのため、住宅ローンが破たんして返済が不可能になった場合、売却した住宅の配当金は1番の抵当権者が設定している人へ優先的に配当されます。1番の抵当権者が設定している金額以上の担保余力、つまり物件の価値があるとなれば、2番、3番抵当権者へお金が配当されることがあります。

この抵当権の効果という非常に大きく、もし債務者が被担保債権(その抵当権に関係のある債務)を返済することができなければ、抵当権者の権利として裁判所へ競売の申立てをおこない、物件が売れた価格の中から自分たちの債務を他の債権者より優先的に回収することが可能です。

原則として、先順位の抵当権者は自分たちが設定した債権額いっぱいまで配当を受けることができ、もし余りが出たら後順位抵当権者へ配当がまわります。

しかし、現実的な問題、特に住宅ローンについては1番抵当権ですら全額回収をすることができないケースがほとんどですから、回収することができなかった借金は「無担保債権」として他の債権者と同様に回収していかなければなりません。

所有権留保

自動車などをディーラーローンなどで購入したときには、所有権留保がよく利用されます。車検証上の所有権者はローン会社であり、ローンの返済が滞れば自動車をローン会社が回収し売却をして、他の債権者に先駆けてローン会社は弁済を受けることができるという方法です。
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別除権者については、債権者平等の原則の例外であり、先に担保物を売却することにより、債権を回収することが認められています。

任意整理だけ、債権の一部のみを対象にできる

任意整理のメリットのひとつが、すべての借金を任意整理の対象にする必要がない、というものがあります。これは任意整理の大きなメリットでしょう。

前述のとおり、自己破産をおこなう場合、自己破産手続中に一部の債権者のみに返済をすると免責不許可事由に該当してしまい、自己破産をすることができなくなります。そのため、たとえ、友人や家族から借りたお金であっても、返済をしてしまうと偏頗弁済になってしまうので、返済をすることができません。

偏頗弁済とは、ある債権者にだけ特別の利益を充てる目的、または他の債権者を害する目的で、自分の不動産に抵当権を付けさせたり、支払義務がないのに支払ったりするなどです。

偏頗弁済はその他の債権者に対する重大な背信行為なので、すぐに免責させることは許されないと法律で決められています。

そして、個人再生には「住宅資金貸付条項」というものがあります。これを利用することにより住宅ローンのみを整理の対象外にすることができますが、その他の借金はすべて減額の対象になります。

仮にすべての借金を債務整理しなければならないとなると、たとえば、ローン返済中の自動車は、前述した所有権留保条項により、ディーラーやローン会社に回収され売却されます。また、住宅ローンであれば、抵当権を行使されて住宅は競売にかけられ明け渡さなければなりません。

公務員の方であれば、共済組合や職員互助会などでお金を借りている場合、共済組合係に債務整理の旨を通知しなければならず、結果、職場に債務整理をしているのがばれてしまうリスクが発生します。また、友人や親族に保証人になってもらってい借金であれば、債務整理をすることで友人や親族にも迷惑がかかる可能性も高くなります。
債務整理の中でもっとも効力の大きい自己破産を実行してしまった場合、未払いの携帯端末代金や過去の家賃の未納賃料などの債務もすべて債務整理の対象にしなければなりません。そうなってしまうと携帯電話の解約、賃貸契約は解除されて追い出されてしまう可能性があります。
このように自己破産や個人再生のような裁判所の法的整理は、すべての債権者の平等を重要視します。そのため、融通が利きません。たとえば、友人から3万円ぽっちの借金をしている場合であっても、自己破産や個人再生をするのであれば、きちんと申告をしなければなりません。特定の債権者だけを故意に対象から外してしまうと偏頗弁済をしているとして、免責不許可になる可能性もあります。

その点、任意整理は元々が法的手続きではなく、ただの任意での私的な和解交渉になりますので、どの借金を任意整理して、どの借金を任意整理しないかというのは自由です。当事者間で借金をする契約を結ぶのが自由なのと同様に、当事者間で任意整理をおこない契約内容を変更するのも自由です。他人の許可は必要としません。

住宅ローンや自動車ローンを任意整理から外したい

住宅ローンや自動車ローンなどの担保付きのローンは、任意整理から外すのが一般的です。つまり、弁護士の介入通知を債権者へ送らないわけです。

住宅ローンや自動車ローンの場合、自動車や住宅というのは「担保」になりますので、利息を含む債務の全額を弁済できないのであれば、債権者は自動車や住宅を没収して売却する権利を有します。

自動車ローンや住宅ローンは、他の無担保借金(クレジットカード・カードローン・キャッシング)のように弁護士が介入して交渉することで利息カットなどをすることができるという性質のものではありません。そのため、弁護士が介入してまとめて整理するカードローンやクレジットカードなどの借金とは、自動車ローンと住宅ローンを分けて考えるのが一般的です。
もちろんですが、人に整理の対象から外す以上、自動車ローンや住宅ローンを今までどおりに支払い続ける必要が出てきます。しかし、自動車ローンや住宅ローンを任意整理から外すことで、抵当権を利用して自宅を競売にかけられたり、所有権留保により自動車を没収されたりすることはありません。

住宅ローンの返済が困難な場合は?

住宅ローンの場合、非常に高額なローンです。そもそも返済が苦しくなったり、行き詰ったりした場合に利用することができるのが「リスケジュール」や「月々の返済額の見直し」などを相談する専用の窓口が、銀行や住宅金融支援機構にあります。
リスケジュールとは、銀行などの金融機関から借りている借入金の返済が厳しくなった場合に、銀行と相談して今後の返済スケジュールの見直しをおこなうことです。特に個人の場合には、住宅ローンの返済が病気やリストラ、給与額などの減少などの理由で苦しくなったときに、返済期間を数年間の延長や一時の支払猶予、たとえば、1年間は利息のみの支払でOKという相談をすることができます。

ただし、住宅ローンのリスケジュールをした場合、利息のカットはありませんので、返済総額は増額するデメリットがあります。
また、完済時の年齢との兼ね合いでリスケジュールに応じてもらえない可能性があります。また、すでに滞納をしている状態ではリスケジュールなどの話し合いに応じてもらえない可能性があります。

つまり、住宅ローンの返済が厳しいけれど、かろうじて、滞納をしていないときにしか、この方法は利用することができません。

銀行としては貸し倒れをされてしまうのが一番困りますが、今後の支払が厳しいのであれば弁護士に依頼する任意整理とは別に住宅ローンのリスケジュールを相談するのが一般的です。

将来的に住宅ローンを支払い続ける自信がない、すでに住宅ローンを数か月間滞納している状態の場合は、リスケジュールや毎月の返済額の見直しの相談には、銀行は応じてくれません。3ヶ月~6ヶ月以上滞納している場合「期限の利益を喪失」して住宅ローンの一括返済を要求されます。

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そのような場合は、個人再生を利用するか任意売却という手段を検討するといいでしょう。
任意売却とは、住宅ローンがまだ残っている自宅を銀行などの債権者から同意を得て売却して、売却金額を住宅ローンの返済に充てるというものです。主に、住宅ローンの返済が厳しくなったたり、滞納が続き競売にかけられそうになった場合に選択する手続きです。

ローン返済中の住宅には抵当権がついていますので、勝手に売却することができません。そのため、銀行などの債権者に抵当権の解除を了承してもらわなければ、一般市場で売却することができません。そのため、一般の売却とは区別して任意売却と呼びます。

任意売却は住宅を売ることになりますが、任意売却をせずに放置をしているとどちらにせよ競売により住宅を売却されてしまいます。そして、競売よりも任意売却の方が有利な条件で住宅を売却することができるので、売却後に残る住宅ローンの額が大きく変わります。

どちらにしても、住宅ローンを支払うことができないという問題は、任意整理では解決することはできません。住宅ローンは任意整理の領域ではないのです。

銀行側は住宅を担保にとっていますので3ヶ月以上滞納をすれば、いつでもローン保証会社から代位弁済をしてもらうことができる立場にいます。基本的に弁護士が介入したとしても、任意整理の減額交渉などには業務外なので応じてくれません。

自動車ローンを任意整理の対象から外す

自動車ローンも住宅ローンと同じです。自動車をそのまま使用し続けたいのであれば、任意整理の対象から外して従前どおりの支払いを継続する必要があります。

前述しましたが、自動車ローンには所有権留保条項がついています。しかしながら、中古車の場合、債務者から没収をしたところで大した値段では換価することはできない可能性があります。また、相手方の業者によっては任意整理に含めたとしても利息免除などの交渉に応じてもらえる可能性もあるでしょう。業者としても、払えるのであれば、なるべく現金で支払ってもらいたいからです。

自動車ローンというのは、一般的には、それほど金利は高くありません。任意整理の対象として利息カットの交渉をしても、あまり大きなメリットはありません。また、当然ですが任意整理では元本の減額がありませんので、任意整理の対象にしても自動車を失う可能性があるので、これらを総合的に考え任意整理をしても自動車ローンはメリットがありません。

共済組合や職員相互会などの貸付を任意整理から外したい

公務員の人であれば共済組合(地方職員共済組合・国家公務員共済組合・公立学校共済・防衛省共済組合・警察共済組合など)職員互助会(教職員互助会など)・ろうきんなどからお金を借りている人もいるのではないのでしょうか。

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これらの借入は、一般のカードローンや無担保融資とは非悪にならない程、低い金利で借金をすることができます。

しかし、仮に自己破産や個人再生などの法的手続きを取るときに、また厄介な存在になるのが共済組合からの借入です。これらの借金は給与天引きの形で返済することが多く、職場とのつながりも強いので、自己破産や個人再生の通知を送る段階で、自己破産や個人再生をしたという事実が職場にばれてしまう可能性があります。

そのため、どうしても職場に借金のことはばれたくないという方は、任意整理をして共済組合などの勤務先と関わりの強い借入先は外しておく、という方法を選択する方も多いでしょう。

また、共済組合は前述したとおり、非常に低い金利で借金をすることができます。そのため、任意整理をして、将来利息をカットしたとしてもそこまでメリットがありません。

任意整理は高金利な無担保借金の整理には非常に効果的ですが、金利が低い共済組合などを任意整理しても効果はそこまで高くないのです。

親族や友人からの個人的な借金

親族や友人からの個人的な借金ですが、これも任意整理に最適なケースといえます。

たとえば、友人・親族・職場の上司からの個人的な借金などでも自己破産や個人再生は、裁判所から「借金を免除(減額)します」という通知が届いたら、人間関係や職場での関係に不利益が生じます。

自己破産や個人再生などの法的整理では、これらの身内や友人などからの借入も外すことはできません。身内や友人であっても返済をしてしまうと偏頗弁済になり債権者平等の原則に抵触し、免責不許可事由になります。

もちろん、自己破産後に自然債務として自発的に返済をするという方法は認められています。

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任意整理をすることで、友人・家族・職場の上司を整理の対象から外すことができます。

保証人がいる借金について

保証人付きの借金も同じです。

たとえばですが、借金の中に奨学金の返済などが含まれている場合、明らかに返済能力を超えていたとしても、奨学金は親などが連帯保証人になっていることが多いので、破産手続などに踏み切ることを躊躇してしまう人も多くなります。

任意整理であれば、奨学金などの保証人付きの借金については手続きから除外することができ、任意整理がもっとも効果を発揮する高金利で負担の重い借金だけを整理対象にすることができます。

クレジットカードを任意整理から外して1枚残しておきたい

任意整理は、特定の債権者を相手に和解交渉をすることができます。複数枚、クレジットカードを所有している場合、A社とB社のクレジットカードを任意整理の対象にして、C社のクレジットカードは任意整理の対象から外すということは可能です。

ただし、この方法を許容しない弁護士の方が多くなります。クレジットカードが1枚残っていますので、またクレジットカードを利用して借金を作ってしまう可能性があり、経済的な更生という任意整理の基本概念から遠のいてしまう可能性が高いからです。

ただ、どちらにしても任意整理をした時点で信用情報機関に個人信用情報が登録されてしまいます。結果、残しておいたクレジットカードも途上与信や更新のタイミングにより、利用停止となります。

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特定のクレジットカード会社だけを任意整理の対象としないことは可能です。しかし、任意整理の手続きの趣旨に沿った望ましい方法ではありません。

まとめ

任意整理のメリットであり、特徴が特定の債権者を任意整理の対象から外すことができることです。

たとえば、

  • 自動車ローン
  • 住宅ローン
  • 共済組合などからの借金
  • 友人・親族・会社の上司からの借金
  • 保証人付きの借金に

任意整理を利用することで、整理の対象から外すことができます。

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